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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
○▼※△%章
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181、ズルい女16 ひ め の る ▪️

赤虎との戦いから2日が経った。

この2日間、時間がある時には勇くんの横に座っていた。


今も朝目覚めて着替えて、すぐにこの部屋にきたのだ。

濡れた布を絞って、勇くんの額を拭う。

すると、勇くんが目を覚ました。


「おはよう。勇くん」


「おはようございます。あの、、、僕はどれくらい寝てましたか?」


「2日寝てたよ。もう他のみんなは起きてるよ。勇くんはお寝坊さんだね」

私は笑いながら言った。


「傷はウィンが?」


「うん。ウィンちゃんが慌てて直してくれたよ。イサミンが死んじゃうーーとか言いながらね。無理して回復魔法を使ったみたいで、そのあと倒れちゃったけど」


「それでウィンは?」


「もう起きているよ。魔力の使いすぎが原因だから寝れば治るみたい」


「他のみんなも無事ですか?」


「うん。起きたウィンちゃんがみんなを治してくれたよ」


「そうですか。みんな無事でよかった」

それを聞いて安心したのか、勇くんの体から力が抜けた。


「勇くん。本当にありがとう。」

と私は勇くんの右手を両手で握りながら言った。

このありがとうにはいろいろな意味があった。

私を助けてくれたこと。

みんなを守ってくれたこと。

そして、私を理解してくれたこと。


「えっ?」

しかし、勇くんは理解できない。

でも今はそれでいいのだ。


「勇くんにはいつも助けてもらってばかりだね。この世界に来て、本当に頼もしくなったね」


「でも無理はしないで。勇くんがいなくなったら私は、、、」

生きていけない。。。くらいは言ってみたいものだけど、照れ臭くて言葉が続かなかった。


「姫乃先輩、、、」

勇くんが手を握り返して、私と視線が交わった。

勇くんの瞳は黒目がちで、大きくはないが輝いている。

純粋で真っ直ぐな瞳が私は好きだ。


「ひっ、ひっ、ひっ、姫乃、、、先輩」

すると勇くんが急にかしこまって、しどろもどろになった。


「なっ、なっ、何かしら?」

急な勇くんの変化に鈍い私でも何か言われるのではないかとあたふたする。

もしかしたら、告白してくれるのでは?と期待に胸が高まった。


「前に言ってくれたことの返答ですけれど、、、」


「うっ、、、うん」

とりあえずは聞こう。

平常心。平常心。


「あのですね、そのですね」


「うん」

平常心。平常心。


「あの、、、その、、、」


平常心。平常、、、

「うーん。うるさいのよー」

とリムちゃんが勇くんの寝ている布団からもそもそと出て来た。


「リム!?」

「リムちゃん!?」

驚いて2人とも同じ反応をした。


「リム!どうしてこんなところに??」


「どうしてもこうしてもないのよ。勇を心配して付き添ってあげていたのよ」


とその時、ドアが勢いよく開いた。


「イサミン!起きた?」

ウィンちゃんが慌てて入って来たのだ。


「あっ、うん。いろいろありがとう」


「イサミンが死んじゃわなくてよかったよぅ」

と言いながら、ウィンちゃんは勇くんの手を握ってぶんぶんと上下に振った。


「ははははは」

「ふふふふふ」

勇くんが何を言おうとしたいのかはわからないけれど、まぁもう少しこのままの関係でもいいかな。と思いながら私は笑った。



その夜、街の人たちが宴を開いてくれた。

肉や魚など、豪華な料理が並び私たちは楽しい時間を過ごした。


ふと気がつくと勇くんが一人で椅子に座り、星を見ていた。


トン

と私は何も言わずに勇くんの隣に座った。

勇くんも何も言わずに一緒に夜空を見上げた。

ずっと、、、ずっとこの時間が続けばいいな。

私は心からそう思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



思えばこのAEに来てからいろいろな事があったな。

学校での平穏な日常から一変して、このAEに放り出されてから、辛いこと、苦しいこと、悲しいこと、痛いこと、、、大変な思いをしてきた。


でも嫌なことばかりではなかった。

楽しい事もたくさんあった。

本当に信頼できる友達と呼べる人もできた。

大好きな人と仲良くなれた。

長い時間を一緒に過ごすとこができた。


そう考えると、AEに来なければできなかったことは沢山あった。

むしろ今はAEに来れて良かったとさえ思える。



「姫乃先輩!」

勇くんが必死に私の名前を呼んでいる。

あれ?

私は何でこんな事を考えているのだろう。

今は胸を貫かれて、そんな場合じゃないはずなのに。


私は勇くんの呼びかけに応えようとした。

「こふっ」

しかし、思うように声が出ず、代わりに吐血した。


「あぁ。やっぱり戻らない。やっぱり違うんだ」

私は死に向かっているのだろう。

自分でもよくわかる。この傷は致命傷だ。

やはり自分の命が危ない時に戻りは発動しないようだ。


「いっ勇くん。。。前にもこういう事があったね。。。」


「姫乃先輩!」


体にも力が入らないし、感覚もなく痛みも感じない。


そうだったんだ。

今まで見ていたのは走馬灯。

走馬灯って言うのは、死ぬほどの傷を負う際に、それを回避すべく頭をフル回転させる事で起こるものだと思っていた。


でも私のは諦めの走馬灯だ。

今までの楽しかった思い出を振り返っただけ。

そもそも私にこの状態から立ち直る術は持ち合わせていないのだろう。



「姫乃先輩!」

また勇くんに抱かれている。


あぁ。

私が危ない時にはいつも近くにいて、私を抱いてくれる。

私は幸せ者だなぁ。

こんなズルい女がこんなに幸せを感じてしまっていいものなのだろうか。


勇くん。。。

ごめんね。悲しい思いをさせてしまってごめんね。

そう声をかけたいが、もう声も出ない。


体から何か大切な物がこぼれ落ちていく感覚。

もうわずかしか残された時間は無いのだろう。

私はその時間で大好きな勇くんの顔を見る。


勇くん泣かないで。。。

顔をくしゃくしゃにしながら、涙を流している勇くんにそう声をかけようと思うが、声が出ない。


視界もだんだんと狭くなってきた。

いつまでも勇くんの顔を見ていたいけれど、それももう終わりのようだ。


勇くん。。。


大好きだよ。。。


勇く・・・・・


(るな)ぁぁぁ!」

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