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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
○▼※△%章
174/190

174、ズルい女⑨▪️め の ▪️▪️

「姫乃先輩」


「勇くん。。。」

勇くんの声で私は意識を取り戻した。


「大丈夫ですか?」

あぁ。勇くんの声だ。

また聞く事ができた。


「何とか大丈夫かな。身体中が痛いけど。。。」

勇くんは私に傷薬を塗ってくれた。

勇くんはやさしく、丁寧に傷薬を塗ってくれる。

傷薬は気休めかもしれないけれど、勇くんに触れて貰っているだけで、痛みが和らぐ気がした。


「姫乃先輩。どうしてあそこまで、、、」

と勇くんが聞いてきた。

どうしてだろうか。

死にたくないから?

勇くんを守りたかったから?

勇くんに頼りっぱなしになりたくないから?

勇くんに認めて貰いたいから?

どれもそれなりには要素を含んではいるが、どうもしっくりこなかった。


「意地、、、かな。ズルい女の意地」

うん。この答えが一番しっくりくるかな。

勇くんには伝わらなかったみたいだけど、、、


「勇くん。ありがとう」

腕も足も切れていて、まともに動く事はできないけれど、命は繋ぐ事ができた。


「今回は勇くんにいっぱい助けてもらったね」

いつもいっぱい助けて貰っているね。


「いえ。僕は姫乃先輩を守ると決めましたから。まだ、実力不足ですが。。。」


「そんなことはないよ。すっごく頼もしかったよ」

ありがとう。


「こっ、これからもっ、がっ、がんばります」

私も頑張るからね。



少し休憩をした後に、精霊石のところに行った。

体力は少し戻ってきたけれど、傷は塞がっていない。

まともに歩く事もできない状態だ。


精霊石は壁に埋め込まれていた。

「外しますね」

「うん」


勇くんは精霊石を掴み壁から取り出した。

固定されている訳ではなかったので、簡単に外す事ができたみたいだ。


「これが精霊石」

これでリムちゃんを助ける事ができるかもしれない。


「戻りましょうか」


「うん」


その時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴ

洞窟が揺れた。

トラップ?

しかし、私たちはどうする事もできずに立ち尽くす。

そして、私たちが立っている地面が崩れた。


私たちは崩れた地面の瓦礫と一緒に落下した。


地面に直撃はまずい。

私は咄嗟に糸でクッションを作った。

私たちはクッションのおかげで、地面に直撃という最悪を免れる。


10mくらいは落ちたであろうか。

元の場所に戻る方法を考える前に、周囲を確認する。


「ライトボール」

光玉を放ち、周りが見えるようになる。


ゾッとした。

私たちの周りを魔獣が取り囲んでいた。


魔獣の巣なのだろうか、魔獣の数はかなりのものだ。

100体以上は間違いなくいるだろう。

多種に渡る魔獣がいることからしても、巣とは違う気がする。


おそらく精霊石を取りに来た者へのトラップだろう。

魔獣たちもいきなり現れた僕たちに戸惑っているようだが、今にも襲いかかってきそうな雰囲気だ。


私たちはまともに戦える状態ではない。

逃げるにしても、私は足を怪我している。


落ちた所に戻れれば、、、

だめ。糸を巻き付ける所が無いし、あったとしてもいつ崩れるかわからない。


ここまで、、、なのかな、、、

でも、せめて勇くんだけでも、


「勇くん。逃げて。勇くんが逃げ切るまでは、私が抑えるから」

と言って、私は右足を引き摺りながら前に出た。


タッ

しかし、勇くんはさらに一歩前にでた。


「勇くん、、、」


「姫乃先輩。僕は1人では逃げません。あなたを守るって決めたのですから」


「でもこのままじゃ2人とも、、、」


「方法はわかりません。でも諦めません。方法は戦いながら考えましょう」


「勇くん、、、なんで、、、」


「意地ですよ」

と勇くんは笑みを浮かべながら言った。

見透かされているな。

でも、そんな勇くんだから好きになったのだと思う。


だけれどもこのまま勇くんを死なせるわけにはいかない。

抗うんだ。


「勇くんの言うとおり最後まで諦めるべきじゃないね」

私は勇くんに並んだ。

並ぶに足る人間になるために。


「あとひと踏ん張り頑張ろう」


「はい!」



そこから先の戦闘は想像を絶した。

次々に襲いかかってくる魔獣。

倒しても倒しても終わりが見えない。


だけど、、、


諦めない!



勇くんは近づいてきた魔獣を次々に斬り倒す。

私は足の怪我で動けない分、勇くんが私の周りを動きながら戦ってくれている。


いつの間にか、勇くんは魔獣の血で真っ赤だ。

自分の傷もあるだろうが、それもわからないくらい。


私は休む暇は無く、糸を放ち続けている。

魔法を唱えるよりも、消費エネルギーが少なく、魔獣を無力化する角度も高い。

やはり私は魔法の適性はいまいちなのだろう。


私は魔獣を糸で突き刺さして、放り投げるを繰り返した。

どれくらいの数の魔獣を倒しただろうか。

放り投げた先には、魔獣の死体が山のように積み上がっている。


それでも魔獣は、とどまる事を知らずにひっきりなしに向かってくる。

肉体的にはもちろんのこと、精神的にもかなりキツかった。


私たちは休む事も許されず、それこそ機械のように向かってくる魔獣を倒し続けた。


新しい傷も数え切れない。

足や腕も感覚が麻痺してきて、まだ手足が付いているのかもわからない。


2人とも手数が減ってきて、徐々に私たちは追い詰められていく。

打開策は見つからない。


最悪勇くんだけを糸で上に運ぶしか無い。

私はそれをやる判断するを迫られていた。


勇くんに恨まれるんだろうなぁ。

それはやだなぁ。


などと考えていた時、勇くんが魔獣の血で足を滑らせた。

尻餅をついた勇くんに魔獣が襲いかかる。

私は糸を伸ばして、勇くんに迫る魔獣を串刺しにした。


その瞬間、積み上げていた魔獣の死体が崩れて、魔獣が飛び出してきた。

咄嗟の事で私は反応できずに、魔獣の体当たりを受け飛ばされた。


ドンッ

飛ばされた私は尻餅をついている勇くんの背中に当たる。


ふと見上げると、私たちは魔獣に囲まれていた。


もう猶予はない。

勇くんに恨まれるなんて言っていられない。

勇くんを逃さないと、、、


私は勇くんに巻きつけるべく、指から糸を出した。


その時だった。


「諦めたらそこで試合終了だよ」


見上げると、以前にベルンの街で出会った少女、ウィンちゃんが立っていた。

私たちは救われたのだ。

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