169、ズルい女④▪️め▪️ ▪️▪️
私たちはベルンの街に到着後、施設で修行を行いこのAEで生きていく力を身につけていく事にした。
その成果もあり、着々と力をつけていった。
そして、私たちはストロングウルフの討伐依頼を受けた。
しかし、少し力を付けたと言っても、ストロングウルフは並の魔獣ではない。
私も勇くんも何度も致命傷を負い何度も時間を戻した。
こうして何とかストロングウルフの討伐に成功した。
ストロングウルフを無事討伐して、仇を打ったという達成感と共に街へ戻っていると、真壁くんに襲われた。
森を抜けてすぐの事だった。
「死ぬぇぇぇぇー」
と叫びながら、真上から海賊刀を振り下ろしてきた。
咄嗟のことで、私たちは反応ができない。
海賊刀は勇くんを頭から両断した。
「・・・・」
あまりにも突然のことで思考が停止した。
ハッと気がつくと、私たちは森から出たところだった。
戻ったの・・・?
「死ぬぇぇぇぇー」
と叫びながら、真上から海賊刀を振り下ろしてきた。
私は咄嗟に勇くんを押す。
さっきまで私たちがいた空間に海賊刀が振り下ろされた。
真壁くんは、
「姫乃ぉ俺のものになれよぉ。俺は強いぜぇ」
と言ってきた。
私は心の中でため息をついた。
何度言ってもわからない人だ。
人は腕力の強さだけじゃないのに。。。
そんな事よりも、一度の戻りで危険を回避できた事にホッと胸を撫で下ろした。
「真壁君。何度も言うけれどあなたはなんでも暴力に訴える。それは本当の強さじゃないと私は思うの。」
「でもね隣にいる勇くんは違うよ。他人を思いやることができる。他人を助けるために自分より強いものに向かっていける。私はそんな勇くんを尊敬している。憧れている。勇くんみたいになりたいと思っている。」
「真壁くん前に食堂で言ったよね。私には好きな人がいると。私はね勇くんが好きなの。ずっと前から好き。だから真壁くん。私はあなたのものにはならないわ。」
咄嗟の勢いで言ってしまった。
唐突感もあるし、ロマンチックのカケラもない告白。
でも本心だ。
私は勇くんが好きだ。
この気持ちは誰にも踏み躪られたくない。
「僕も先輩を渡したくない!!」
と勇くんは言ってくれた。
私に口裏を合わせてくれただけかもしれない。
それでも、、、
めちゃくちゃ嬉しかった。
こんな時に不謹慎だ極まりないが、今すぐにでも勇くんに抱きつきたい衝動に駆られた。
「最後の忠告だったんだがなぁ」
真壁くんは頭をかきながらボソリと言った後に
「上等だぁ!お前ら全員ぶっ殺してやる!」
と叫んだ。
「姫乃ぉお前は殺した後に犯してやるよ。高梨の目の前でな!ヒッヒッヒ」
と言いながら海賊刀を振り上げ、私に向かって振り下ろしてくる。
私は足の痛みで思うように動けない。
勇くんは私を守るべく飛び出してくれたが、真壁くんの能力によって吹き飛ばされてしまった。
「こんなこともできるんだぜ」
と真壁くんは言いながら、私に向かって海賊刀を振り下ろす。
すると真壁くんと5メートルは離れていた私が一瞬のうちに真壁くんの目の前に移動した。
「空間を削ると元に戻ろうとする力が働いてこうなる。さぁもう逃げられないぜ」
と勝ち誇る真壁くん。
勇くんは起き上がり、再度突進するがまたしても吹っ飛ばされてしまう。
「さて姫乃。本当に最後の確認だ。俺の女になれよ。」
真壁くんは刀を振り上げながら言ってきた。
私は我慢できずに言った。
「本当にしつこいわね。私はあなたのものにはならない。それに今から勇くんが私を助けてくれるわ。」
本当は相手を挑発するような言葉をこの場で言うべきではない。
わかっていても我慢できなかった。
「はぁ?何言ってんだ?あいつはあんなに遠いところでぶっ倒れているんだぜ。今から飛んできても俺がこの刀を振り下ろす方が早いに決まってんだろ。」
勇くんは何とか起き上がるが、真壁くんまでの距離は20mはあった。
真壁くんの言う通り刀を振り下ろす方が間違いなく早い。
勇くんは真壁くんに向かって突進する。
真壁くんは海賊刀を振り下ろし、私の左腕が宙を舞った。
気の遠くなるような痛みが全身に走り、切断された箇所からは血液が噴き出した。
いたいいたいいたいいたいいたい。
「まーかーべー!」
と言いながら、怒りに任せて突っ込む勇くん。
痛みに意識が朦朧としている中で、海賊刀が勇くんの首を飛ばすのが見えた。
首のなくなった勇くんの足元がぼんやりと光っていたようにみえた。。。
ハッと気がつくと、
「はぁ?何言ってんだ?あいつはあんなに遠いところでぶっ倒れているんだぜ。今から飛んできても俺がこの刀を振り下ろす方が早いに決まってんだろ。」
戻っている。
真壁くんは海賊刀を振り下ろす。
私は真壁くんの狙っている場所を知っているので、何とかかわした。
しかし、すぐに次の攻撃を受けて、腹の横を切られた。
いたいいたいいたいいたいいたい。
でも気をしっかり持たないと、、、
怒りに任せて、突っ込む勇くんの首が飛ぶ。
しかし、はっきりと見た。
勇くんの足が光っていた。
これはスキル?
あれ?
勇くんはいつの間に真壁くんの海賊刀が届くところまで近づいたの?
全速力で突っ込んだにしても速すぎる。
移動力のスキル?
これにかけるしかない。このピンチを乗り越えるには。。。
「勇くん!イメージよ!!私のところまで一瞬で行くイメージをしながら、足に力を込めて思いっきり飛んで!!」
勇くんのスキルの発動条件はわからない。
しかしスキルはイメージが大切だ。
今この時にスキルを発動させるならば、イメージの構築が必要だと思った。
「イメージ?」
「勇くんならできる!私を助けて!!」
「イメージ」
「イメージ。イメージ」
「姫乃先輩のところまで一瞬で行くイメージ。」
勇くんイメージをしながら足に力をこめた。
すると足元が金色に光り輝きその光はだんだん強くなる。
「「いけるかもしれない。」」
「お前何をしていやがる。もういい。死ねぃ」
と言いながら真壁くんが刀を振り下ろした。
間に合わない。
そう思った。しかし、、、
「いっけぇぇぇぇぇぇ」
ガッキーン!
真壁くんの刀が空を斬り地面に突き刺さる。
「えっ?」
勇くんも私も状況が把握できていない。
いつの間にか私は勇くんの腕に抱かれていて、真壁くんの10mほど先にいた。
実質勇くんは30mほどを一瞬で移動したことになる。
これが勇くんのスキル。
スキルが見つかってよかった。
自分のスキルが見つからずに毎日悩んでいるのも知っていたし、隠れて特訓していたのも知っていた。
そんな勇くんをうまく励ます事ができなかった自分がもどかしかった。
「勇くんならできると信じていたよ。助けてくれてありがとう」
勇くんの腕に抱かれ、不謹慎にも幸せを感じながら言った。
さっき抱きつきたいと思った願望は、思わぬ形で叶ってしまった。
こうして私たちは何とか真壁くんから逃げる事ができた。




