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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第五章 双子の巫女
162/190

162、また会いたいな

緑竜が粉々に砕けると、氷の粉が舞い上がった。


僕は体力を使い果たし尻餅をついた。

後ろを見ると、みんな地面に座り込んでいる。

まともに立っている体力もなくなるくらいの戦闘だったのだ。


あとは緑竜が復活しない様に祈りながら、様子を見るしか無い。

僕は1級のフラグ建築士である自覚があるので、ここで余計な事は言わない。

黙って緑竜の破片の様子を見た。


1分ほど経過した。

今のところ、緑竜の復活する気配はない。

砕け散った緑竜の破片は蒸発するかのように、ゆっくりと煙となって消えていっている。

今までは1分も経たない内に緑竜の復活は始まっていたので、もう復活しないのでは?と心の中で思ったが、口にはしない。


2分ほど経過した。

煙となってゆっくりと消えていく、緑竜の破片。

しかし、もともとの量が多いので、完全に無くなるには時間がかかりそうだ。


「倒せたかな?」

とここで僕についで高確率でフラグを建築する技術を持ち合わせているウィンが我慢できずに言った。


それでも緑竜は復活してこない。

ランとリンの結界が効果を発揮したのだろう。



僕たちはようやく勝利を確信して立ち上がった。


芽衣が僕に飛びついてきた。

隣でウィンが何故か不機嫌な顔をしていて、四宮さんが気まずそうに苦笑いをしている。


ランとリンもようやく立ち上がり、僕たちと一緒に喜びを分かち合った。


この後は姫乃先輩たちと合流して、柱の調査だな。

と思ったその時、


「なんじゃ。やられてしまったのか。本当に使えんやつじゃ」


とどこからか声が聞こえてきた。


ふと空を見ると人が飛んでいて、その人はゆっくりと降りてきた。


スタッと着地をすると、着物を着た綺麗な女性だった。


「おタマさん?」

僕はボソッと声に出したが、相手には聞こえていないようだ。

しかし、どう見てもその人は以前に僕と姫乃先輩を洞窟まで送ってくれたおタマさんだ。


「ふぅ。虎もやられて、竜もこのザマか。まぁお遊びで作ったようなもんじゃからな」


「あんたは何者?」

とウィンが言うが、相手からの返答はなく、こちらを見向きもしない。


「仕方がない。最後にもう一度だけチャンスをやるかのう」

と言うと、緑竜の破片に向かって、右手を広げた。



緑竜の破片は浮かび上がると、一気に同じ方向に飛び立っていった。

いつの間にか、腰から3本の尻尾が生えていた。


「何をするんだ!」

と僕は言ったが、その人は僕たちを一瞥もせず、一瞬のうちに消えてしまった。


「なんだったのあの人。。。」

四宮さんがすでにいなくなった女性のいた空間を見ながら言った。

四宮さんだけではなく、この場所にいた全員が思っている事だろう。


そんなことを思っていると、

「飛んで行ったのは柱の方向だよ」

と芽衣が言った。


芽衣の言うとおりだ。

今は消えてしまった女性のことを考えている暇はない。


柱には翁くんと姫乃先輩が向かっているはずだ。

僕は嫌な予感がした。


「すぐに柱に向かおう」

と僕が言うと、


「どうやって?もうほとんど魔力はないからとんで行けないよ」

とウィンが言った。

四宮さんに浮かせてもらったとしてもウィンに引っ張ってもらう必要があった。


僕が思案していると、

「芽衣は行かない。もう魔力がほとんど残って無いから役立たずだし、それに会いたくない人もいるかもしれないしね」

と芽衣が舌を出しながら言った後、


「その代わりだけど、芽衣の残りの力を分けてあげるよ」

と言って、ウィンに向かって右手を広げた。

緑色の光がゆっくりと芽衣の右手から発せられて、ウィンの体に入っていった。


「おーっ。少し魔力が戻ってきた」


「もともと芽衣の魔力も残り少ないから、大した量じゃないけど」


「いや。充分だよ。これで飛んで行って、一発ぶっ放すくらいはできそうだよ」


「まっ。そう言う事で芽衣はもう空っけつだから帰るね」


「芽衣。。。」

と僕は芽衣を引き止めようかと思ったが、言葉が出てこなかった。


芽衣は僕の方に駆け寄ると、自分の両方の手のひらを僕の頬に当てて、

「勇っち。一緒に戦えて嬉しかったよ。また会いたいな」

と言うと、ゆっくりと去っていった。



「よし。じゃあ急いで柱に向かおう。四宮さんは皆んなにグラビティをお願いできるかな」

とウィンが言うと、


「了解」

と四宮さんが答えた。


この後、双子の悲鳴が再び大地に響き渡った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



黄柱が光出してから数分。

俺たちは何をするべきかもわからず、光る柱を眺めていた。

腹の傷は深く、気を抜くと意識を失ってしまいそうなほどだ。

気休め程度だが、痛み止めと傷薬を塗って体を休めている。

まだ、戦闘になる可能性はあるのだから。


姫乃もその点は理解していて、無駄な行動はせずに傷の手当てと体力の回復に時間を使っている。

状況判断も的確で頭のいいやつだなと思った。


俺はビナスとの戦闘で全く歯が立たず、自分の無力さを痛感した。

でも、希望は見出せたつもりだ。

似たスキルを使うビナスの戦闘を見ることができたし、イグニッションの力の割り振りで戦闘の幅を広げることができそうだ。

だが、一朝一夕でできるようなものでは無さそうで、まとまった修行の時間が欲しいと考えていた。


そんな事を考えていた時だった。

ものすごい速さで、大きな物体がこちらに飛んできた。

それは、俺たちの近くに着弾したが、何かの肉片の集合体のようだった。

緑色の肉片。ところどころに鱗のような物が見える。


「これって、、、」

姫乃が何かに気づいたようだ。


「あの大きな竜じゃないかな?」


「ーーーーー!」

確かにそう言われると、それしか考えられない。


俺たちは立ち上がって、戦闘体勢をとる。

腹に激痛が走るが、そんな事を言っていられない。


肉塊は緑色の光を発し出した。

すると、肉塊は見る見る内に竜の形を形成していった。


「こいつ。。。回復しているのか?」


しかし、先ほど遠目に見た時とは比較にならないくらい小さくなっている。

それでも、ちょっとしたビルくらいの大きさはあるのだが。。。


俺も姫乃もまともに戦える状態ではない。

しかし、怪我で逃げる事もままならない状況だ。

覚悟を決めるしかない。

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