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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第五章 双子の巫女
159/190

159、不凋花

緑竜は尻尾を振り回す。

僕は月刀で防ぎなんとか直撃を避けた。


質量に任せた大雑把な攻撃。

しかし、これだけ大きな敵だ。

質量だけ考えても相当な威力になっている。


当然僕は威力を殺しきる事はできずに吹き飛ばされた。

僕は冷静に空中で体勢を整えて着地する。

ダメージは大した事はない。


「うっ」

しかし、僕は足がもつれて片膝をついた。


緑竜は大きさは脅威だが、攻撃のパターンは少なく、対応できない程ではない。

スピードも決して遅くはないが、ついていけない速さでもない。

戦うことだけであれば、間違いなく赤虎の方が数段厄介だ。


実際この場で戦っている四宮さん、芽衣、僕、この3人だけでも緑竜を圧倒することができていた。


でも、緑竜は何度倒しても()()()()()


首を落としても、腹に風穴を開けても、氷漬にしても、細切れにしても、何をやっても蘇ってきた。


パターンが少なく、スピードもほどほど。

とはいえ威力はずば抜けて高い。

掠っただけでも大ダメージを受けるし、まともに食らえば致命傷だ。

僕たちは体力的にも精神的にも限界が近づいてきていた。


芽衣は僕を助けるために緑竜の攻撃を背中に受けているし、四宮さんは中距離型だ。

必然と僕が前衛となる。


僕は結局のところ月刀で斬ることしかできない。

だから前衛は望むところなのだが、敵の攻撃を一番受けやすいため、気を緩める隙がない。


そろそろ緊張の糸も切れる寸前になってきているのだ。


片膝をついた僕に緑竜の爪が襲いかかる。

僕は反応が遅れた。


やばっ

と思った時に体が後ろに飛んで、緑竜の爪を回避した。

四宮さんがグラビティで助けてくれたようだ。


四宮さんの近くまで飛ばされた僕は、

「ありがとう」

と言ってすぐに前線にもどる。


「フォローは任せて」

と力強く答えてくれるが、四宮さんもそろそろ限界だ。

さっきみたいな僕へのフォローもそうだし、芽衣が負傷しているため、狙われた時は芽衣の回避も担っていた。


そして、一番状況が良くないのは芽衣だ。

芽衣は大したことないと言っているが、背中の傷は相当深い。

出血も多いし、相当痛むのであろう常に冷や汗を流している。

それでも、前線で戦う僕のフォローを魔法で行ってくれていた。


逃げ出して仲間と合流も考えたが、これだけ目立つ戦いをしているのに誰もきていない。

という事は他のみんなも、何かしらと戦っているかトラブルが発生している可能性が高い。

ここで僕たちが引いてしまうと、他のみんなにも影響をおよぼすし、緑竜が街に襲いかかる可能性もあった。


だが、このままではそう長くは持たないことは間違いない。

何とか緑竜を倒す糸口を見つけなくてはならない。

おそらく緑竜は大地からのエネルギーを吸収することによって、回復を行っている。

その供給を断たないと、、、


「勇っちあぶない!」

声に反応して、ハッと気がつく。

僕が考え事をしている間に、緑竜は光線を吐き出す体勢を取っていた。

緑竜の攻撃の中では、この光線が一番厄介だ。

突風や物理攻撃ならば、月刀の力で何とか対応ができた。

しかし、光線は月刀では斬ることができない。

火力も高いので防御もできない。

基本的に回避する選択となるのだが、攻撃範囲も広いので回避するのも容易では無かった。


「しまった!」

その攻撃の回避に出遅れてしまった。

すでに四宮さんは芽衣と共に回避行動に移っている。


僕も回避をと思い足に力を入れた途端に、地面が陥没して左足が埋まってしまった。

おそらく緑竜が大地からのエネルギーを吸収していることで、地盤が弱くなっていたのだろう。


「勇っちー!」

芽衣の慌てた声が聞こえる。

しかし、地面に埋もれた足がなかなか抜けない。


緑竜は準備を終えて、勢いよく長い首を前に出すと同時に大きな口を開き光線を吐き出した。

光線は一直線に僕に向かってくる。


もう回避は間に合わない。

一か八か月刀で斬るしかないのか。

僕は覚悟を決めて月刀を握った。


その時、、、

「アマラントス!」

と芽衣が魔法を唱えた。


僕の目の前に花が咲く。

それは大きな花の形をした氷だった。

太陽の光で輝く氷の花はとても美しく、僕は死の間際である事も忘れて見惚れてしまった。


そして、緑竜の光線が氷の花に命中する。

高火力を誇る緑竜の光線に対して、微動だにせず、ヒビも入らない。

まさに不凋花(アマラントス)というにふさわしい魔法だ。


緑竜が光線を吐き終えると、氷の花も役目を終えて消えていった。

また芽衣のおかげで、何とか命拾いした。

芽衣にお礼を言おうとして、振り返ろうとした時、


「芽衣さん!」

四宮さんの慌てた声が響いた。

四宮さんの方を振り向くと、芽衣が四宮さんの腕の中でぐったりとしていた。


「芽衣!」

芽衣の反応はない。


僕が後ろを向いた隙をついて、緑竜が腕の爪を立てて攻撃してきた。

僕はジャンプで攻撃をかわして、かわし様に腕を切り落とした。


ドスン


切り落とされた腕が地面に落ちる。

苦しがる緑竜に追撃する事はせずに僕は芽衣の元に向かった。


「芽衣!」

芽衣は四宮さんに抱き抱えられているが、まだ意識はないようだ。


「息はしているけれど、かなり苦しそうよ」

と四宮さんは言った。


緑竜の光線を完全に防いだ魔法。

あれだけの魔法を使ったのだから、魔力の消費は相当なものだろう。

その前にも緑竜を細切れにした魔法を使っていると聞いている。

深傷を負いながらという事も考えれば倒れてもおかしくない状況だ。


「芽衣ごめん。俺のせいだ。。。」

戦闘に集中できていなかった。

そのせいで芽衣が。。。


「・・・さ、むっち、、、きに、、しなくて、、いいよ」

意識を取り戻した芽衣が言った。

相当苦しそうだ。


「芽衣。ごめん。。。ウィンが来るまで頑張ってくれ」

と初めて見る弱々しい芽衣に言った。


いつも元気だった芽衣を、ここまで追い込んでしまったのは僕の責任だ。

僕は立ち上がって、緑竜を見た。


「それまでは、僕が必ず守るから」

僕は月刀を握り直し、緑竜に向かって走り出した。


緑竜はちょう腕が繋がり、動き出したところだ。

翼をはためかせて突風を放つ。


「月刀・緑!」

月刀が緑色の光を纏う。


もっともっとだ。


さらに力を流し込むと、薄緑の光がほのかに強くなった。

体力がどんどん減っていくのを感じる。


僕は足に力を入れると月刀を引いて、力を溜めた。


緑竜が放った突風が迫る。

僕は腹に溜めているエネルギーを腕に送った。

両腕が光を放ち、月刀の纏う薄緑の光が炎のようにゆらめいた。


「一閃!」

僕は刀を横一閃に振り切った。


僕の刀から薄緑の斬撃が放たれると、放たれた斬撃が突風を切り裂いていく。


斬撃は突風を突き抜けて、そのまま緑竜に向かって飛んでいき、繋がったばかりの腕を切り落とした。


腕が地面に落ちて、振動と音が発生するが、まだ僕は止まらない。


「まだだ。回復する暇を与えるもんか」

すぐさま走り出して、緑竜との距離を詰める。


緑竜が残った腕を振って攻撃をしてくるのを、僕はかわしながら月刀で斬った。


緑竜の腕から血が吹き出すが、腕を落とすまでには至らない。


緑竜は尻尾で薙ぎ払いを仕掛けてくる。

僕はジャンプして攻撃をかわしてから、打ち終わりを狙って尻尾を伝って緑竜の体を駆け上がる。

そして、尻尾の付け根まで行くと、大きくジャンプして緑竜の背中を斬った。

緑竜が吠え、血液が噴き出す。


緑竜は振り返り、残った腕で押し潰そうとしてきた。

僕は緑竜の指を斬り落として、スペースを作り回避する。

すかさず距離を詰めて、竜の足を斬った。

巨大な緑竜には大したダメージではないかもしれないが、確実にダメージを与えていった。


自分の攻撃があたらない事に焦れてきたのか、緑竜は大きく口を開けて息を吸い込んだ。


光線がくる!


光線だけは防ぐ手立てがない。

撃たせちゃいけないんだ。

僕は腹に溜めている力を足に移すと、足が光を発した。


「飛神」

僕は発声と同時に足を蹴る。

光になったかの様な感覚を伴いながら、一瞬で緑竜の頭上まで移動した。


僕は月刀に力を流し込む。

月刀は青白い光を纏い、その光は月刀の刃先を超えて伸びていく。


「くらえ!」

僕は緑竜の口先を目掛けて、月刀を振り下ろした。

強制的に口を塞がれた緑竜は口の中で、光線のエネルギーが暴発する。

煙を吐きながらよろける緑竜の首を横一閃で斬り落とした。

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