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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第五章 双子の巫女
153/190

153、役割

「じゃあ僕は行くよ!」

と言って、ウィンは大きくジャンプして行った。

あっという間に、見えなくなるウィンに心強さを覚える


しかし、この戦線でウィンの貢献は間違いなく大きかったはずだ。

僕は僕でしっかりと役割を果たさなくてはならない。

この緑竜をなんとかしないと。。。


「よし!怪我も治った」


「四宮さん。戦える?」

「うん。大丈夫だよ」


「芽衣も期待してもいいか?」

「まっかせてー」


「行くぞ!」

と言って僕は走りだした。



緑竜は僕が近づいてくるのを待っていたかのように、長い首を振るって薙ぎ払ってきた。

緑竜の首は周りの木々を薙ぎ倒しながら、僕に向かってくる。


僕はタイミングを合わせてジャンプして、首をかわすと同時に月刀で竜に斬りかかった。

しかし、緑竜の鱗は硬く月刀の切れ味を持ってしても弾かれてしまう。

やはり力を流し込んで攻撃するしかないようだ。


僕は着地を決めると、即座に竜に向かって走り出す。

走りながら月刀に力を流すと、月刀は青白い光を纏った。


緑竜の攻撃は威力はあるが、振りが大きい。

緑竜が体勢を整える前に攻撃を仕掛ける。


僕は一気に緑竜との距離を詰めて、右足に斬りかかった。

青白い光を纏った月刀は、緑竜の鱗をものともせずに斬り裂いた。

右足から血飛沫が上がる。


「浅いっ!」

緑竜は巨体だ。

月刀の長さでは、深いところまでは届かない。


緑竜は体勢を整えて、左手の爪を立てて僕を狙ってくる。


「のびろぉーー!」

月刀に力を流し込む。

月刀の纏う光は月刀の先端からさらに伸びていく。


僕は緑竜の攻撃を回避しながら、月刀を振り下ろした。

青白い光を纏う月刀は、緑竜の腕を骨もろとも両断する。


ドッシーン

と大きな音を立てて、両断された緑竜の腕が地面に落ちる。

それと同時に

「グギャァァァ」

と緑竜が痛みからか咆哮を上げた。


「勇っち!凄いじゃん!」

と芽衣が言いながらこちらに向かってくる。

四宮さんは一定の距離を取りながら、緑竜の動向を伺っていた。


咆哮を上げた緑竜は、翼を広げてはためかせた。

「突風がくるよ!」

と四宮さんが警告する。


僕は身構えながら緑竜を見た。

すると、四宮さんの警告どおり、はためかせた翼から強力な突風が発せられた。

突風は先ほど薙ぎ払われた木々を巻き込みながらこちらに向かってくる。

これに飲み込まれれば、ひとたまりも無く吹き飛ばされるだろうし、巻き込まれている木々と衝突すれば大ダメージを受けてしまう。


僕は月刀に力を流し込んだ。

「月刀・緑」

月刀が緑色の光を纏う。



「うぉぉぉぉぉ」

と叫び声を上げながら、僕は向かってくる突風に向けて月刀を振るった。

月刀が向かってくる突風を斬り裂くと、突風は消滅して飛ばされていた木々が次々と地面に落ちていく。


「すごい。。。」

と四宮さんが声を漏らす。

でもまだだ。緑竜は突風を消されて動揺している。

一気に攻める!


「四宮さん!僕を緑竜の頭上まで飛ばして!」


「えっ?うん。わかったわ」

四宮さんは一瞬戸惑ったが、すぐに切り替えて頷いた。


「芽衣!フォローを頼む!」


「あいよーー」

と芽衣の軽い返事が終わらないうちに、四宮さんのグラビティで僕の体が上空を目指して飛び上がる。


あっという間に僕は緑竜の頭上に移動して、グラビティの効果が止まった。

僕が月刀に力を流し込むと、月刀の青白い光は刃先を超えて伸びた。

流石に我を取り戻した緑竜が、頭上の僕を噛み砕こうと大きな口を開けた。


「アイスランス」

いつの間にか僕と同じ高さまで飛び上がっていた芽衣が魔法を唱える。

僕の体よりも大きな氷の塊が多数現れて、大きな口を開けた緑竜の口先にある鼻を目掛けて飛んでいく。

大きな氷の塊が何本も何本も緑竜の鼻の近くに命中すると、巨大な緑竜も口を開け続けることはできず、強引に口を閉ざされた。


「芽衣!」

氷の魔法を放った芽衣と目が合うと、芽衣は宙に浮かびながら親指を立てた。

いつもと変わらない芽衣の態度に僕は、ふっと笑い緑竜を見た。

あとは僕が役目を果たすだけ。


僕は長く光を伸ばした月刀を振り上げて、落下する勢いと合わせて緑竜の長い首を目掛けて振り下ろした。


緑竜の首が胴体から離れて、僕と一緒に地面に落下する。

「やばっ。着地のこと考えていなかった。。。」

この高さから落ちたらただじゃすまない。

さらに緑竜の首の落下にも巻き込まれる可能性がある。

僕があたふたとしていると、体がふわっと浮いた。

四宮さんがグラビティを使ってくれたようだ。

ホッとしたところで、緑竜の首が地面に落ちて大きな音を上げた。

まもなく司令塔を失った緑竜の体もよろついた後に大きな音と衝撃を発生させながら倒れた。


「やった!」

四宮さんのグラビティのおかげでゆっくりと落下しながら僕はその光景を見ていた。


「勇っちー!」

との声と同時にふわふわと落下していた僕の体が、横に飛んだ。

芽衣が抱きついてきたのだ。


「勇っち!本当に強くなったねー!」

と芽衣は僕に抱きつきながら言う。

芽衣の柔らかさと甘い匂いに気絶しそうになりながら地面に着地した。

敵であるかもしれない芽衣だが、僕が力をつけたことに対して本当に嬉しそうにしてくれている。


すぐに四宮さんも駆け寄ってくる。

「高梨くん。やったね!」


「四宮さんも芽衣もフォローありがとう」

僕はそう言い終えると改めて緑竜を見た。


緑竜が動く様子は今のところ無い。

さらに攻撃を仕掛けて、完全に消滅させた方がいいのかと考えていると、緑竜の体がまたも光出した。

同時に周りの木々が枯れて、地面がひび割れていく。


「これは、、、」

まるで緑竜が大地からエネルギーを吸収しているようだと言い終える前に、


「勇っち!危ない!」

と芽衣が飛びついてきて、僕を押し倒した。

僕に覆い被さるように倒れ込む芽衣。


もともと僕のいた空間に何かが物凄い速さで通り抜ける。

僕は覆い被さる芽衣の横から、通り過ぎたものを目で追いかけると、それは斬り落とした緑竜の首だった。


緑竜の首はそのまま切り離された胴体に向かって行き、再び繋がった。


「ぐっ」

と僕に覆い被さっている芽衣が呻き声を上げる。

僕は芽衣の顔の横から覗き込むと、芽衣の背中には深い傷があった。

僕を庇った際についた傷であることは間違いない。


「芽衣、、、」

僕を庇って傷を負った芽衣に言葉をなくす。


「大丈夫。こんなの大したことないから」

と芽衣は冷や汗を流しながら言う。

大したことがないなんて嘘だと言うことは、いくら鈍感な僕にでもわかった。


「芽衣、ごめん。。。」

と謝るぼくに対して、


「だから大丈夫だって」

と言って顔を歪めながら芽衣は立ち上がるが、

「うっ」

と痛みで顔を歪めた。

傷口もかなり深そうだ。今までのように動くことは困難だろう。


「芽衣。後方で四宮さんとサポートしてくれるか?」

本当はこのまま離脱してほしいが、離脱しろと言ってもおそらく芽衣は納得しないだろう。

だが、このまま前線で戦えるとは思えないし、戦ってほしいとも思わない。

後方でサポートが僕が譲れる精一杯だ。


「わかったよ。仕方ないかなー」

と言って芽衣も渋々納得してくれた。

その表情も痛みで歪んでおり、相当苦しそうだ。


「四宮さん!芽衣を頼む」


「わかったわ」


僕が前線で戦うんだ。

2人を危険に晒すことはできない。

そう誓って緑竜を見ると、ちょうど回復が終わり行動し始めたようだ。


おそらく緑竜は大地からエネルギーを吸収して回復している。

何とかしてエネルギーの吸収を止めないと、何度でも回復されてしまうだろう。

その方法が思いつかないうちにも、緑竜は僕に向かって攻撃を仕掛けてきた。

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