15、憎悪
「真壁。。。何でここに?」
「さぁなぁ」
真壁ほ手に持つ海賊刀の峰で自分の肩を叩きながら答える。
「芽衣に何をした。」
「ちょっと眠ってもらっただけだぜぇ。俺が殺したいのはお前ら2人だからなぁ」
「なんでこんな事をするの?」
姫乃先輩は言った。
「なんでだと?お前らが気に入らないからに決まってんだろうが。俺はなぁ今まで力で大抵のことは思い通りになってきたんだよ。金でも女でも思うがままだったんだぜ」
真壁は下を向きながら言葉を続ける。
「でも姫乃ぉ。お前はなんで思い通りにならねぇんだ?おどしてもダメ、暴力にも屈しない。」
突如真壁は顔を上げ、凶悪な笑みをうかべながら言った。
「だったらよぅ。殺すしかねぇよなー。殺しちまえばよぅ逆らえねぇだろ。そうすればまた俺の思い通りだ。ヒャハハハハハハ」
真壁は歪みきっている。
話し合いで解決はできそうにない。
「真壁くん。あなたの思い通りにはならないわ。絶対にだよ」
姫乃先輩がそう言うと臨戦体制に入る。
僕は芽衣のところに駆け寄りたかったが、真壁が近くにいるため、安易に動くことができない。
しかし、真壁は芽衣には興味が無いようで、倒れたままの芽衣を放置しこちらに向かってきた。
「さぁ始めようぜ。殺し合いをなぁ!」
そういうと真壁は海賊刀を振り上げこちらに突進してきた。
しかし10m手前のところで突進を止め、僕に向かって海賊刀を振り下ろした。
真壁のスキル攻撃は何度も食らっている。
僕はボクサーのピーカブースタイルのような体制で空間の波動を受け止めた。
「ぐわっ」
来るとわかって防御をしていても衝撃をすべては受け止められず、
僕は体制を崩した。
「しねやぁ」
そのすきに真壁は僕との距離詰めており、直接斬りかかってきた。
ガキィーン
何とか僕は刀で真壁の初撃を受け止める。
「おらおらおら」
そのまま真壁は連続で斬りかかってくるが、僕は刀でさばく。
真壁はスキルは強力だが、武器の扱いについては素人同然で、短期間であるが施設で訓練を積むことができた僕は、ある程度の余裕をもって真壁の海賊刀を捌くことができた。
「せいっ」
真壁の連続攻撃が途切れた瞬間に僕も一太刀返すが、真壁はバックステップで僕の斬撃を躱した。
距離を取られるとまたスキル攻撃が飛んでくると思い、僕は後ろに下がった真壁を追う。
しかし再度放たれた真壁のスキルの衝撃を受け、真壁を追いきることができなかった。
「くっそ」
僕は言った。
「あぶねぇあぶねぇ」
真壁は接近戦では部が悪いと感じたのか、僕から距離を置いた。
「キヒヒ。くらえぇ」
と言いながら海賊刀を振り下ろす。
さっきの攻撃では防御しようとして体勢を崩されたため、「今度は避ける」と思い右に飛んだ。
真壁の攻撃は僕に当たることは無かった。
「運がいいじゃねぇか。」
と言いながら真壁は次の攻撃を放つ。
僕はさらに右に飛び攻撃を避けた。
「くそぅ。ちょこまかと逃げやがって」
真壁の攻撃は目で見えないし、威力も僕を吹き飛ばすくらいには強力だが、範囲はそれほど広くないようだ。
「これならいける」
と言って僕は再度放たれた真壁の攻撃を避けながら距離を詰めた。
もう一息で攻撃が届く距離になるというところで、真壁の攻撃をよけきれず僕は吹き飛ばされた。
「キヒヒ。無駄無駄。」
追撃でもう一発攻撃を放ってくるが、僕はかろうじて避けることができた。
「くっ。攻めきれない」
距離が詰まるとよけきれない。
距離があれば避けることはできるが、このままではジリ貧だ。
「早くくたばっちまえよぉ」
真壁はさらに攻撃をしかけてくる。
僕は真壁の攻撃をよけながら対応策を検討する。
飛神で一気に距離を詰めるという方法があるが、飛神の移動速度で万が一にでも真壁の攻撃を食らってしまったら僕は立ってはいられないだろう。
命を落とす可能性もある。
「飛神は安易には使えない」
と考えていたその時。
「火球!」
姫乃先輩が魔法で拳程度の火の玉を放った。
いきなりの攻撃に真壁は虚をつかれ直撃する。
姫乃先輩は魔法があまり得意ではないので、ダメージこそは微々たるものだが体勢を崩すには十分だった。
僕はその隙をついて、真壁との距離を縮める。
真壁は僕に向けて、海賊刀を振り上げ攻撃を放とうとするが、姫乃先輩が二度目の火球を放った。
真壁は今度の火球は流石に警戒していたのか、体勢を崩しながらも回避した。
その隙に僕はさらに距離を縮め、刀を振り上げる。
真壁は刀をかわそうとするが、僕の攻撃の方が早い。
僕は刀を振り下ろそうとした時、一瞬躊躇してしまった。
僕が刀を振り下ろせば、真壁は死ぬかもしれない。
たとえ真壁は敵で、姫乃先輩を殺そうとしているとしても、人を殺して良いものなのか?
僕は刀を振り下ろすことができなかった。
この隙を見逃さず真壁は僕のみぞうちに蹴りを入れてきた。
蹴りはもろにみぞうちに入り、僕はうずくまる。
真壁は海賊刀を振り上げ僕に止めをさそうとする。
「火球!!」
姫乃先輩が火球を放ち、真壁は一歩後退した。
「勇くん大丈夫?」
姫乃先輩が僕を心配そうに見つめてくる。
「先輩せっかくチャンスを作ってくれたのにすみません。助けてくれてありがとうございます。」
と僕は姫乃先輩に返事をして、真壁を見た。
真壁は「うぜぇなぁ」と言って海賊刀を構え直した。




