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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第五章 双子の巫女
134/190

134、迷子

僕たちは旅の準備を整えて、パルミアの街を後にした。


黄柱の近くにあるロエイの街をめざすのだが、真っ直ぐに行くと、アミア王都を通る事になる。

僕たちは大量虐殺の噂があるアミア王都を避けることにした。

遠くはなってしまうが、アミア王都を迂回して、まずはペタの街を目指す。

余計な揉め事に巻き込まれるよりは、多少遠回りしてでもアミア王都を避けたほうがいいというのはミトの案だ。


ペタの街までは数日かかる。

僕たちは順調に旅を進めた。

雪国ではないので、狩りもできたし木の実も取れた。

ミトが作ってくれるスープにも肉が沢山入るようになり、今まで以上に味に深みが出た。


数日後、今日中にはペタの街につけるかという所で、男の子がひとりでポツンと座っていた。

魔獣もでる平原に男の子がひとりでいるので、何かあったのかと思って走って近づいた。


「こんな所で何をしているの?」

と僕が聞くと、


「お姉ちゃんたちと逸れちゃったんだ」

と男の子は答えた。

男の子は10歳くらいだろうか。

それに身体中が血まみれだった。


「大丈夫?どこか怪我してる?」

と姫乃先輩が聞くと、


「うん。この血は魔獣の血だから。魔獣に襲われた時に着いちゃった」

魔獣に襲われて、お姉ちゃんたちと逸れてしまったのかと思った。


「ウィン。魔法でこの血を洗い流す事できるか?」

と僕は言うと、


「とっておきの魔法があるよ!」

とウィンは控えめな胸を突き出しながら言った。


「浴槽創生」

とウィンが魔法を唱えると、何も無いところに浴槽が作られた。


「ホットウォーター」

そして、浴槽にお湯が入る。


「さぁ入ってよ」

と即席で作ったお風呂を男の子に進めた。


「わぁお風呂だぁ」

と言うと男の子はその場に服を脱ぎ散らかして、湯船に飛び込んだ。


「きっもちいいなぁ」

と男の子はご満悦だ。

こんな便利な魔法が使えるなんて。。。

今度僕もお願いしようと心に誓った。


ウィンは風と水の魔法を使って、男の子の服の洗濯を始めたようだ。


「きみ名前は?」

湯船に浸かる男の子に姫乃先輩が聞いた。


「僕の名前はサトルだよ。お姉ちゃんたちありがとうね」

とサトルは言った。


「もしかして、サトルは転移者か?」

日本人ぽい名前だったので聞いてみると、


「うん。よくわかったね!お兄ちゃんたちも転移者なの?」

やはりサトルは転移者だった。

僕は転移者であることを伝えて、各自自己紹介をした。


「サトルはお姉ちゃんたちと逸れちゃったのか?」


「うん。僕が兎の魔獣を追って行ったら見失っちゃったんだ」

迷子か。。。

子供だから兎を見たら追いかけたくなっても仕方がない。

どうにかして、サトルのお姉ちゃんを見つけてあげないといけないな。

こんな所で逸れてしまっては、お姉ちゃんたちも必死に探しているだろう。


サトルがお風呂から上がる頃には、服は綺麗に洗濯されていた。

さすがウィンだ。


「サトルはどこに行く予定だったんだ?」


「ペタの街に行く予定だったんだよ。でもお姉ちゃんと逸れちゃったし、道もわからないんだ」

僕たちと目的地は同じだ。


「だったらここで待っていても仕方がないし、僕たちと一緒にペタの街まで行くか?」


「いいの?勇お兄ちゃんありがとう」

サトルの顔が明るくなった。


僕たちはサトルを加えてペタの街を目指した。

サトルは今11歳だそうだ。

普通なら小学5年生くらいか。

サトルがいることで歩くスピードが遅くなるかなと思っていたが、そんな心配は不要で、しっかりと僕たちに着いてきた。

逆に僕の体力の方が不安になった。。。


夜になる前にはペタの街に到着した。

ペタの街は近くに大きな湖があるそうだ。

湖のおかげで水産業で街を発展させているらしい。

サトルのお姉ちゃん探しは明日にすることにして、宿を確保して食事に向かった。


「肉なのよ〜」

といつもと同じテンションのリム。

それに加えて

「わーい!お肉だぁ〜」

とサトルも加わり、フォークでテーブルをカンカンと叩いている。


そして、いつものとおり

「お行儀が悪いよ!」

と姫乃先輩にピシャリと注意されていた。

肉もいいけど、水産業の街だ。

僕はせっかくなので魚介料理を注文した。

魚肉と一緒に炊き込んだご飯や貝を焼いた料理を食べた。

鮮度がいいからなのか、そもそも料理法がいいのか僕にはわからなかったが、ベルンの街で食べた魚料理よりも断然美味しかった。



「サトルはAEに来てからどれくらい経つんだ?」

翁くんが聞いた。

「んー。5年以上は経ったかなぁ」

とサトルは軽く言うが、5歳でこの世界に放り出されたのだから、相当大変だっただろう。


「でもね。お姉ちゃんたちに助けてもらったから大丈夫だったよ」

それでもサトルは明るく言った。


食事が終わると僕たちは宿へいって、久しぶりのベッドを味わった。

旅の疲れもあり、ベッドに入るとすぐに眠りについた。



翌朝、僕たちは宿を出て、サトルのお姉ちゃん探しを始めた。

と言っても、ミトは旅の準備と情報収集をすると言ってどこかに行ってしまった。


翁くんは修行してくると言って街の外に向かって行った。

四宮さんは翁くんに着いて行くみたいだ。


結果的にサトルのお姉ちゃん探しは、サトルを含んで5人で行うこととなった。

旅の準備が整うまでは、この街に滞在するとミトは言っていたので、何がなんでも今日見つける必要はない。

でもサトルと逸れてお姉ちゃんも心配しているだろうし、早く見つけてあげたいとは思っていた。


僕たちはまずは冒険者ギルドに行ってみることにした。

冒険者ギルドに入ってみると、それほど大きな街ではない事もあるのか人はまばらだった。

依頼の張り紙を見てみると、魔獣討伐の依頼が多い。

中でも湖に出没するイカの討伐依頼が多かった。

難易度はAで、古い依頼も残っていることから、討伐できる冒険者がいないのかもしれないなと思った。


受付で女性が子供を探しにこなかったかを聞いてみたが、今のところそんな人は来ていないそうだ。

来たら連絡をもらえるように泊まっている宿を伝えておいた。


「さてと次はどうするか」

早くも打ち手が無くなった感じだ。

お姉ちゃんがこの街に来ているかも定かではない。

もしかしたら街の外でサトルを探し続けているかもしれないのだ。


「街の入口に行ってみましょうか。門番の人にそれらしい人が街に入ったか聞いてみましょう」

と姫乃先輩が言ったので、僕たちは門の方に向かった。


門に行く途中で、屋台がありゲソ焼きっぽい物を売っていた。


「いいにぉいだなぁ。勇お兄ちゃん!あれ食べちゃダメ?」

とサトルが言った。

サトルはお姉ちゃんと会えない事にそれほど気にしていないようだ。

まぁ少しでもサトルの気が紛れるならと思って、僕はゲソ焼きを買ってあけた。

「おぉいしぃ」

と言いながら、サトルはゲソ焼きを頬張る。

リムも我慢できずに、ゲソ焼きに手を伸ばしサトルと取り合っている。

最終的には仲良くゲソ焼きを頬張る姿を見て微笑ましく感じた。

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