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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第五章 双子の巫女
133/190

133、パルミアの街

宿がいっぱいなので仕方がなく、僕たちは先に食堂に行って腹ごしらえをする事にした。

「にーく!にーく!」

と食堂へ向かう道中のリムのテンションは高い。


しかし、食堂も満席だった。

ずーんと落ち込むリム。

仕方がないので席が空くまで、並んで待つ事にした。


待つ間、色々なテーブルでの話し声が聞こえて来た。


女性同士が話をしている。

「聞いた?アシリア王都の人々が忽然と姿を消してしまったみたいよ」

「聞いた聞いた。王様も消えてしまったみたいね。怖いわぁ」


男がひとりで酒を飲みながら独り言を言っている。

「あぁ。綺麗な人だったなぁ。もう一度会いたいなぁ」


兵士らしき男が話している。

「しっかしあの女は可哀想だったな」

「そうだな。実際あの女の言っていることが正しかったしな」

「まぁ俺たちは毒をばら撒いた時に街の外を巡回していたからラッキーだったよな」

「しかし、その女の連れの男見たか?怒りと悲しさで顔をくしゃくしゃにしていたな」

「あぁ。ありゃあ傑作だった」


おばあちゃんが話している。

「化け狐がでたべ。一昨日の夜、めんこい女子に狐のしっぽが生えていたべ。オラが見たらアミア王国の方に飛んでいったべ」

「ばぁちゃん。また夢でも見たんかい?」

「夢じゃねーべ」


男性2人が話をしている。

「アミア王国の巫女は双子だそうだな」

「そうそう。めちゃくちゃ可愛いらしいぜ」

「一度見てみたいなぁ」


「ちょっと私は席を外します。先に食べておいてください」

とミトが言うと、兵士の男のテーブルに向かって行った。



「すみません。先ほどの話詳しく教えていただけませんか?」

「何だお前?」


「少し先程の話に興味がありまして」

と言うとミトは金貨を見せた。


「おっおぅ。俺たちが知っていることなら教えてやるよ」

「そうですか。ありがとうございます」


「すみません。お酒を3つ追加でお願いします」

「ここは私が奢りますので、好きに食べてください」

とミトが言う。


「なんか悪いな」

「いえいえ。これもご縁ですから」


そのやりとりを聞いた時に僕たちのテーブルの準備ができた。

僕たちは席について各々注文をした。


料理が運ばれてきても、まだミトは兵士と話し込んでいた。

リムはお待ちかねの肉にご満悦だ。

翁くんも肉好きで、リムと取り合いになっていた。


食事をしていると、少し離れたテーブルでこどもが大人の人に混ざって食事をしていた。

よく見ると、転移者保護施設で一緒だった空だった。


僕は席を立って空に声を掛けた。


「空?」


「あっ。勇お兄ちゃん!偶然だね」


「こんな所で何をしているんだ?」


「うん。ギルドから依頼を受けて、ある女性を探しているんだ。この近くで目撃されたって情報があって」


「そうなのか。空はまだ子供なのにこんな所までくるとはすごいな」


「んーん。この人たちが守ってくれてるから大丈夫だよ」

同じテーブルには男性と女性が座っている。

僕のことは気にもかけずに黙々と食事をしていた。


「でも勇お兄ちゃんすごいね。赤虎を倒したって聞いたよ」


「よく知っているな。まぁみんなのおかげだけど」

僕は指でポリポリと頬を掻きながら言った。


「勇お兄ちゃんはこれからどこへ行くの?」


「元の地球に帰るために柱を目指しているんだよ」


「そうなんだぁ。じゃあこれからアミア王国に行くの?」

空はアミア王国に柱がある事も知っているようだ。


「そうだよ」


「アミア王国は竜の眠る土地って言われているんだよ。勇お兄ちゃん竜に食べられないように気をつけてねー」


「怖いこと言うなよ」

と話をして空とは別れた。

テーブルに戻って、料理を口にした。

ふと空のテーブルを見ると、すでに空たちはいなかった。


僕たちは食事を終えて、街から出たすぐの場所で野宿の準備をした。

「目の前に街があるのに野宿なんて。。。トホホ」

今日はベッドで寝れると思っていただけに落胆は大きい。


「まぁ宿代が浮いたと思って」

と姫乃先輩が言ってくれる。


野宿の準備が終わり一息付いていると、ミトが戻ってきた。


「ミト。何かいい話は聞けたかい?」


「勇さん。あの兵士からアミア王都の事を聞いて来ました。私の掴んでいた情報と実際のところは少し違っていたみたいです」


「アミア王都は黒の組織が毒を撒いて、解毒薬と引き換えに要求を出して来たそうです」

黒の組織・毒という単語で僕はミザリの毒をまた思い浮かべた。


「黒の組織の要求はアミア王国に代々伝わる魔石です」


「魔石?」


「はい。この世界には様々な魔石と呼ばれる物がありまして、それぞれ固有の力が秘められているのです」


「そんな物があるのか。。。それでどうなったの?」


「国王は毒は嘘だと言って、取引を断ろうとしたそうです」


「その時に1人の女性が、毒はおそらく本当だと進言しました」


「しかし、国王は頑としてその女性の意見は聞かなかった。それでも食い下がる女性はその場で取り押さえられたそうです」


「しかし、毒は本当でした。アミア王都では多くの人々が犠牲になりました。国王は立場を守るために、女性から毒は嘘だと進言があったので、取引に応じなかったと公表しました」


「そして、その女性は国を惑わせた魔女として処刑されたそうです」


「そんな。。。」

居た堪れない気持ちになった。

毒で亡くなってしまった人々も不憫だし、その女性は事実とは違う汚名を着せられて処刑された。

なんて不幸な話だろうか。

それもこれも黒の組織が根本の原因だ。

芽衣はそんなところに自ら進んで、一員となっているのだろうか。


「芽衣。。。」

僕は空を見上げた。



翌朝、僕たちは街で旅の準備を整えた。

と言っても、ミトがほとんど必要な物を揃えてしまったので、僕たちは自分の必要なものだけだ。


僕は買うものも無かったので、リムとのんびり過ごした。

丘の上で腰を下ろしてリムと並んで座った。


僕はいい機会なので、前から思っていた事を聞いてみた。

「リムは本当に僕が地球を救えると思っているのか?」


「救えるかどうかじゃないのよ。救うのよ」

とリムはいつもの調子で言った後に、


「でも実際のところ、勇が地球を救えるほど強くなるかはわからないのよ」


「えっ?」


「月刀の力は本物なのよ。月刀が本来の力を発揮すれば、本当に世界を救うこともできるのよ」


「ただ、、、月刀は元々月の神が使用していた刀なのよ。神だから月刀の本来の力を発揮することができていたのよ。人間の力で月刀の力をどこまで発揮させられるのかはリムにもわからないのよ」


「月の神は今はどうしているんだい?」


「わからないのよ。遥か昔に世界を滅ぼそうとした魔獣を封印する時に力を使い果たしてしまったのよ。今では月の神が存在しているのかさえリムにはわからないのよ」


「そっかぁ。僕も少しでも期待に応えられるように頑張らないとな」


「そうなのよ。勇は頑張らないといけないのよ。まだまだ努力が足りないのよ。この前の戦いもいつ殺されてもおかしく無かったのよ、、、ガミガミ ガミガミ」

とリムのお説教スイッチが入ってしまい、僕は耳を塞いだ。


でも一通りお説教が終わると、リムがボソッと言った。


「でも見込みはあるのよ。。。リムは勇でよかったのよ。。。」


「リムぅ〜」

僕はリムの両脇に手を入れて高い高いをした。


「なっ。何するのよ!おろすのよぉ〜〜」

静かな街外れの丘でリムの声がコダマした。

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