131、出発の日
真っ暗な闇の中を幼い3人は手を取って走っている。
左側とさらに左側には男の子がいる。
遥か先に小さな光が見える。
3人は光に向かって必死に走っていく。
何かから逃れたい一心で。
その光は少しずつ大きくなってくる。
そして光のもとにたどり着くと、3人は闇から抜け出し光に包まれていく・・・
「大丈夫だったか?」
聞きなれたとても安心する声が聞こえた。。。
ドンドンドンドン
「ご飯ですよー」
僕は女性陣の部屋をノックした。
ガサガサガサガサと室内で物音がした。
数分経ってから、扉が開いた。
「イサミンお待たせしてごめん」
「うん。別にいいけどどうしたの?」
「昨日みんなで遅くまで話をしていたら、みんなで寝坊しちゃったんだ」
ウィンがテヘッみたいなか感じて可愛く言った。
「ウィンはともかく姫乃先輩や四宮さんまで寝坊とは珍しいですね」
「うん。勇くんごめんね。すぐ行くね」
と姫乃先輩が言うと、
「何で僕はともかくなんだよぅ」
とウィンは頬を膨らませていた。
僕たちはブルの街で赤虎を倒した後、一月程ブルの街に滞在していた。
体力回復と情報収集が目的だ。
そして、努力が実って(ほとんどがミト)柱の場所の情報が得られた。
体力も充分に回復できたことだし、そろそろ柱に向かうこととなった。
今日はその出発の日である。
この1ヶ月程、ミトは情報収集に注力していた。
ブルの街で集められる情報には限度がある。
そのため、ミトは近くの街や村へ行って情報を集めていて、この1ヶ月の間はほとんどブルの街にはいなかった。
そして1週間ほど前に柱の場所を掴んで帰ってきた。
ミトは驚くほどにやつれていたが、この1週間も今度は旅の準備で忙しそうにしていた。
僕たちはと言うと、この1ヶ月の間、常に遊んでいたわけではない。
僕たちはまだまだ力が足りない。
それは、ピテルや海 桜、赤虎などと戦って身に染みた。
あれだけの強敵と戦って生きているだけでも奇跡に近い。
だから、各自で修行を行っていた。
メニューは各自自由だが、最初の基礎トレーニングだけはみんなで行った。
翁くんたちと僕たちでは師匠と呼べる人物は異なるものの、受けた修行の内容は似たようなものだった。
だから基礎トレーニングの大切さも理解している。
それにみんなでやったほうがやっぱり楽しい。
基礎トレーニングの後は自由に修行を行なった。
ひとりで修行をする日もあれば、誰かと一緒に修行をする日もある。
たまには休息日として遊ぶ日もあった。
僕は翁くんと木刀で剣術のトレーニングを行った。
翁くんはイグニッションを使っていなくても、身体能力が高く、まともな打ち合いでは僕は勝てなかった。
ウィンにもよく修行に付き合ってもらった。
魔法を斬る訓練だ。
月刀に薄緑の光を纏わせると、魔法も斬る事ができる。
その練習を行ったり、大きな波を出してもらって「一閃」で斬る練習をおこなった。
姫乃先輩とも修行をした。
姫乃先輩との修行の後は必ず、一緒に街で買い物をした。
一緒に屋台で買い食いしたり、飲み物を飲んだりと楽しい時間を過ごすことができたが、必ず途中からリムやウィンなどが加わってきて、ワイワイしながら過ごした。
楽しく充実した1ヶ月間だったなと思う。
そして、とうとうブルの街を後にする。
僕たちは荷物を持って、ブルの街の門をくぐる。
街の人々が見送りに来てくれた。
赤虎に破壊された門は大分修復された。
人々の力はすごいものだ。
ちなみにウィンが虎と戦った所の修復は未だに目処がたっていないそうだ。。。
こうして僕たちはブルの街を後にした。
姫乃先輩、翁くん、ウィン、四宮さん、リム、ミト、それに僕。
7人で次の目的地に向かう。
目指すは黄柱だ。
黄柱はアミア王国にあるそうだ。
また国境を越える必要がある。
まずは国境付近の街、パルミアを目指す。
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《謎の男》
ふぅ
やっと長年探し求めていたものが見つかった。
こんな所で見つかるなんて、それもこんな形で存在しているなんて思いもよらなかった。
でもこれでようやく対抗の手段を得ることができる。
しかし、あいつらいつの間に仲良くなったんだ?
羨ましいじゃねぇか。
ーーーー少し前の夜ーーーー
俺は嬢ちゃんが1人になった所で声をかけた。
「よぉ」
「あっ。あの時の、、、その節はありがとうございました」
「気にすんな。あいつらとは会えたみたいだな」
「はい。いろいろ教えてもらって、修行も付けてくれました」
「よかったじゃねぇか」
「それで、こんな所でどうしたのですか?」
「ちょっと聞きたいことがあってな」
「はい。お答えできることなら」
「嬢ちゃんと一緒にいる精霊のことだが、、、」
「リムですか?」
「本名はなんて言うんだ?」
「確かリンドムーンだったと思います」
「やっぱりか。。。」
「それがどうかしました?」
「いや。こっちの話だ。そのリムって精霊はこの世界を救うキーマンになりうる存在だ。今は力を失っているようだが、その時まで見守ってやってくれ」
「はい。リムは私たちの仲間ですので、、、」
「そうだったな。。。まぁよろしく頼む。あのへなちょこのこともついでにな」
「はい」
「あっそうそう。嬢ちゃんにこれを渡しておく。肌身離さず身につけていてくれ。必ず嬢ちゃんの助けになる」
「わぁ。綺麗な赤い宝石。こんな高価そうなネックレスもらってしまってもいいのですか?」
「気にすんな。その代わり俺と会ったことはしばらく内緒な」
「あなたが悪い人とは思えませんので、何か考えがあるのですね。わかりました」
「じゃあみんなと仲良くな」
「あっそれと、嬢ちゃんの力だが、、、絶望した時に発動する力ではないと思うぜ」
「えっ?それって、、、」
「じゃあな」
「ちょっと待って、、、行っちゃった。あの人は私の力を知っているの?」




