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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
126/190

126、凱旋

「やった。やったー!」

姫乃先輩がよころびながら僕に飛びついてきた。

姫乃先輩の天使のような顔が急接近して、僕は顔を赤くする。


「勇ぅ。やったのよーーー」

とリムも僕の頭に飛びついてきた。


ウィンを見ると、倒れたままだが、手がGOODサインをしていた。


翁くんもホッとした表情をして、

「また復活しねーだろうな」

と言った。


「翁くん。。。それフラグだよ。。。」

と四宮さんがツッコミを入れた。


みんなの様子を見て、徐々に勝った実感が湧いてきた。

それと同時に緊張の糸が切れて、僕はその場にへたり込んだ。


「勇くん。大丈夫?」

と姫乃先輩が声を掛けてくれた。


「姫乃先輩。ありがとうございました」


「???」

僕のお礼に姫乃先輩はピンときていないようだ。


「僕は戦闘中に何度も死にかけて、何度も心が折れそうになりました。それを支えてくれてありがとうございました。姫乃先輩からたくさんの力を貰いました。そのおかげで最後まで戦うことができました」


「そんな。。。私は何も。。。」

と顔を赤めた。


と、その時に

「おーい」

と遠くから声が聞こえてきた。

ミトだ。

戦闘中は全く顔を出さなかった。

もう存在すら忘れていたと言ってもいいくらいだ。


ミトは街の人を引き連れて来てくれていた。

街の人も戦闘に加わってもらおうと考えたそうだが、レベルが違いすぎて逆に足を引っ張ってしまうと思い、距離をとって隠れていたそうだ。

僕たちは歩く体力もないほど疲労していたので、街の人の助けを借りながら、とりあえずは街に戻った。


街に入ると、街中の人が出迎えてくれた。


「街を救ってくれてありがとー」

「僕たちのためにありがとう!」

「あんたたちは街を救った勇者様だ」


出迎えてくれる街の人々から感謝の言葉をかけてもらい、僕たちは本当に勇者になったような気持ちになることができた。


そのまま、僕たちは宿に戻って休むことにした。

宿代は無料にしてくれるそうだ。


僕は宿のベッドに横になると、あっという間に眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


真っ暗な闇の中を幼い3人は手を取って走っている。

僕は真ん中で、左側には男の子。右側には髪の長い女の子。

遥か先に小さな光が見える。3人は光に向かって必死に走っていく。

その光は少しずつ大きくなってくる。

そして光のもとにたどり着くと、3人は闇から抜け出し光に包まれていく・・・


ハッと目を覚ますと、外は夕方だった。

体はどこも痛くない。

傷や火傷が綺麗に治っていた。


そして、ベッドの横には姫乃先輩が座っていた。


「おはよう。勇くん」


「おはようございます。あの、、、僕はどれくらい寝てましたか?」


「2日寝てたよ。もう他のみんなは起きてるよ。勇くんはお寝坊さんだね」

と言って姫乃先輩はフフフと笑った。


「傷はウィンが?」


「うん。ウィンちゃんが慌てて直してくれたよ。イサミンが死んじゃうーーとか言いながらね。無理して回復魔法を使ったみたいで、そのあと倒れちゃったけど」


「それでウィンは?」


「もう起きているよ。魔力の使いすぎが原因だから。寝れば治るみたい」


「他のみんなも無事ですか?」


「うん。起きたウィンちゃんがみんなを治してくれたよ」


「そうですか。みんな無事でよかった」

と僕は大きくを吐いた。


「勇くん。本当にありがとう。」

と姫乃先輩は僕の右手を両手で包み込んで言った。


「えっ?」


「勇くんにはいつも助けてもらってばかりだね。この世界に来て、本当に頼もしくなったね」


「でも無理はしないで。勇くんがいなくなったら私は、、、」


「姫乃先輩、、、」

ここは「好きです」とか言ってもいいところでは?

前に姫乃先輩は僕のことを好きだと言ってくれた。

死の間際(何故か助かったけど)で意識が朦朧としている時の言葉だったから覚えているかはわからないけど、確かに言ってくれた。

そのあと僕は返事をしていない。

僕も姫乃先輩が好きだ。

前はどちらかと言うと、憧れが強かった気もする。

でも今ははっきりと言える。


僕は姫乃先輩が好きだ。


よし言おう。今言おう。すぐ言おう。

と覚悟を決める。


姫乃先輩の手を握り返して、姫乃先輩の瞳を見た。

綺麗な黒の瞳はその中に僕を映し出していた。


「ひっ、ひっ、ひっ、姫乃、、、先輩」


「なっ、なっ、何かしら?」

僕が突如おかしな態度に変わったことに、姫乃先輩も勘づいて姫乃先輩も落ち着きが無くなっている。


「前に言ってくれたことの返答ですけれど、、、」


「うっ、、、うん」


「あのですね、そのですね」


「うん」


「あの、、、その、、、」

ともじもじしていると、


「うーん。うるさいのよー」

とリムが僕の寝ている布団からもそもそと出て来た。


「リム!?」

「リムちゃん!?」

驚いて2人とも同じ反応をした。


「リム!どうしてこんなところに??」


「どうしてもこうしてもないのよ。勇を心配して付き添ってあげていたのよ」


とその時、ドアが勢いよく開いた。


「イサミン!起きた?」

ウィンが慌てて入って来たのだ。


「あっ、うん。いろいろありがとう」

と言うと、


「イサミンが死んじゃわなくてよかったよぅ」

と言って、僕の手を握ってぶんぶんと上下に振った。



僕は拍子抜けした。

覚悟を決めて告白をしようとしたのに。

でも不快な気分にはならなかった。


もうしばらくはこの関係でいようかなと思うと自然と笑いが出て来た。


「ははははは」

「ふふふふふ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その夜、街の人たちが僕ために宴を開いてくれた。

肉や魚など、豪華な料理を並べてくれた。

街の人たちはお酒を飲んでいたが、僕たちは未成年なので果物から作ったジュースを飲んだ。

ちなみにAEでは15才からお酒が飲めるので、ミトは大人たちと一緒に酒盛りをしていた。


街の人たちは僕たちのことを勇者様と言う。

リムはその呼ばれ方にご満悦のようだったが、僕は照れ臭くてなれなかったので、名前で呼んでもらうようにお願いした。


翁くんとも話をした。


「勇。赤虎の時は助かった。勇は本当に凄かったな」


「翁くん」


「でもな。俺はもっと強くなる。勇に負けないくらい強くなってやる。だから、次は俺が勇を助けてやるからな」


「うん。僕もがんばるよ」

と僕は翁くんと拳を合わせた。


その後、リムに料理巡りをつき合わされて、ウィンにジュース一気飲み対決を申し込まれてなど、激しい戦闘に何とか生き残った嬉しさを発散した。


騒ぎ疲れてふと椅子に腰を下ろし、夜空を見ると今にも降ってきそうなほどの星が広がっていた。

明日は晴れだな。などと考えていると、


トン

と隣に姫乃先輩が座った。

姫乃先輩は、何も言わずに僕と一緒に夜空を見上げた。


こうして楽しいひと時を過ごさせてもらった。



翌朝、僕たちは体力の回復と情報収集のため、しばらくはこの街に滞在する事にした。


僕たちは今回柱を守ることができなかった。

柱が力を失ってしまったために、元の地球に帰る手掛かりを得ることはできなかった。

それに芽衣とも会えていない。

僕たちの目的を果たすには、他の柱を探すことが1番の近道だと言う結論に至り、他の柱の場所を調べている。

とは言っても、情報収集はほぼミトに任せた。

僕たちは久しぶりにゆっくりできる時間を堪能した。



                        五章に続く

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