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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
124/190

124、5分間②

翁くんが炎を止めてくれた。

翁くんは至る所に火傷を負いながら、肩で息をしている。

水の羽衣も無いのにあんな至近距離で、死をも覚悟した一撃だったんだろう。


僕は。。。

赤虎が炎を吐き出そうとした時に死を覚悟して、動けなくなってしまった。

翁くんの勇気はすごい。

僕も翁くんの勇気を少しでも持てるようにしたい。

まずは最後まで諦めない。

抗うんだ。


僕は気持ちを奮い立たせて、赤虎の方を向いた。

赤虎は口の中で暴発した影響から立ち直りつつある。


横を見ると翁くんはイグニッションを解いていた。

それでも赤虎の前に堂々と立っている。


赤虎は大きくジャンプした。

落下地点を予測して回避する。


赤虎は地面に着地すると、その衝撃で大地が揺れた。

僕はバランスを崩すが、赤虎は回転して尻尾で攻撃を仕掛けてくる。


僕は後方に飛ぶ。

バランスを崩して距離が足らないが、四宮さんがグラビティでフォローしてくれた。


何とか着地して、すぐに前線に向かって走る。

翁くんがひとりで赤虎の相手をしてくれているので、少しでも早く前線に戻らなくてはならない。


戻りながら僕はみんなに支えられていると感じた。

信頼できる仲間に。


僕は前線で赤虎の攻撃をかわす。

少しでも攻撃が分散されることで、翁くんの負担も軽くなるはずだ。


赤虎は僕に向かって、火球を吐く。

最後の一撃の力を残すために、もう月刀に力を流すのは温存したい。

僕は四宮さんの補助を受けながらジャンプしてかわした後、火球の爆炎を避けて赤虎に近づいた。

翁くんをチラッと見る。

イグニッションを解除しても、もともとの身体能力の高さで赤虎の攻撃をかわし続けている。

僕も負けじと赤虎の注意を引いた。


どのくらい時間が経ったのか。

僕も翁くんもボロボロだ。

本当に気力だけで体を動かしている。


まだか?まだか?

あとどれくらい?


視界が狭くなってきている。

体力的にも精神的にも限界が近い。

意識も朦朧としてきて、自分の動きすらもあやふやになってきている。

刀を持つ手が重い。

その場に座り込んでしまいたい。

未だに赤虎の攻撃をかわし続けていることが不思議なくらいだった。


その時、赤虎が大きく息を吸い込んだ。

炎がくる!?

僕はボーッとする頭の中で思った。


もう一閃は使えない。

どうやって防ぐ?

僕にはこの場を乗り切る方法が思い浮かばない。


翁くんを見た。

翁くんは悔しそうな顔をしながら、赤虎を睨みつけていた。


何か。何か方法は?


・・・・・

・・・・・

・・・・・


思いつかない。


今にも赤虎は炎を吐き出そうとしている。


ここまでかな。。。

と思って、最後まで足掻くために刀を握り直した。



その時、体が急速に後ろに引っ張られた。

横を見ると翁くんも引っ張られている。


姫乃先輩の糸か。

でもなぜ?


後方に引っ張られる中、誰かとすれ違った。


ウィンだ。


「イサミン。待たせちゃってごめん」

と言って赤虎に向かっていった。


友禅と赤虎に向かうウィン。

華奢な体なのにものすごく頼もしく思えた。


そのまま僕と翁くんは四宮さんと、同じ位置で着地する。


「これからよ!最後の攻撃は3人に任せたわ!」

姫乃先輩から激励があり、僕たち3人は顔を合わせた。


姫乃先輩の激に尽き掛けていた気力が戻ってきたように感じた。


「ようやくだなっ!」

と翁くんが言って、3人で頷いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イサミンたちが持ち堪えてくれた。

ボロボロのイサミンたちを見た。


僕を信じてくれて、死にものぐるいで持ち堪えてくれたんだろう。

早く治してあげたい。


でもそれは後だ。

今は僕の役目を確実に果たす!


赤虎が炎を吐いた。

構うもんか。


僕は溜めに溜めた魔力を一気に放った。


「アロン」


僕の目の前の地面から水が一斉に噴き出して、大きな津波となった。

それだけじゃない。

赤虎を四角で囲むように四方からの大きな津波だ。

4つの津波が一斉に赤虎を飲み込む。

赤虎の吐き出した炎は津波に当たって、一瞬のうちに消滅した。

赤虎はなす術なく津波に飲み込まれる。


「グォォォォォォォォォォォ」

津波に飲み込まれる直前の赤虎は叫び声を上げた。

4つの津波は赤虎を飲み込むと、赤虎を起点として天に向かって、竜巻のように舞い上がった。


赤虎の纏う炎はすでに消えている。


「みんな!今だ!」

と言った僕は魔力が枯渇して、全身の力が抜けた。

その場に倒れた僕は思った。


やっぱり水の羽衣はやりすぎたなぁー。

あとはみんなに任せたよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ウィンから合図があった。

さすがウィンだ!

僕は月刀を握り、赤虎に向かって走り出した。


月刀に力を流す。

月刀は青白い光に包まれた。


狙いは赤虎の首だ。

翁くんと事前に話をしていた。

狙うなら首だと。

僕と翁くんで赤虎の首を両側から斬りつける。


それでも赤虎は大きい。

月刀の長さでは首を落とすには足りない。

僕は青白い光を伸ばした。

青白い光は月刀の倍くらいの長さまで伸びる。


これで思いっきり斬りつける!

もう足はカクカクしていて、腕も上げるのに一苦労だ。

でもあと一撃でいい。

最後の力を振り絞るんだ。

そう自分を鼓舞しながら、赤虎を目指した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ウィンからの合図を受けて、俺は気合いを入れ直した。


勇はすでに走り出している。


ここまで耐えた。

本当に長かった。

この鬱憤をここで晴らす。


「イグニッション」

俺は全力のイグニッションを発動させて走り出した。

残りの力では全力のイグニッションはそう長くは保てない。

一撃で決めるんだ。

狙うは首だ。


赤虎の首を落とす!

俺は全速力で赤虎に向かって走る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ウィンちゃんが本当に赤虎の炎を剥がした。

ウィンちゃんも女の子なのにすごい!

私も負けていられない。


私は今まで、翁くんたちのフォローをしながら、この時のために魔力を貯めていた。


それを一気に放出する。

できる限り大きい氷を作り、それをドリルの形状に変えた。


ドリルを思いっきり回転させて飛ばす。

狙うは赤虎の眉間だ。

ドリルはすごい勢いで飛んでいくが、これで終わりじゃない。


全力のグラビティをかけて、さらに加速させた。


「Gアイスドリル!」


私の今できる最強の攻撃だ。


「これできまれぇぇぇぇぇ!」

柄にもなく叫び声を上げた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


長かった。


5分とは思えないくらい長かった。


何度繰り返しただろう。


あの赤虎の攻撃を一撃も受けずに耐えると言う無理難題。


でも何とかここまでたどりついた。

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