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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
122/190

122、一閃

僕は赤虎に向かっていく。

積極的に攻撃を仕掛けるわけでは無い。

赤虎の纏う炎は強く、深く踏み込めないので有効打が打てない。

その打開策があるわけでもない。


ただ、炎を吐かれる時に僕が1番前にいたかったからだ。

僕がみんなを守るんだ。


姫乃先輩や四宮さんが魔法で牽制してくれる。

翁くんは僕とは違う方向から、赤虎の隙をつこうと様子を伺っていた。


僕が近づくと赤虎は前足を上げて、潰しにかかった。

僕はそれを横に飛んでかわす。

すぐさま虎は横に回転して、尻尾で薙ぎ払ってくる。

僕はそれをジャンプでギリギリかわした。

ジューを音を立てて、水の羽衣が蒸発する。


僕は着地すると、赤虎の後ろ足を斬った。

やはり距離が遠いので薄皮一枚を斬った程度だ。


赤虎は構わずに向きを変えて、前足を振るった。

僕は後ろに飛んで、距離をとった。


赤虎は息を吸い込むと、火球を放った。

僕は後方に飛んだ。


続けて火球を2つ放ってくる。

僕はそれをかわす。

火球では埒があかないと思ったのか、赤虎は大きく息を吸い込む。


くるっ!

「みんな!僕の後ろに下がって!!」


「月刀・緑」

そう言った後に、月刀に力を流し込んだ。

月刀の纏う光が青白い光から薄緑の光へと変わった。


もっともっとだ。


さらに力を流し込むと、薄緑の光がほのかに強くなった。

この状態は体力がどんどん減っていくのを感じる。

長く維持するとあっという間に動けなくなってしまいそうだ。


赤虎が炎を吐き出した。


広範囲の炎が僕に迫ってくる。


僕は足に力を入れて、足場を確認する。

月刀を引いて、力を溜めた。


炎が迫り来る。

大丈夫だ。焦るな。もっと貯めろ。


僕はエネルギーを腕に送った。

飛神の時に足に送るエネルギーだ。

僕の両腕が光を放ち、月刀の纏う薄緑の光が炎のようにゆらめいた。


「一閃!」

自然と出た掛け声と同時に僕は刀を横一閃に振り切った。


僕の刀から薄緑の斬撃が放たれた。

放たれた斬撃を炎が飲み込んでいく。


しかし、斬撃は炎に飲み込まれても、勢いは衰えず炎を切り裂いて突き抜けた。

斬撃が突き抜けると、炎は力を失い消滅した。

斬撃はそのまま赤虎に向かって飛んでいく。


赤虎は予想外の攻撃に回避行動が取れない。

薄緑の斬撃はそのまま赤虎の纏う炎をも切り裂いて、赤虎の鼻先を斬った。


「グォォォォォォォ」

赤虎が痛みからの悲鳴を上げる。


「やった。。。」

月刀からは光が消えていた。

体からもごっそりエネルギーが抜かれた気がする。


「すごいよ!勇くん」

と姫乃先輩は喜んでくれた。

しかし、そう何度もはできそうにない。


攻撃の手段を考えないと。

と思っていると、

「おのれぇぇぇぇ」

と叫びながら怒り狂った赤虎が飛び掛かってくる。

戦闘中なので仕方がないが、考える時間も取ることができない。

僕は何とか体を動かして、赤虎の攻撃をかわす。


間髪を入れずに赤虎は火球を放った。

「月刀・緑」

僕が月刀に力を流し込むと、再び月刀が薄緑の光を放つ。


僕は飛んでくる火球を月刀で斬った。

火球は真っ二つになり、僕の後方で消滅した。

火球程度ならば、一閃を使わなくても対処できる。

一閃は消費するエネルギーが大きいので多様はできなかった。


何とか赤虎の攻撃を防ぐことはできているが、攻撃する手段は見つからない。

このままではジリ貧だ。


翁くんもかなりフラストレーションが溜まっているみたいだ。

さっきから「勝負をかけるぞ」と何度も言っているが、姫乃先輩に止められていた。


だが、いつかは翁くんの言うとおり勝負をかけないといけない。


そんな時にウィンが声を掛けてきた。


「僕が魔法で一瞬だけあの炎を剥がす。その時にみんなで一斉攻撃で赤虎を倒すことはできるかい?」


「そんなことできるの?」


「たぶん。。。だけど、かなりの魔力を使うのと、魔力を溜める時間が必要なんだ。すでに水の羽衣でかなりの魔力を消費しているから、この魔法の後は魔力切れになるかもしれない。それに、魔力を溜めるために水の羽衣を解かないといけない」


ウィンの助けがなくなるってことだ。

水の羽衣やかまいたちなどで、ウィンがにはたくさん助けてもらっている。

ウィンがいなかったら、とっくに全滅しているだろう。

そのウィンの助けが無くなる。。。


もし、倒しきれなかったら。。。

僕は不安になった。

倒し切れる自信が無かった。


僕が判断できないでいると、

「やろうぜ!」

と翁くんは言ってから続けた。


「どのみちこの状態を続けていても、いつかは負けちまう。それに時間が経てば経つほど切れるカードは減っていくぜ。倒しきれなかった時は、またその時に考えればいい」


「そうね。可能性があるならやりましょう」

と姫乃先輩も同意した。


確かに翁くんの言うとおり、勝つ可能性があるならやるべきだ。

このまま戦っていても、勝つ可能性が無くなるだけ。

だったら逃げたほうがまだました。

僕は心を決めた。


「よし。やろう」

と僕は言った。


「ウィンちゃん。準備ができるまでどのくらいかかるの?」


「5分はかからないと思う。けど、その間にみんなには水の羽衣無しで赤虎の相手をしてもらわないといけない」

とウィンが言った。


「少しでも触れたら終わりだよね」

と四宮さんが言うと、


「私に少し考えがあるの」

と姫乃先輩が言った。



僕たちは赤虎の前に立った。

僕と翁くんが前面に少し間を開けて立った。

2人は赤虎の攻撃の回避と、炎が無くなった時に持てる最大の一撃を放つ役割だ。


その少し後ろに四宮さんだ。

四宮さんには魔法で牽制をしてもらう。

炎が無くなった時には、オフェンスに加わってもらう。


四宮さんから少し後方に姫乃先輩が配置した。

雪を積み上げて高くしたところから、全体を見渡す。

姫乃先輩はウィンが魔法を発動するまでの間、みんなの回避のフォローだ。


姫乃先輩のすぐ近くでウィンが魔力を貯め始めている。


これから地獄の5分間が始まる。

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