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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第一章 目覚め
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12、目覚

僕達は休憩したあと街へ戻るために森を歩いていた。

姫乃先輩は足を怪我しており、僕が肩を貸しているため、スローペースで進んでいる。

途中何度か魔獣に襲われたが、芽衣が全て撃退した。


芽衣は、

「ストロングウルフで足を引っ張った分を取り戻す!」

と言って張り切っている。


「僕なんかいつも足を引っ張っているのに。。。」

などと僕は軽い自己嫌悪になりながら進んでいた。


しばらく歩くとようやく森の出口が見えた。

もう夕方になっており、真っ暗になる前に森を抜けられそうでホッとした。


「どこかで野営しないとな。」

などと考えながら森を抜けたその時だった。


「死ぬぇぇぇぇー」

と真上から何かが迫ってきた。

姫乃先輩が咄嗟に僕を押し退け、自分もその勢いで後方に下がる。


ズドォーン

さっきまで僕と姫乃先輩がいたところに、何者かが刀を突き立てて落ちてきた。

陽は落ちてきているが、はっきりとわかる。


それは真壁先輩だった。


「イヒヒヒヒ。勘がいいなぁ。一瞬で楽に殺してやろうと思ったのによぉ」

真壁先輩は楕円形に反りのある海賊刀のような武器を持っていた。


「真壁先輩。」

僕は名前を呼んだ。


「おう。高梨かぁ。キレイどころを2人も連れていい身分だなぁ。一人俺にわけてくれよ」


「なによ!芽衣はあなたのものになんかならないわよ!」

と芽衣が言うと

「おめぇじゃねぇよ。」

と否定してから続けて言った。


「姫乃ぉ俺のものになれよぉ。俺は強いぜぇ」

と言う真壁先輩に姫乃先輩は冷静に答える。


「真壁君。何度も言うけれどあなたはなんでも暴力に訴える。それは本当の強さじゃないと私は思うの。」


「でもね隣にいる勇くんは違うよ。他人を思いやることができる。他人を助けるために自分より強いものに向かっていける。私はそんな勇くんを尊敬している。憧れている。勇くんみたいになりたいと思っている。」


さらに姫乃先輩は続けて言う

「真壁くん前に食堂で言ったよね。私には好きな人がいると。私はね勇くんが好きなの。ずっと前から好き。だから真壁くん。私はあなたのものにはならないわ。」


「えっ?何?」

姫乃先輩が僕のことを尊敬している?憧れている?僕のようになりたい?何かの間違いじゃない?

僕はめちゃくちゃ動揺していた。


姫乃先輩はなんでも持っている人だ。容姿端麗。頭脳明晰。運動神経抜群。僕はそのいずれも持っていない。

なんでも持っている人は普通は僕なんか相手にしない。

でも先輩はこんな僕にも優しく接してくれている。

そんな先輩を僕の方こそ憧れている。先輩がではなく僕が憧れているのだ。


それに

「好き?」

友達として?後輩として?ペットとして?

姫乃先輩の突然の告白に僕の思考はぐちゃぐちゃになり頭の整理ができないでいる。。。


でもひとつだけ確実にわかることがある。

先輩は真壁先輩のものになりたいはずがない。


「僕も先輩を渡したくない!!」


僕の最後の思いは言葉になっていた。


「最後の忠告だったんだがなぁ」

真壁先輩は頭をかきながらボソリと言った。


一呼吸をおいて真壁先輩が叫ぶ。

「上等だぁ!お前ら全員ぶっ殺してやる!」


「姫乃ぉお前は殺した後に犯してやるよ。高梨の目の前でな!ヒッヒッヒ」

そう言うと真壁は海賊刀を振り上げ、姫乃先輩に向かって振り下ろす。


姫乃先輩は真壁先輩の攻撃に反応し転がりながら回避するが、足を怪我しているため、なかなか起き上がることができない。


「まーかーべー!」

僕は真壁に向かって飛び出した。

刀を引き真壁に狙いを定める。


「お前は引っ込んでろ」

そういうと真壁は手に持つ海賊刀をまだ距離があるにもかかわらず僕のいる方向に振り下ろした。

すると僕の体に何かが衝突し僕は吹き飛んだ。


「ぐぁっ」

車にぶつかったかのような衝撃に僕は地面に転がりながら悶える。


「俺のスキルはなぁ空間に干渉できる能力なんだよ。さっき俺はお前の前に空間の波を作った。お前はその波にぶつかったんだよ。」

真壁は海賊刀の峰で肩をたたきながら得意そうに説明する。


「こんなこともできるんだぜ」

真壁はそういうと姫乃先輩に向かって海賊刀を振り下ろした。

すると真壁と5メートルは離れていた姫乃先輩が一瞬のうちに真壁の目の前に移動した。

「空間を削ると元に戻ろうとする力が働いてこうなる。さぁもう逃げられないぜ」


「くっそー」

僕は起き上がり、再度真壁に突進する。

再び真壁が海賊刀を振り下ろすと、またしても僕は吹っ飛ばされた。

その際に持っていた刀から手を離してしまい、離れた刀は僕の数m先で地面に突き刺さった。


「ククク。学習しないねぇ。」


「さて姫乃。本当に最後の確認だ。俺の女になれよ。」

真壁は刀を振り上げながら言った。


「本当にしつこいわね。私はあなたのものにはならない。それに今から勇くんが私を助けてくれるわ。」


「はぁ?何言ってんだ?あいつはあんなに遠いところでぶっ倒れているんだぜ。今から飛んできても俺がこの刀を振り下ろす方が早いに決まってんだろ。」


僕は何とか起き上がるが、真壁までの距離は20mはある。

真壁の言う通り刀を振り下ろす方が間違いなく早い。

僕は目をつぶりうつむく。

その時姫乃先輩が言った。


「勇くん!イメージよ!!私のところまで一瞬で行くイメージをしながら、足に力を込めて思いっきり飛んで!!」


「イメージ?」


「勇くんならできる!私を助けて!!」


「イメージ」


「イメージ。イメージ」


「姫乃先輩のところまで一瞬で行くイメージ。」


僕はイメージをしながら足に力をこめた。

すると足元が金色に光り輝きその光はだんだん強くなる。

僕は足に力が集まっていることを感じた。


「いけるかもしれない。」


僕は地面を蹴るために膝を曲げる。

すると真壁が

「お前何をしていやがる。もういい。死ねぃ」

と言いながら姫乃先輩に向かって刀を振り下ろした。


それと同時に僕は地面をけった。


「いっけぇぇぇぇぇぇ」


ガッキーン!

真壁の刀が空を斬り地面に突き刺さる。


「えっ?」

僕は状況が把握できていない。


僕は姫乃先輩を抱きかかえながら、真壁の10mほど先にいた。

実質30mほどを一瞬で移動したことになる。


僕の腕の中で姫乃先輩は満面の笑みを浮かべていた。

「勇くんならできると信じていたよ。助けてくれてありがとう」


「くっそっ。何をしやがった?」

真壁は困惑している。


無理もない。

どう考えても無理な距離を一瞬で移動し、姫乃先輩を助け出されてしまったのだから。


「何がなんだかわからねぇが、ぶっ殺してやる!」

真壁はそういうと、再び海賊刀を振り上げ、こちらに飛びかかってきた。


僕は避けないとと思ったが、姫乃先輩を抱きかかえており、うまく動くことができない。


真壁との距離が迫った時、

「アイスランス!」

芽衣が真壁をめがけて魔法を放った。


真壁は突進を止め、芽衣を睨みつける。

「てめぇ。邪魔するな!」


と真壁が言っている間に芽衣は、

「グレイシア」

と再び魔法を発動した。

真壁の周りに氷の壁が作られる。


「勇っち逃げるよ!」

芽衣の声に反応し僕は姫乃先輩を抱えたまま走り出す。


「てめぇ逃げるんじゃねぇ」

真壁は氷の壁を突破するのに手間取っているようだ。


「てめぇ邪魔すんじゃねえ」

真壁が叫んでいる。

僕たちは少しでも距離を稼ぐために必死に走る。


「てめぇらいつか必ずぶっ殺すからな!」

遠くから真壁の声が聞こえる。

とりあえず今は追ってくる気はないようだ。


「もう大丈夫だと思うよ」

しばらく走ってから、芽衣は言った。


「はぁはぁはぁ」

僕は足を怪我している姫乃先輩を抱えながら走っていたので、そろそろ限界だった。


「芽衣。ありがとう」

ほっとした僕は助けてくれた芽衣にお礼を言った。


「どういたしまして!芽衣はずっと逃げるタイミングを見計らっていたんだ。」

そう言うと、僕に抱えられている姫乃先輩を見てから、僕の目を見つめて言った。


「勇っち。私負けないから。勇っちへの思いは芽衣の方が大きいから。」


「うっうん。」

僕は呆けた顔で返事をした。


芽衣は言い終わると背中を向け、街の方へ歩き出した。

僕は姫乃先輩を抱えながら芽衣の後を追う。

すっかり日は落ち、空には数えきれない星空が広がっていた。

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