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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
118/190

118、四宮 杏奈

私は四宮 杏奈。

高校2年生。


自分で言うのもなんだけど、私は昔から何でもそつなくできる子だった。


勉強も得意な方だ。

女の子の中では大抵は1番を取ることができる。

でもいつも学年では4、5番。

男の子のトップ層を抜くことはできなかった。。。


運動も苦手ではない。

ただそれも女の子の中では、トップの方だが男の子に勝つことはできない。

翁くんの記録には手も足も出なかった。

翁くんの身体能力が異常に高いこともあるが。。。


私はよく優等生などと言われるが、いつも男の子を越えることはできない。

トップを取ることはできない。

女の子は男の子には勝てない。

それは私にとって当たり前の事になっていた。


翁くんとは小学4年生の時から同じクラスだ。

何かと目立つ翁くんをいつも目で追っていたし、本当は真面目なのに、不真面目を装っている翁くんにいつも小言を言っていた。


翁くんはすごい。

スポーツは万能。

勉強は真面目にやらないためにいまいちだけど、高校一年生の時に

次のテストで赤点だと留年だと先生に言われた時には、私よりも高得点を取っていた。

こんな人がいるんだなと憧れるのとともにこの人には何をやっても勝てないんだなと思い知らされた。


本気になった男の子には敵わないんだ。

女の子は男の子の陰になるしかないんだとつくづく思った。


だから、この異世界に転移してからも、私は補助役。

翁くんや野口くんは輝けるけど、私は輝けない。

女の子は主人公にはなり得ない。


そう思っていた。。。



しかし、今目の前にいる女の子は違った。

歳も一緒。

体格も私とそんなに変わらない。

綺麗な顔立ちで上品そうな女の子。

でもそんな女の子が輝こうとしていた。

必死に足掻いていた。


どうせ男の子には敵わないのに。

助けがくるまで待てばいいのに。

私たちは女の子だからしょうがないじゃない。


何でそんなに頑張るの?


そんな事を戦闘中に考えていた。

気がつくと、虎の牙が迫ってきていた。


「四宮さん!避けて!」

頑張り屋の姫乃さんが叫んでいるのが遠くに聞こえる。


「四宮さん!」

あー私死んじゃうのかな。

女の子だからしょうがないのかな。。。


「杏奈!!しっかりして!」


ハッ

姫乃さんの必死な声に体が反応した。

私は自分にグラビティを掛けて、後方に緊急回避する。

間一髪間に合って、目の前で虎の歯が音を立てて、交差した。


姫乃さんはすぐに私に駆け寄ってきて、力強く私の両肩を掴んで言った。

「杏奈!私たちでもできることをやりきろう!」

「杏奈しかできないことが必ずあるから!」

姫乃さんが必死に訴えかけてくる。


私にしかできないこと。

姫乃さんの頑張る姿を見たからか、姫乃さんの言葉はすっぽり入ってきた。


ダメかもしれない。

無駄かもしれない。

でもやれることはやってみよう。

もう少しだけ頑張ってみようかな。。。


私にしかできないこと・・・か


「グラビティ」

私は重力波を飛ばした。

虎は真正面から受けたが、効果はない。

グラビティは汎用性は高いが、殺傷能力は低い。

グラビティでは虎に効果的な攻撃はできない。


「ウィンド」

私は風の斬撃を飛ばした。

虎の皮膚へ硬く、斬撃は弾かれた。

魔法は苦手ではないが、威力は低い。

虎に効果的な威力を今すぐに出すことはできない。


あと残されたのは体術だ。

野口くんと修行はしたが、本当に齧った程度だ。

虎に対抗できるとは思えない。


私の手持ちはこれだけ。。。

虎と戦えるような術は持ち合わせていない。。。


でも考えよう。

考えるのは得意なはずだ。


私が得意な物。。。

コントロールだ。

スキルも魔法もコントロールするのは得意だった。

翁くんも私の魔法コントロールについては、いつも褒めてくれていた。


魔法をコントロール。。。

「アイスボール」

氷の塊を出して放った。

当然のように虎の皮膚に弾かれる。


もっと鋭く。

今度はツララのように尖った氷を放った。

また虎に弾かれる。


もっと鋭く。

魔力のコントロールを駆使して、ドリルのような形状の氷を放った。

虎には弾かれたが、何となく掴めてきた気がする。


威力を出すには回転だ。

ドリルの氷を出して、回転させた。

もっともっと回転させる。

回転をイメージして、電動ドリルのように回転させた。


「いけっ」

氷を放つと、回転の力も加わりスピードが上がった。

氷は虎の皮膚を貫いて、体に突き刺さる。

虎にダメージを負わせることができた。


でもまだ威力が足りない。

もっと氷を大きくして、ドリル状に変形させて回転も加えた。


「グォォォ」

氷は深々と虎に刺さり、虎は苦痛の叫びを上げる。

傷口からは大量の血が流れていた。

私の攻撃が効いている。


「アイスドリル」

私はこの魔法に命名した。

イメージが固まりやすくなり、発動がスムーズになった。

でもまだ虎を倒すには足りない。


まだ何かできるのではないか?

自分に問いかける。

考える。


私ならではのもの。


グラビティだ。


グラビティは汎用性が高い。


汎用性??


グラビティの特性と私のコントロールを合わせる。



アイスドリルにグラビティの衝撃波を重ねる!!



「Gアイスドリル!」

アイスドリルとグラビティの相乗効果によって、威力が跳ね上がった。

虎は流石に私の攻撃に警戒してきていて、前足で防御の体勢をとったが、Gアイスドリルはその前足を吹き飛ばした。


「グォォォォォ」

前足を消失した虎は叫ぶ。


「すごい!すごいよ杏奈!」

姫乃さんが叫ぶ。

いつの間にか杏奈と呼ぶのが定着したようだ。

それが、私を認めてくれたように感じて心地よい。


そして、私にもできることがあると少し自信に繋がった。


「Gアイスドリル!」

さっきよりも大型のドリルを放った。

速度も速く、前足を失った虎には回避できない。


大型のドリルは虎の腹に大きな風穴を開けた。

虎はそのままその場に倒れ生き絶えた。


「やっ、、、」

やったーと叫ぼうと思った時、


「やったー!杏奈最高!」

と言って、ボロボロになった姫乃さんが抱きついてきた。


私は小さくガッツポーズをした。

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