116、虎
僕は虎の前に躍り出た。
「何だこいつ、、、」
虎は近くで見ると想像以上に大きかった。
虎は僕を一瞥すると、獲物と認識をしたのか
「グォォォォォ」
虎は雄叫びを上げた。
「リムは安全なところに隠れていて」
「わかったのよ」
と言うとリムは虎から離れた場所に避難していった。
リムが離れたのを確認して、虎と向き合うといきなり前足を上げて、押し潰そうとしてきた。
僕は軽くジャンプをしてかわす。
虎の前足は地面を押しつぶすと、地面にヒビが入った。
地面を見て、当たったらやばいなと考えていたら、虎はすでにジャンプして僕を押しつぶそうとしてきた。
僕はこれも横に移動してかわす。
ドーン
と虎が着地して、大きな音と地響きがする。
僕は虎の着地と同時に月刀で虎の足を切った。
虎の足はパックリと割れて鮮血が吹き出す。
「グォォォォォ」
と虎は再び咆哮して、爪を立てた前足を振り回す。
僕はこれをかわしていくが、全てをかわすことができずに月刀で受け止めた。
巨体だけのことはあり、虎の一撃は重く月刀で受け止めても衝撃は大きかった。
僕は横に吹っ飛ばされて、住戸に激突した。
「グハッ」
全身に激痛が走る。
幸いこの世界の住戸はそれほど強度は高くない。
僕はすぐに立ち上がっ、、、
立ちあがろうとした瞬間、虎が追い討ちで前足で薙ぎ払ってきた。
僕はまともにくらってしまい、また吹き飛んだ。
地面に数回バウンドしてようやく止まる。
「勇ー」
リムの声が聞こえる。
僕は何とか意識は保っていた。
早く起き上がらないと、、、
僕は自分の状態を確認しながら起き上がる。
僕には抵抗する力は残っていないと思っているのか虎は追撃をしてこない。
「大丈夫。体はまだ動く」
胸の辺りの痛みが大きい。肋骨にでもヒビが入っているのか。
でも何とか戦うことはできる。
僕がここで抑えないと街の被害が大きくなってしまう。
僕は虎との距離を詰めた。
巨体と戦うのは近距離って相場が決まっている。
虎が前足を振るうが、僕はそれを掻い潜り、月刀を振るう。
虎の足から血が吹き出す。
確実に傷は負わせているが、相手は巨大だ。
刀でいくら斬ってもなかなか致命傷には届かない。
「攻撃する場所だ」
と虎を見ると、前足を上げて僕に振り落としてきた。
僕はそれをかわして、ジャンプする。
虎の顔の正面の高さになり、虎と目が合った。
虎の瞳には文字のような紋様がある。
「弍?」
疑問は持ったが、考えている余裕はない。
僕は虎の目に向かって刀を振り下ろした。
月刀は虎のマブの上から、目玉を切り裂いた。
僕の手には何かを潰すような、何とも気持ち悪い手応えがあり、虎の目から血が吹き出す。
しかし虎は怯まず、僕を噛み砕こうと、大きな口を開けてきた。
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俺は急いで街の方に向かって走った。
虎は街の中に半分程度入った状態だ。
街の外におびき寄せないといけないので、俺は尻尾目掛けて思いっきり剣を振り下ろした。
しかし、虎の皮膚は固く振り下ろした剣を弾き返された。
虎は俺の攻撃には気にも止めず、街の中に入っていこうとする。
「このやろっ」
無視されたのが腹立たしくなった。
「イグニッション」
俺の体から金色のエネルギーが放出され、全身に力が漲ってくるのを感じる。
俺は飛び上がって、さっきと同じ場所に剣を振り下ろした。
剣は尻尾を切り裂いて、血が噴き出せす。
切り裂いた部分は皮と僅かな肉でかろうじて繋がっていて、ブラブラと垂れ下がっている。
「グォォォォォ」
と痛みで咆哮した虎は、流石に無視はできず、街の外の俺に向かい合った。
虎は前足で俺を薙ぎ払おうとしてくるが、俺は飛び上がってかわす。
爪を立てながら、何度か前足を振るってくるが、俺は何とかかわした。
しかし、飛び上がってかわした際の着地で雪に足を取られた。
虎はチャンスとばかりに前足を大きく引き上げて、一気に落としてきた。
避けようにも足を取られて間に合わない。
俺は改めて体に力を入れた。
受け止めてやる。
虎の前足を俺は腕で受け止めた。
潰されそうになるが、必死に耐える。
重みで足が雪に埋もれていく。
「グォォォォォ」
と悲鳴を上げたのは虎だ。
俺は踏み潰される時に剣を突き出していた。
王威の剣は虎の足裏に突き刺さっている。
虎はたまらず前足を振って剣を抜こうとするが抜けない。
俺は剣を離して、飛び上がった。
動揺している虎の額に拳を叩き込む。
虎の目を見ると、元の世界の漢数字のような模様が瞳に浮かんでいた。
「肆?」
四体はいるってことか?
意味はわからなかったが、考えても仕方がない。
俺は再度虎の額に拳を叩き込んだ。
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僕は姫姉と四宮さんを見送った後に虎の元に向かった。
虎は近くに行くとかなりの大きさだった。
「まぁジャイアントアーケロンほどじゃないかな」
虎は目の前に立った僕を敵と判断したようだ。
前足を使って僕を薙ぎ払ってくる。
僕は「跳躍」を使って、前足をかわし虎の頭上にジャンプする。
あまり派手な魔法を使うと、街を破壊してしまう。
「気をつけないとね」
「雷針」
僕は虎の頭上から電撃の針を放つ。
何本もの電撃の針が虎に降り注ぎ、突き刺さった。
「グォォォォォ」
虎は全身に電撃ご流れて悲鳴を上げる。
「いまいち効果が薄いね」
虎は巨体のため、電撃の針では文字通り針で刺された程度だろう。
僕は地面に着地すると、
「炎針」
と大きな炎の針を放った。
しかし、虎は前足で炎針を打ち払うと、炎針は飛散した。
「炎の適性は高そうだね」
と言っていると、飛散した炎が周りの住戸に燃え移る。
「やばい!」
僕は慌てて、消火しようとするが、虎が前足を振るってくる。
虎の攻撃をかわしながら、僕は住戸の消火を行う。
何とか火を消し終えた僕は、
「危ない。危ない。何てことをするんだ!」
と虎に言ってやった。
虎は構わずに前足を振るってくる。
「沼」
僕は前足をかわしながら、片方の後ろ足の足元に沼を発生させた。
虎は沼に足を取られてバランスを崩す。
虎は他の3本の足を軸として、沼から足を引き上げる。
足を沼から引っ張り上げた時に、僕は魔法を放った
「氷弾」
大きな氷の塊が、一本の足を貫く。
ドゴーーーン
バランスを崩した虎は、立っていることができずに横転した。
多数の住戸を踏み潰して。。。。
「あっ。。。」
僕は頬に冷や汗が流れるのを感じた。
僕のせいじゃない。
虎がやった事だと心の中で整理をつけて、
「住戸を潰すとは何て悪党だ!」
と虎を指差して言った。
虎は起き上がり、足を引き摺りながら向かってくる。
住戸を潰しながら。。。
これ以上は本当にまずい!
と思いながら、虎を止める魔法を考えていると、虎は後ろを向いて尻尾で薙ぎ払ってきた。
住戸を次々に破壊しながら、尻尾が僕目掛けて飛んでくる。
もうこれ以上はやめてくれぇ!と思いながらも、攻撃を避けなくてはならない。
僕は「跳躍」で尻尾を避けると、尻尾はそのまま残りの住戸も破壊し、虎の周辺の住戸は壊滅状態だ。
「・・・・・」
「いい加減にしろー」
と叫びながら、僕は「氷弾」を放つ。
氷弾は虎の足に突き刺さった。
杭のような形となり、足を地面に磔にする。
これでもう虎は動けない。
動けなければ街は破壊されない。
僕って頭いいな!とおもいながら、着地して次の魔法を考える。
虎はもがくが磔になっている足は外れない。
「ふふふ。そう簡単には抜けないよ」
周りに影響を与えずに虎を倒せる魔法を考えていると、虎が磔にされている足を食いちぎった。
そのまま虎は僕に向かってくる。
「あわわわわわ」
予想をしていなかった虎の行動に僕は慌てて、咄嗟によく使う魔法を唱えた。
「かまいたち」
威力のコントロールもせずに発動した魔法は、虎を飲み込ながらズタズタに切り裂き、周りの住戸も飲み込んだ。
それだけでは収まらず、街の城壁に風穴を開けて、街の外まで影響を及ぼした。
ドン
しばらく経ってから、ズタズタに切り裂かれすでに生き絶えた虎だった物が遠く離れた場所に落ちた音がした。
「あっ。。。」
僕は辺りを見回した。
僕が戦った周辺はほぼ更地と化して、街を守る壁には大きな穴が開いていた。
僕はこの惨状に顔を青くした。
「うん。相手は強かった。このくらいの被害は仕方がないね。みんな避難できて幸いだった」
と僕の中で結論づけた。




