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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
110/190

110、バンダナ

俺は天井をボーッと眺めている。

宿屋の天井だ。

もうこの天井も見慣れてきた。


右腕を見た。

右腕にはバンダナが巻き付けてある。

俺は友を失った。

友と呼んでもいいものか。

俺は友として接する事ができていたのだろうか。

俺はあいつを信頼するとともに尊敬もしていた。


野口 光雄という男を。。。



「翁くん。今日もそろそろ行こうか」

四宮が呼びにきた。

洞窟を抜けてから一月、いや二月は経ったであろうか。

俺たちは前に進めないでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


洞窟を抜けて野口を弔った後、近くの村まで歩いて行った。

すぐに宿を見つけて、倒れ込むようにベッドに横になった。


次の日は一日中ベッドで横になっていた。

その次の日も一日中ベッドで横になっていた。

四宮が食事を運んできてくれたが、食べる気が起きなかった。

一日中ベッドで横になって四日ほど経った時、少し食事を取った。


自然と涙が出てきた。

食事を取ると泣く気力も湧いてくるようだ。

俺は声を上げて泣いた。

ひと通り泣いた後、俺は宿を出た。

四日ぶりだ。


そのまま俺は村を出て、洞窟の方にむかった。

洞窟の手前で横道に入り、目的地に到着した。

そこは木で作った十字架が地面に刺さっている。

野口のお墓だ。


墓に雪が乗っていたので、俺は手で雪を払った。

墓の下には花が置いてあった。

この国は雪国だから、辺りに花は咲いていない。

四宮が村で購入して置いてくれたのだろう。


俺は立ったまま、また泣いた。


ガサッ

と後ろで音がした。

振り返ると、四宮が木の陰に隠れているのがわかった。


「四宮」

四宮に声をかける。


「翁くん。ごめん。心配で付いてきちゃった」

と申し訳なさそうに言った。


「いや。四宮にも心配かけた。ごめんな」

四宮は毎日ここに来て、花を置いてくれていたらしい。

四宮は強いな。

俺はまだ前に進めないでいる。

こんなんじゃ野口に叱られそうだ。

俺も前を向かないといけない。

四宮と元の地球に帰るために。

俺は腕に巻いてあるバンダナを見ながら思った。


この日から俺たちは修行に明け暮れた。

毎朝起きると、花を購入して墓に行く。

その後は一日中修行をした。

どうしようもないくらい身体を酷使する事で、少しでも前に進める気がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日も四宮と花を購入して墓に向かった。

花を置いて、野口に声をかけてから修行をする。

俺のスキルであるイグニッションの持続力はかなり上がった。

部分的なイグニッションもスムーズに発動できるようになってきた。


四宮もスキルの重力と魔法を中心に修行をしているようだ。


昼時になり、昼飯を食べて食後の休憩をしていた。

急に四宮が立ち上がり、村の方角を見た。


「四宮どうした?」


「何か良くない気配を村の方から感じるの。何かはわからないけど」

村の方を見たが、俺にはよくわからなかった。

魔法については、四宮の方が適性が高い。


「村に戻ってみるか」

「うん」

と言って、2人で村に向かった。

村までは通常1時間はかかる。

俺たちは走って向かうが、雪道のため思ったよりも時間がかかった。



村へ到着した。


村は誰もいなくなっていた。。。


動物の鳴き声もしない。

朝に村を出た時には、いつもと変わらない様子だった。

村にある建物には変化はない。

ただただ生き物だけがいなくなったという感じだ。


「何が起きたの?」

と四宮が言うが、俺にもわからない。

争った形跡もない。

俺たちは村中を回ってみたが、誰1人として見つける事はできなかった。

急に村の人が一斉にどこかに出かけるなどあるのだろうか?

何者かに襲われたとしたら、争ったあとが残るはずだ。それに、死体も見つかっていない。


「どうなってんだ」

俺は唖然とする。

ついさっきまで普通に生活をしていた人が急にいなくなったのだ。

それも村中の人が一斉にだ。


「原因はわからないけど、この村で何があったんだよ」


「あの嫌な気配。。。黒の組織と関係があるかもしれないよね。翁くん柱に向かってみないかな。何かわかるかもしれない」


「でも柱の場所がわからないよな」


「んーん。村の人に聞いておいたの。柱の場所の見当はついているよ」

と四宮は首を振りながら言った。

俺が呆けている間にも四宮は前に目を向けて動いてくれていたみたいだ。


本当に強いやつだな。

と改めて感心した。



四宮の集めた情報によると、ブルの街の近くに青の柱があるそうだ。

地図を確認しながら予定を立てた。

2日ほど準備期間を設けて、ブルの街に向かって出発する事にした。

その間も村の人が戻ってくることはなかった。


俺たちは村を出て、ブルの街に向かった。

雪道は本当に歩きにくい。

また、気温の低さが体力を必要以上に奪っていった。

夜は焚き火があっても寒くて眠れない。

思っていたとおりまともな獲物がいないので、食事は携帯食ばかりだった。

雪道の移動は想像以上に過酷だった。


だが、四宮の方がもっと辛いはずだった。

間違いなく体力がある俺の方が先に根を上げるわけにはいかなかった。

俺が重たい足を上げながら、一歩一歩進んでいると、スススとスムーズに前に進む影が見えた。


見ると四宮だった。

四宮は雪の上を浮かびながら進んでいるように見える。


「四宮。それは、、、」


「あっ。私のスキルの重力を使って、浮かびながら進めないかなと思って、試しているの。」

ふわふわと浮かびながら、四宮は言った。

四宮はスキル・魔法を問わず力の扱い方がうまい。

使用するエネルギーの量を微調整して、範囲や威力を必要な分だけ使ったり、コントロールしたりする。

同じファイアボールでも俺は同じ威力のものしか出す事ができないが、四宮は威力・大きさなどを変えて何種類でも、それこそ無限の種類のファイアボールを出す事ができた。

それは戦闘では非常に重要で、持久力にも大きく影響してくる。


「スキルの練習にもなるしね」

と言う四宮に

「俺にも使ってくれるとうれしいんだが」

そんな便利なスキルの使い道があるなら、俺にも使ってもらいたい。

「んー。自分に使うだけでもコントロールが難しいんだよね。それを2人分同時にとなると。。。」


「難しいならいいんだ」

残念だが仕方がない。

まぁ言われてみれば、その通りだ。

四宮のスキルは重力操作だ。

浮かびながら進むとなると、下から上への重力、後ろから前への重力などを同時に使わなくてはいけない。高さ、スピードなど繊細なコントロールが必要だろう。

それを2人分なんて無理だろうな。と思った。


「でも、試してみようかな」


「えっ?」


すると俺の体がふわっと浮いた。

ゆっくりではあるが、そのまま前に進み出す。


「これはいいな!」

と俺が絶賛すると、


「ちょっと話しかけないで、かなり難しいの」

と重力のコントロールに集中する四宮。

俺は黙って前を見た。

とても快適だ。四宮様様だな。


進行方向に木がある。

このまま右にカーブ。

カーブ?しない。


「ちょっと四宮??」


「あれ?ちょっと待って。。。あれ?おかしいな?」

四宮がテンパっている。


木が目の前に迫ってくる。

「四宮?」


「あれ?あれ?あれ?」

四宮はテンパり続けていた。


「止めて。止めてーー」


ゴンッ

俺はそのまま木に衝突した。

衝撃で葉に乗っていた雪が俺の上から落ちてくる。

俺は抵抗することもできず、雪だるま状態になった。


「翁くん。ごめん。。。」


「ははは。。。」

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