107、情報屋
コミト村に戻ってきた。
とりあえずは宿に拠点を置いて、次の目的地を決める予定だ。
宿は2部屋借りる事として、僕とリム・姫乃先輩とウィンの部屋割りとなった。
その後、僕たちは食堂で久しぶりに腹一杯食べた。
そこで今後の動き方を確認した。
柱の場所を特定する事が当面の目標だ。
ウィンに黒の組織のことを聞くと、幹部とやり合った事があるそうだ。
でもその幹部は男性だったみたいで、芽衣とは違う。
ただ、黒の組織は柱の開放を目指しているという話が聞けた。
この国にも柱があると言うことなので、僕たちは柱を目指す事にした。
柱の場所もわからないのだが。。。
地図を広げて次の目的地を相談する。
王都に行くのはもちろんNGだ。
もう安倍晴明とは遭遇したくない。
僕たちは有力な手がかりがないので、とりあえずは行った事のない街を目指す事とした。
「ここからだとブルの街が一番近そうね」
と地図を確認しながら姫乃先輩は言った。
次の街はまだ無事だといいな。
と僕は心の中で思った。
僕たちはブルの街に着いた。
ブルの街までは2週間程度で到着した。
雪道を歩く事にもだいぶ慣れてきたものだ。
リムは相変わらず僕の肩の上だが。。。
ウィンも旅慣れたものだった。
夜はかまくらを作って暖をとったが、ウィンがかまくらを作る魔法を唱えた時には驚いた。
ウィンは魔法を創ることができるそうだ。
「僕は魔法使いじゃないよ。魔法創造士だよ!」
と腰に手を当てて、胸を張って言っていた。
普段は目立たないが、胸を張ると双丘が存在が確認できて、僕は抱きついてしまった時の柔らかさを思い出して顔を赤めた。
僕たちはブルの街に入る。
なんとブルの街には人がいた。
この国に入って初めてだった。
僕たちはまず宿屋で部屋を借りた。
一部屋しか空いていないため、4人で同じ部屋に泊まることにした。
着替える時には僕は廊下で待っていた。
今回も望んでいたトラブルは無く着替えは済んでしまった。
次に食堂に向かった。
「いらっしゃい。空いているところに座りな」
と店主が迎えてくれた。
食事時だからか、ちらほらと席は埋まっていた。
僕たちは4人掛けの席に座って、注文をした。
「久しぶりに暖かい肉が食べられるのよぉ」
リムはフォークを持って、テーブルにカチカチと当てていたので、行儀が悪いと姫乃先輩に嗜められていた。
リムの料理が待ち遠しい気持ちは僕も同じだった。
注文した料理が運ばれてきた。
肉はステーキのようなもので、魚は煮付けだ。
他にもサラダやパンを注文した。
「「「「いただきます」」」」
久しぶりのまともな食事はとても美味しかった。
味付けが濃い料理が多く、寒い地方の風習なのかな?と思った。
ウィンも楽しそうに食事をしていた。
みんなと食べるだけでもウィンにとっては特別な事みたいだ。
その日は早めに就寝とした。
みんな疲れが溜まっていたからか、すぐに寝てしまった。
ウィンだけはみんなと寝る事に慣れていないため、緊張でなかなか寝付けなかったらしい。
翌日から黒の組織と柱の場所の聞き込みを開始した。
この街にも冒険者ギルドがあるみたいなので、そこで話を聞いてみたところ、意外と簡単に柱の情報は得る事ができた。
柱はこの街からそう遠くない場所にあるらしい。
また、黒の組織についても、ミトという人物が情報を持っていると言う事だったので、紹介してもらえるようにお願いした。
ミトは明日ギルドに来てもらえる事になったので、今日のところは宿に戻る事にした。
僕はリムを連れて街を出て、街の近くでトレーニングを行って過ごした。
夕食時に僕たちは食堂に向かった。
僕たちは昨日と同じテーブルに座り注文をした。
「今日は進展があってよかったね」
とウィンが言うと、
「そうね。ミトという人がどんな人かはわからないけど。。。」
と姫乃先輩は答えた。
料理が運ばれてきたので、ぼくたは黙々と食べ始める。
僕たちが食べ終えた頃に隅のテーブルから怒声が聞こえた。
「てめぇ。もういっぺん言ってみろ!」
ガタイのいい男が、ひょろっとした男の胸ぐらを掴んで拳を振り上げている。
「何度でも言いますよ。今AEは崩壊の危機なんだ。あなたたちみたいに、毎日を惰性に生きている人たちとは組む事はできません」
「てめぇ」
と言って、ガタイのいい男はひょろっとした男を殴り飛ばした。
テーブルを押し倒して、ひょろっとした男が転がる。
「ふんっ」
と言ってガタイのいい男は店を出て行った。
するとひょろっとした男も何でもないように立ち上がり、テーブルを元に戻した。
そして、店主に代金を払ってそのまま出て行った。
「何だったんでしょうか?」
と僕が聞くと、
「ああいうのは関わらない方がいいのよ」
とリムは言った。
食事を終えた僕たちは、そのまま宿に戻り就寝した。
翌朝、僕たちは冒険者ギルドに向かった。
僕たちはテーブルに案内されて、ミトを待った。
しばらく経ってもミトは現れない。
「すっぽかされたかな。。。」
「もう少し待って、来ないようならギルドの人に言って帰りましょうか」
「こんなに遅れるなんてろくなやつじゃないのよ」
などと話していると、
「お待たせしました」
と全身を濃いめの緑で統一された服装の男が声をかけてきた。
緑で統一は奇抜だが、思いの外似合っていて、貴族のようにも見える。
「私が情報屋のミトですが、私の話を聞きたいというのはあなた方ですか?」
とミトは礼儀正しく言った。
年齢は僕と同じか少し上くらいだが、服装といい、高貴な方なのだろうか。
あまり失礼なことをしたら後々面倒だろうか。。。と思った途端に
「お前!遅いのよ!リムたちがどれだけ待ったと思っているのよ!」
とリムが怒鳴り声を上げた。
ノォ〜〜〜〜。
僕は心の中で叫んだ。
「それは大変申し訳ございませんでした」
とミトは冷静に謝罪した。
「ふん。わかればいいのよ」
とリムは矛先を引っ込めてくれたので、僕はホッと胸を撫で下ろした。
「座ってもいいですか?」
とミトが聞いてきたので、
「どうぞ」
と姫乃先輩は返した。
ミトは椅子に座ると、
「早速ですが、私に聞きたい事があるそうですね」
「はい。黒の組織について詳しいと伺いましたので、知っていることを教えていただければと。。。」
姫乃先輩が言う。
「そうですね。黒の組織については、他の人よりは知っているかもしれません。でも何のために知りたいのですか?」
「僕たちの友達が黒の組織にいるのです。自らの意思で組織に入っているかもしれないけれど、もしかしたら無理矢理入らされている可能性もあります。だから、、、」
と僕は答えて、続けた。
「もう一度会って確かめたい。そしてできれば一緒に元の地球に帰りたい」
「そうですか。あなた方は転移者でしたか。それは苦労されたでしょうね」
「では教えていただけますか?」
と姫乃先輩は言った。
「そうですねぇ。金貨500枚でお教えしましょう」
「「「「500枚!!」」」」




