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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
105/190

105、意地

蝶を撃破した僕はそのまま地面に叩きつけられた。

全身に激痛が走る。

このまま目を瞑りたい。

そんな衝動に駆られたが、必死に体を起こして姫乃先輩を見る。

姫乃先輩は地面に倒れていた。


僕はまだ完全に痺れが解消されていない体で立ち上がり、姫乃先輩の元に向かった。

姫乃先輩は体のあちらこちらに傷を負っていたが、致命傷になるような傷は無さそうだった。

しかし、骨折などしているかもしれない。


「姫乃先輩」

僕は姫乃先輩に声をかけた。


「勇くん。。。」

姫乃先輩は弱々しく返事をした。意識はあるようだ。


「大丈夫ですか?」


「何とか大丈夫かな。身体中が痛いけど。。。」

僕は姫乃先輩を仰向けに寝かせたまま、傷薬を塗ってあげた。

どれだけ効果があるのかわからないけれど、無いよりはましだと思った。


「姫乃先輩。どうしてあそこまで、、、」


「意地、、、かな。ズルい女の意地」

僕には姫乃先輩の言っている意味がわからなかった。


「勇くん。ありがとう」

少し落ち着いてきて、姫乃先輩はお礼を言った。

体の傷は多いが、なんとか大丈夫そうだ。


「今回は勇くんにいっぱい助けてもらったね」

「いえ。僕は姫乃先輩を守ると決めましたから。まだ、実力不足ですが。。。」

「そんなことはないよ。すっごく頼もしかったよ」

と姫乃先輩はとびっきりの笑顔で言った。


「こっ、これからもっ、がっ、がんばります」

僕は顔を真っ赤にして言った。



少し休憩をした後に、精霊石のところに行った。

姫乃先輩は右足を引きずっている。斬撃を受けたところが痛むのだろう。

精霊石は壁に埋め込まれていた。

「外しますね」

「うん」


僕は精霊石を掴み壁から取り出した。

固定されている訳ではなかったので、簡単に外す事ができた。


「これが精霊石」

僕は精霊石を手に取って見つめた。

透き通るような不思議な輝きを放つ宝石だった。


「戻りましょうか」

「うん」


その時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴ

洞窟が揺れた。

「何が起きたんだ」

まさか精霊石を外したから?

揺れは治まるどころかどんどん大きくなる。


そして、僕たちが立っている地面が崩れた。


「わぁぁぁ」

僕と姫乃先輩は崩れた地面の瓦礫と一緒に落下した。


姫乃先輩が糸を出してクッションを作ってくれたので、地面に叩きつけられることは無かったが、10mくらいは落ちたであろうか。

洞窟の揺れは治っている。

暗くてよくわからないが、見渡すとかなり広そうな空間が広がっていた。


「ライトボール」

姫乃先輩が光を放ち、周りが見えるようになる。


「なっ。。。」

僕たちの周りを魔獣が取り囲んでいた。

魔獣の巣なのだろうか、魔獣の数はかなりのものだ。

100体以上は間違いなくいるだろう。

魔獣たちもいきなり現れた僕たちに戸惑っているようだが、今にも襲いかかってきそうな雰囲気だ。


ただでさえ姫乃先輩も僕もまともに戦える状態ではない。


「勇くん。逃げて。勇くんが逃げ切るまでは、私が抑えるから」

と姫乃先輩は言って、右足を引き摺りながら前に出た。

自分が走れないから、足手まといになってしまうから。

そう思っての事だろう。


タッ

僕は姫乃先輩の前にでた。


「勇くん、、、」

「姫乃先輩。僕は1人では逃げません。あなたを守るって決めたのですから」

「でもこのままじゃ2人とも、、、」

「方法はわかりません。でも諦めません。方法は戦いながら考えましょう」

「勇くん、、、なんで、、、」


「意地ですよ」

と僕は笑みを作って答えた。


姫乃先輩の顔つきが変わった。

「勇くんの言うとおり最後まで諦めるべきじゃないね」

と言って姫乃先輩は僕の横に立った。


「あとひと踏ん張り頑張ろう」

「はい!」


僕は月刀に力を流し込み、月刀は青白い光を纏う。

姫乃先輩は足の怪我があるので動き回れない。

姫乃先輩の周りを僕が動き回りながら守るしかない。


魔獣が一斉に動き出した。

近づいてきた魔獣を次々に僕は斬り倒す。

姫乃先輩は糸を放ち、複数体を一度に串刺しにした。


魔獣の返り血を浴びて、僕は真っ赤に染まっていくが、そんな事は気にしていられない。

疲労の溜まった体に鞭を打ちながら、次々と魔獣を切り倒していく。

魔獣の数が多く休む暇はない。


姫乃先輩も休む暇は無く、糸を放ち続けている。


20体、30体、どれだけの魔獣を斬り倒しただろうか。

それでも押し寄せてくる魔獣の数は減らない。


また10体、20体と魔獣を斬り倒す。

魔獣はひっきりなしに襲ってくる。

僕は無我夢中で魔獣を斬り倒していった。


流れる汗が冷たくなってきたように感じる。

歯を食いしばりすぎて、口から流れた血も固まり出している。

月刀を振るう腕が上がらなくなってきた。

月刀を握る手の感覚はすでに無く、自分が月刀を握っているかどうかもわからない。

それでも休むことはできない。


僕は魔獣を突き殺す。

月刀を振ることはできなくても、突くことはまだできる。

これだけの魔獣を斬った後でも、月刀の切れ味は全く落ちなかった。


魔獣の爪が肩を掠めた。

肩に痛みが走るが、構わずに魔獣を突き殺す。

すぐに魔獣から月刀を引き抜いて、近づいてきた魔獣に突き刺した。

もう何体倒したのかわからない。


姫乃先輩も糸の数が減ってきている。

このままでは押し切られる。

しかし、打開策は思いつかない。


僕が魔獣の血で足を滑らせて尻餅をついた。

その隙に魔獣が飛び掛かってくる。

僕は左手を出した。

左手を捨てて魔獣が左手を噛み砕いている隙に、突き殺そうとしたのだ。


その時、飛び掛かってきた魔獣を糸が突き刺して、魔獣は生き絶えた。

姫乃先輩が助けてくれたのかと思い、後ろを振り向こうとした時、


ドンッ

と背中に衝撃があった。


僕を助けたその隙に魔獣が姫乃先輩を突き飛ばして、姫乃先輩が僕の背中にぶつかったのだ。

2人ともすぐに立ち上がるが、気がつくと魔獣が取り囲んでいた。


気持ちが折れそうになった。

もう月刀を持ち上げる気力も底をついた。

ここまでなのか。。。



そう思った時だった。




「諦めたらそこで試合終了だよ」


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