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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
103/190

103、頼りになる

蝶は次の攻撃の準備に入っている。

斬撃を諦めて、今度は強風を放ってくるようだ。

強風だと月刀では防ぐのは難しい。

攻撃では今回僕は役に立ちそうにない。

せめて守りで貢献したいと思った。


「姫乃先輩!!」

と名前を呼んで、手を伸ばした。


「勇くん!」

と姫乃先輩は僕の手を取る。

僕は姫乃先輩を抱き抱えて、足に力を流す。

急な僕の行動に姫乃先輩の頬が少し赤くなった気がした。


蝶が羽を羽ばたかせて強風を巻き起こした。


「飛神」

僕は姫乃先輩を抱き抱えたまま、飛神を発動して強風の範囲から逃れる。

強風は誰もいない場所で吹き荒れて、洞窟の壁に直撃する。

僕は抱き抱えていた姫乃先輩を下ろして、次の手を考えた。


すると後ろから、

「勇くん」

と声をかけられた。


僕が振り向くと、姫乃先輩はとびっきりの笑顔で言った。


「勇くん。また助けてくれてありがとう。今日の勇くんはすっごく頼りになるね」


僕は戦闘中にも関わらず、嬉しさのあまり一瞬体から力が抜けた。

「頼りになる」いつもいつも守ってもらってばかりだった自分が、一番ほしい言葉だった。


ハッと我に帰り、蝶を見る。

やる気は100倍だ。

蝶はこちらを向いて、強風の発動準備に入る。

強風に対する効果的な対応策はない。


先制攻撃しかない。

僕には試してみたいことがあった。

僕は月刀に力を流した。青白い光を月刀が纏う。

さらに僕は月刀に力を流す。

安倍晴明との戦いの時には薄い緑色の光を纏っていた。

あの時は僅かだけど、結界に傷をつけた。

あの力ならば、エネルギーの集合体である蝶にも効果があるかもしれない。


僕は全力で力を流す。

すると、月刀が薄緑の光を纏いだした。

「よし」

と僕は刀を構えて蝶をみる。

蝶はすでに強風の発動準備を終えて、羽を羽ばたかせた。


蝶が羽を羽ばたかせると再び強風が発生して僕たちを襲う。

僕は無意識に強風に向かって、月刀を振るった。


すると、月刀の斬撃が強風を切り裂いた。

強風は消滅して、僕と蝶の間には障害がなくなった。

僕はそのまま蝶との距離を詰めて、蝶の羽根に向かって月刀を振り下ろした。


ズバッ

明らかに手応えがあり、月刀は蝶の羽根を切り裂いた。

切り裂かれた羽根は消滅して、エネルギーは雲散した。


「やった!」


「すごいよ!勇くん」

姫乃先輩の声が聞こえる。


薄緑の光まで力を流せば、エネルギー体にでも効果がある事がわかった。

しかし、青白い光の時とは違い、消耗が激しい。

今の僕ではそう長くは持ちそうにない。


蝶は片方の羽根を失ったが、もともとエネルギーの集合体である。

他からエネルギーを回して、即時に修復した。


僕はもう一度月刀を振り上げて蝶に向かって振り下ろした。

蝶は回避行動をとるが、羽根の一部にを切り裂いた


「逃すか!」

僕は蝶との距離を詰めて、横一閃に振り切る。

蝶の羽根を切り裂き、右の羽が両断された。


すぐに修復してしまうが、確実に削っている。

蝶も月刀には戸惑っているようだ。

「このまま押し切る!」

と気合を入れ直して、蝶と距離を詰めるために突進する。


すると、蝶は大きく後ろに飛んで、距離をとった。

これだけ距離を取られると、距離を詰めるのも容易ではない。

しかし、蝶も斬撃と強風を封じられて、撃つ手がないはずだ。


「火球」

姫乃先輩は魔法を唱えるが、蝶は風の斬撃で相殺する。

姫乃先輩の魔法の力も上がってはいるものの、主力は糸で魔法はフォロー的な要素が強い。

戦局を変えるほどの魔法の力は持ってはいなかった。


僕も何度も距離を詰めようと突進を試みるが、一定の距離を保たれてなかなか詰め寄れない。

僕は近づかないと基本的には何もできない。


仕方がない「飛神」しかないな。

あまり多用すると敵がなれてしまう恐れがあるので、ここぞという時に取っておきたい。

しかし、現状を打破するには、飛神しか思いつかなかった。


足に力を流して、目標を見据える。

「飛神」

と発声して足を蹴る。

月刀を前に出して、突きの構えで斜め上に飛び上がり、瞬時に蝶の後方に移動した。

蝶の羽根には大きな風穴が開いていた。


「真ん中から外れた」

本当は一撃で勝負を決めるために、蝶のど真ん中を狙っていた。

まだまだ空中の敵を狙う精度が低い。

戦闘では次の機会が訪れるかもわからないし、次は対策されてしまうかもしれない。

本当はこの一撃で決めたかった。

僕は悔しさを噛み締めながら、落下し着地の態勢をとる。


蝶は風穴を即座に修復するが、明らかに一回り小さくなっている。

エネルギーの総量が減ってきているのだろう。


蝶は僕への警戒を強めたのか、今まで以上に距離を取った。

僕は距離を詰めるために突進する。


すると、蝶が羽根を羽ばたかせた。

強風か?と思い身構えるが、強風は襲って来なかった。

代わりに蝶の羽根から綺麗な粉が飛び散り、僅かな風に乗ってこちらに流れてくる。

「これは?鱗粉?」

こちらにとっては良くないものとは即座に認識をしたが、範囲が広く、狭い洞窟内では逃げるスペースがない。


「姫乃先輩下がってください!」

姫乃先輩だけでも後ろに下がってもらう。

どんな攻撃なのかわからない中、2人で受けてしまうと取り返しがつかなくなる可能性がある。


僕は月刀に力を流す。

強風も切り裂く事ができた。

これもいけるかもしれない。

僕は月刀を横一閃に振り抜いた。

しかし、強風とは違い、鱗粉を掻き消すことはできなかった。


そのまま鱗粉は僕の周囲にまで飛んできた。

僕は変化を見逃さないように注意を払う。


しかし、鱗粉が僕を取り巻いても特に変化は無かった。

あれ?何も起きない。。

少し様子を見ても特に何も起きなかった。


よし。鱗粉の効果はわからないけれど、今のうちに攻め切った方がいい。

僕は蝶との距離を詰めようと、足を一歩前に出した。


出した。

いや出なかった。

一歩進もうと思っても、足が思うように動かない。

足だけではない。腕も顔も全身が痺れて動かない。


「これは。。。」

シビレ粉。と言おうと思ったが、口も思うように動かない。


「勇くん!」

と姫乃先輩が心配して声をかけてくる。

しかし、それにも応える事ができない。


このままではまずい。

眼球を動かして蝶を見る。蝶は次の攻撃の態勢を取っている。


くる!おそらくは斬撃か。

今の僕では防ぎようもない。

蝶は情けをかけるそぶりは全くなく、動けなくなった僕に対して斬撃を放った。


しゅるしゅる

と僕の体に糸がくるまる。

そのまま僕は糸に引かれて、後方に飛んだ。

その直後、僕のいた場所に風の斬撃が到達して地面を削った。


「あ、、、、り、、、、」

僕は助けてもらったお礼を言おうとしたが、口がうまく動かない。

助けてくれたのはもちろん姫乃先輩だ。

姫乃先輩は糸で僕を引き寄せてくれた。


「勇くん。大丈夫?動けないの?」

と姫乃先輩は質問をするが、僅かに頷く事が精一杯だった。


「痺れているみたいだね。効くかはわからないけれどこれを飲んで」

と姫乃先輩は言って、小瓶に入った液体を飲ませてくれた。

街で購入してあった解毒薬だ。

鱗粉の痺れに効果があるかはわからないが、今はそれに縋るしかない。


「勇くんは少し休んでいで」

と言うと、姫乃先輩は前に出ていった。

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