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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
102/190

102、精霊石の洞窟

目の前には初めて見る洞窟の入り口がある。

おタマさんは僕たちを洞窟の前にワープさせてくれたようだ。


「おタマさんは何者だったのでしょうか」

「わからないわ。でも、私たちはおタマさんの話を信じて、この洞窟から精霊石を取ってくるしかない」

「そうですね」

隣には目を瞑ったままのリムがいる。

僕たちは、リムを岩陰に寝かせて、姫乃先輩の糸で囲った。


「これでしばらくは大丈夫だと思う」

と姫乃先輩は言った。


何が待っているのかわからない洞窟に1人で行くわけにはいかないし、リムを連れて行くわけにもいかない。

相談した結果、これが最善だという結論に至った。


「じゃあ行きましょう!」

僕たちは洞窟に入っていった。


洞窟の中は当然のように真っ暗だった。

手持ちの発光石を使い奥に進む。


途中で何度か魔獣に襲われた。

熊や蜘蛛、蛇などの実在の生物を模した魔獣で、たいした脅威にはならなかった。

僕たちはどんどん奥に進む。

この洞窟がどのくらいの深さがあるのかわからない。

少しでも早く戻れるように、僕たちは休憩もろくに取らずに進んだ。


洞窟に入ってから、2時間程度進んだところで、開けた空間を見つけた。

いつものように、姫乃先輩が糸で中の様子を探る。


「糸には何も触れたものはなかったわ」

少なくとも、床を歩いている魔獣はいないようだ。

中の様子を伺っても、生き物がいる気配はない。

いつまでもこうしている訳にはいかないので、僕たちは中に入って行く事にした。


「ライトボール」

姫乃先輩の手のひらからバスケットボールくらいの光の玉が生まれて、放たれた。

放たれた光の玉は、ある程度の高さで停止して、中を照らした。


中はフットサルコート2つ分くらいの広さで、それほど広いわけでは無かった。

見える中では魔獣もいない。

そして洞窟はここで行き止まりのようで、進む道は見当たらない。

ここではないのか。。。と思った時に


「勇くん。あれを見て」

と姫乃先輩は指を差した。

姫乃先輩が指差す方向を見ると壁に埋まって、一際輝く宝石のようなものがある。

「あれは。。。」

「うん。おそらくあれが精霊石じゃないかな」

その石は今まで見た事がないような、不思議な輝きを放っている。


「いってみましょう」

と言って、中に足を踏み出した。

中に入っても魔獣が現れる雰囲気はない。


「魔獣がいなくて助かりましたね」

と僕が言うと、

「勇くん。。。それもフラグだよ」


精霊石まである程度の近さまで行った時、急に目の前の空間が歪んだ。

空間に散らばっていたエネルギーが一点に集中して行くみたいに見える。


「勇くん!気をつけて!」

と姫乃先輩は行った。

一級のフラグ建築士の僕としては、姫乃先輩に申し訳ないと思いながらも、気を引き締めた。


集まったエネルギーは徐々に蝶の形を形成しだした。

蝶の形取ったエネルギーは実態はないのか、透過していて後ろの壁が見える。


「こんなやつ切れるのかな」

と僕はふあんを口に出した。


「やってみるしかないわね」

と言うと、姫乃先輩は指から糸を出した。

糸は蝶に向かって、一直線に伸びていき蝶に突き刺さったかに思えたが。

糸は蝶を素通りして、後ろの壁に突き刺さった。

やはり実態がないのか。

どうやって攻撃を当てればいいんだ?


まてよ。

もしかしたら相手の攻撃も当たらないのでは?などとおめでたい頭で考えていると、蝶が羽を羽ばたかせた。

途端に風の斬撃が発生して、ぼくたちに襲いかかる。

姫乃先輩は咄嗟に糸で壁を作って斬撃を防いだ。

僕は刀で斬撃を捌くが、全てを捌ききれずに肩や腿に斬撃を掠める。


「つぅ」

痛みが走り、敵の攻撃が有効である事が確認された。


「火球」

とすかさず姫乃先輩は魔法を唱えた。

バスケットボールくらいの火の玉が蝶に向かって飛んでいく。


蝶は向かってくる火の玉に向かって、風の斬撃を放つと、斬撃と相殺されて火の玉は消滅した。

()()()()()()()()

そこに意味がある。

さっきの糸は気にもかけずに何もしなかった。

しかし、今の魔法には対応した。

もしかしたら魔法ならダメージを与える事ができるのではないか?

僕は姫乃先輩を見た。

姫乃先輩は僕の考えを理解してくれているようで強く頷いた。

正直言って、魔法しか効果がないとなると、僕は役立たずだ。

姫乃先輩に任せるしかなかった。


「火球」

姫乃先輩は再度火球を放つ。

それを蝶は風の斬撃で相殺する。


その隙に僕は蝶に接近してジャンプした。

そのまま、刀を振り下ろすが蝶は微動だにしない。

刀と僕の体は蝶をすり抜けて、蝶の背後に抜けてしまった。

やはり魔法だけを嫌がっている。


「電撃」

姫乃先輩は今度は広範囲の魔法を放った。

これは斬撃では相殺できないだろう。

すると蝶は羽を大きく広げて体ごと回転した。

回転の力で蝶の周りを竜巻のような風が覆う。

電撃は竜巻によってかき消された。

電撃が消滅するのと同時に蝶が回転を停止する。


蝶は再び羽を羽ばたかせると今度は強風を発生させた。

強風は姫乃先輩に襲いかかる。

僕は反対側にいるために、攻撃の範囲ではない。


姫乃先輩は両手を交差して強風を受け止めようとする。

「きゃあぁぁぁ」

しかし、耐えきれずに吹き飛ばされた。


勢いよく吹き飛ばされて、壁に激突してそのまま地面に落下した。

姫乃先輩はうつ伏せに倒れて動かない。


蝶はすかさず羽を羽ばたかせて風の斬撃を放つ。

やばい。

姫乃先輩はこの斬撃に対応できる状態じゃない。

僕が守らないと。


僕は足に力を流す。

「飛神」

発生とともに足を蹴った。

瞬時に姫乃先輩の前に移動する。


「姫乃先輩は僕が守る!」

姫乃先輩の前に立って斬撃を受け持つ。

僕は月刀を振って、斬撃をいなす。


「全てをいなす事は僕には無理だ。致命傷だけ避けろ」

僕はある程度のダメージは覚悟して、急所に飛んでくる攻撃だけは確実にいなした。

頬、腕、足と至る所に切り傷が増えて行く。

痛くて、逃げ出したい。でも僕が逃げたら姫乃先輩は。。。

「絶対に逃げない!!」

と気合いを入れて、月刀を振る。


無意識に僕の力が月刀に流れる。

月刀が青白い光を纏う。

そして、青白い光が刀の先端では留まらず、さらに先まで伸びた。

伸びた光でも、斬撃をいなす事ができ、僕の間合いが広がった。

少し遠くから対応ができるだけでも、かなりの余裕が生まれる。


間合いにもなれてくると、僕は全ての斬撃をいなすことができるようになっていた。


これ以上は無駄と判断したのか、蝶は斬撃を止めた。

「姫乃先輩!」

と僕は声を掛けると、姫乃先輩はハッとして起き上がった。

どうやら気を失っていたようだ。

僕は姫乃先輩を守り切る事ができてホッとした。


「姫乃先輩!大丈夫ですか?起き上がる事はできますか?」

僕は姫乃先輩の状態を確認する。


「うん。大丈夫みたい」

と姫乃先輩からの返答を聞いて、再びホッとする。


「勇くん。私を守ってくれたのね。ありがとう!」

即座に状況を把握して、お礼を言ってくれた。

その笑顔は月のように綺麗だと思った。

一時とはいえ姫乃先輩を守れたことに嬉しさと誇らしさを覚えた。

とそんな事を考えている場合ではない。

僕は改めて蝶を見た。

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