表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第一章 目覚め
10/187

10、ストロングウルフ討伐

おおみみず討伐から2ヶ月間、僕たちは修練とギルドの依頼に費やした。

修練を続けたおかげで僕たちの力もかなり向上した。


ギルドの依頼も討伐系を中心に受けて、討伐がない時は薬草採取や落とし物探しなどの依頼をこなした。

依頼の報酬は一部を施設に渡して、半分はこれから元の地球に帰るための旅の資金として貯金し、残りは3人で分けた。


そうしてようやく。

「おめでとうございます。功績が認められてあなた方は本日からBランクに昇格となりました。今後のご活躍を期待しております」

僕たちはBランクに昇格した。


Bランクの冒険者カードは特殊な板に魔法で文字が記載されていて偽造ができないようになっているらしい。


「Bランク。やっとここまできたね」

心なしか姫乃先輩も興奮しているようだ。


改めて掲示板を見る

「あった」



ストロングウルフ討伐

ランク B

森に生息しているストロングウルフが頻繁に人間を襲っていて、薬草などの採取に支障が出ている。討伐をお願いしたい。

報酬 金貨1枚



流石に依頼ランクが上がると報酬も上がるようだ。

僕たちはストロングウルフのことを受付嬢に聞いた。

「ストロングウルフは東の森に生息しています。東の森には他にも魔獣がおりますが、ストロングウルフが森の主のようになっております。ストロングウルフは噛みつき、引っ掻きなどを主体として攻撃してきますが、厄介なのはスピードと戦う知恵があることです。他の魔獣のようにただ襲ってくるのではなく、相手に合わせて戦い方を変えてきます。ストロングウルフは手強いのでBランクでも難易度は高め、なかなか依頼を受けてくれる冒険者はいません。」


そうかストロングウルフは東の森でトップクラスに強いということか。

転移直後にそんな奴に出会うなんて、どんだけ運が悪いんだよ。


「よし。ストロングウルフの依頼を受けよう」

僕は2人を見回しながら言った。

2人とも真剣な顔で頷いた。


姫乃先輩の提案でストロングウルフの討伐は2日後に決めた。

僕はすぐに行くものと思っていたので、姫乃先輩に理由を尋ねると、姫乃先輩は説明してくれた。


「ストロングウルフの討伐は私達が転移してきた森だから、1日では帰ってくることはできないと思うの。それに夜になると視界も悪くなる為、夜森に入っていくのは危険だと思うし、ストロングウルフは強敵だからなるべく万全の状態で戦いたい。だから今回の討伐は3日かけて行うことにしましょう」


1日目は森の手前まで移動。

そこで野営をして、2日目の朝に森に入りストロングウルフを討伐して森を出る。

森を出たところで2日目の野営をして、3日目の朝から街に戻るために進むことにした。


この2日間は遠征の準備をした。

食料などの準備、最低でも7食分。

予備を含めて10食分を用意した。

水や野営の準備も必要だ。

僕たちは遠征は初めてなので、大きめのリュックなども持っていない。考えてみるといろいろ準備が必要だ。

「さすが姫乃先輩だな。僕だったらこんなこと思いつけないや」


2日後、僕たち3人は魔獣討伐に出発した。

討伐目標はストロングウルフ。

僕たちが転移直後に出会い、花巻先輩を犠牲にした上で、命からがら逃げることのできた魔獣だ。

僕たちはこの数ヶ月で戦う力を身につけた。

花巻先輩の仇を取るため、ストロングウルフを必ず倒す。

僕たちはそこからじゃないと前に進めない。


森までの道中は、魔獣などにも襲われることなく順調に進むことができた。

日が暮れたころにはストロングウルフが生息する森の手前に到着。夜の森は危険が大きいため、今日はここで野営をする。


野営の準備を終え、焚き火を囲みながら今は夕食を取っている。

パンと干し肉を持ってきたが、やはり携帯食はあまり美味しくないななどと思いながら食べた。

明日はストロングウルフとの決戦のため、みんな緊張しているのか言葉数は少なかった。


食事を終え明日に向けて体調を整えるため、姫乃先輩はすでに寝息を立てている。

交代で見張りをしており、今は僕が見張番だ。

姫乃先輩の寝顔を見ながら、僕は寝ている顔も綺麗だななどど考えていると、芽衣が来て僕の隣に座った。


「芽衣。眠らなくていいのか?」


「うん。なんだか寝付けなくて」


しばらく黙ったまま、2人並んで焚き火を見ていると芽衣が言った。

「ねぇ勇っち。この討伐が終わったらさ。施設から出て一緒に暮らさない?元の世界に戻る方法なんてあるのかわからないものを探すより、芽衣とのんびり暮らそうよ。」

芽衣が僕を見つめてきた。


「芽衣ね。勇っちの事が好きなんだ。元の世界にいる時から好きだった。」

芽衣はクラスでもトップクラスの人気を誇る女生徒だった。

よく告白されたという話を聞くが、特定の相手ができた話は聞いた事がない。


クラスでも目立たない僕に親しげに話しかけてきてくれていた。

僕はもちろん芽衣のことは嫌いではない。

むしろ好きな方だ。


でも僕は自分に自信がない人間だ。

芽衣の好意的な態度には気づいていたが、恋愛感情だとは考えたことも無かった。

それに異世界に来て数ヶ月たったとはいえ、まだ元の世界に戻る努力もしていないのに諦めるのには抵抗があった。

そして姫乃先輩のことも。。。


「芽衣もなんで勇っちを好きになったのかわかんないんだけどねー。顔も三枚目だし、勉強も運動も中の下くらいだしね(笑)」


「余計なお世話だよ!!でも芽衣。ありがとう」


「ただ今すぐには返答できないよ。少し考えてもいいかな」


「うん。いつでも待っているよ」


「そろそろ明日に備えて寝なよ。」


「そうだね!勇っちおやすみー。」


「おやすみ。」


芽衣は寝袋に入り、僕は引き続き焚き火の前に座り見張番を続けた。

勇は気づいていないが、途中から目を覚まし会話を聞いていた姫乃は複雑な顔をしていた。



翌朝僕たちは朝食をとり野営を片付けた後、森の中に向かった。

僕は昨夜のことがあり、芽衣にどんな顔をすればいいのかと考えていたが、朝一番に芽衣が元気な声で「おっはよー!」と言ってくれた。

僕にはとてもありがたかった。

本当に芽衣はいいやつだ。


僕たちは森に入った。

森の中は思っていたよりも薄暗い。

姫乃先輩が言ったとおり夜に来たら何も見えなかったであろう。

森の中は視界が狭いし、木の陰などに隠れられるとなかなか気づくことができない。

急に襲いかかられるとひとたまりもないので、僕たちは3人でそれぞれ前方と左右を警戒しながら進んでいる。


警戒しながら進むということはかなりの体力を消耗する。

僕は集中を切らさないように心がけるものの、ふと途切れる時がある。

その時だった。


背後から僕を目掛けて何かが飛んできた。

ビッグタランチュラの糸だ。

僕は咄嗟の事に反応できない。

避けれないと思ったところで、姫乃先輩が薄く平べったい糸を指先から発射した。


姫乃先輩の糸は僕とビッグタランチュラの糸との間に割り込み、ビッグタランチュラの糸から僕を守ってくれた。

「勇くん気をつけて!」

姫乃先輩から檄がとぶ。

「はい!ありがとうございます。」

僕は集中力を高めた。


ビッグタランチュラは全長2メートルはある蜘蛛の魔獣で、牙に麻痺させる毒を持つ。

また尻から粘着質の糸を放ち獲物を捉える。

基本的な蜘蛛の魔獣である。


ビッグタランチュラは再度粘着質の糸を僕に向けて放ってきた。

今度の攻撃には僕も反応することができ、糸を避けるために横に飛んだ。


「グレイシア!」

とビッグタランチュラが僕を攻撃している隙に、芽衣が氷魔法を発動。

タランチュラの足がみるみるうちに氷始める。


僕は体勢を立て直し、刀を振り上げながらビッグタランチュラに向かって跳躍した。

そして動けなくなったビッグタランチュラの頭と胴体の接続部に刀を振り下ろした。


スパーンとビッグタランチュラの頭と胴体が切り離された。

ビッグタランチュラは頭を切り離されてもなお動き続けていたが、僕が刀を頭に突き刺さすとビッグタランチュラは動かなくなった。


次に襲ってきたのはゴリラのような魔獣ドルゴリラだった。

ドルゴリラは僕たちを発見するとドラミングをして向かってきた。

姫乃先輩は冷静にドルゴリラの通り道に糸を張った。

草木が茂っている森の中では糸に気づくのは困難だ。

案の定糸に気づかないドルゴリラはつまづいて前のめりに倒れる。

その隙に芽衣が「アイスランス」を発動した。

複数の氷の槍がドルゴリラの体に突き刺さり、耐えきれず絶命した。


また、大きな蛇のような魔獣、グレートサーペントも襲ってきた。大きな口を開けて噛みつこうとしてきたところを僕は刀を縦にして防ぐ。


「はっ」

と掛け声をかけながら姫乃先輩が糸を放出しグレートサーペントの口を縛る。

糸で口が開かなくなったグレートサーペントはなんとか糸を引きちぎろうと口を動かすが、そう簡単に切れる糸ではない。


グレートサーペントは糸を引きちぎるのをあきらめ、僕に巻きつこうと飛びかかってきた。

僕はバックステップで距離を取り、攻撃をかわすと、地面を蹴り刀で斬りかかった。

グレートサーペントは僕の攻撃を交わしきれず、胴体にダメージを受ける。

怯んだ隙に芽衣がアイスランスでトドメをさした。


その後も何度か魔獣と遭遇したが、僕たちは連携して危なげなく魔獣を倒し奥に進んで行った。

すると高い木が生えていない広場のような場所に出た。

僕たちはここで一旦休憩を取る事にした。


「なかなかストロングウルフは見つかりませんね」

干し肉に齧り付きながら僕は言った。


「これだけの広い森だから、そう簡単には見つからないわね。もう少し探索して見つからないようであれば、一度来た道を戻って仕切り直しましょう。夜になってしまうと危険だわ」

姫乃先輩が言うと


「「そうですね。」」

僕も芽衣も同意した。


休憩を取り再度探索を開始する。

30分ほど歩いたが、この間魔獣は襲って来なかった。


「魔獣が減った気がしますね」

僕が言うと

「そうね。もしかしたらストロングウルフが近いのかもしれない。魔獣も自分より強い者には近寄りたくないだろうから。。。ここからは気を引き締めて行きましょう」

と姫乃先輩が返答をした。

その時、


「あそこに血がついてるよ」

と何かを発見した芽衣が言う。


確かにそこには大量の血液が植物に付着していた。

さらにそこから奥に何かを引きずったように草木が倒れていた。

ゴクリ。

僕たちは顔を見合わせて生唾を飲んだ。


「何者かが獲物をとらえて引きずったような跡だわ」

姫乃先輩が言った。

この場所で捕食者であることのできる強者。

ストロングウルフの可能性は高い。


「後を追ってみましょう」

と僕が言うと2人は頷いた。

僕たち3人はなるべく音を立てないように引きずった後をなぞっていく。


「シッ」

と小さな声で言いながら姫乃先輩が僕たちの前進を止めた。


「いたわ」

僕たちはついにストロングウルフを発見した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ