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ショートショートの小宇宙

より良い選択

作者: 駿平堂

 エフ博士はかねてから、自身の優柔不断な性格に悩んでいた。誰かと食事に行くと最後まで注文を決められないのは必ず自分だし、旅行の行先も自分では決められず、他人におすすめされたところにしか行ったことがなかった。

 

 そこでエフ博士は、その悩みを解決するための機械を開発することに決めた。目指すは複数の選択肢を比較してどの選択が最良であるかを教えてくれる機械であったが、ひとまずその過程として、二者択一の時にどちらがより優れているかを教えてくれる機械を開発することにした。


 そして試行錯誤の末に完成した試作品は、見た目は不格好な眼鏡にしか見えないが、エフ博士の英知が詰まった力作であった。


 その仕組みはこうである。エフ博士がどちらの選択肢がいいか声を出して聞くと、レンズで周囲の情報を認識し、インターネットと繋がったフレーム部分がそれを解析、そして耳にかける部分に取り付けたスピーカーでより優れた選択肢がどちらかを発信するのだ。

 

 例えば、グルメ情報サイトに載っているレストランのどちらがおすすめか聞く場合は、順番にそのページを見ながら、こんな風に質問することになる。


「今日のお昼は、こっちとこっち、どちらのレストランがよいかのう」


 すると機械から返事が返って来る。


「一つ目のレストランをおすすめします」


 そしてその案内に従うと、何らかのサービスが行われていたり、店員の見た目がエフ博士の好みであったりするのである。またネットショッピングで同じ商品をどのサイトから買うか悩んだ時なども、この機械に従えば外れたことがなかった。


 ささやかではあるが、この発明のおかげでエフ博士の日常は前と比べて確実に豊かになったと言えた。


 そんなある日、エフ博士は少し離れた場所にあるカフェに行くことにした。これも機械がおすすめしてくれたお店である。その日は特にすることもなく時間にも余裕があったので、歩いて目的地まで向かうことにした。天気も良く清々しい気持ちで歩みを進めていると、途中で道が二股に分かれていた。エフ博士は迷うことなく機械に聞いてみた。


「目の前の分かれ道の、どちらに進んだ方がいいかのう」


「右の道をおすすめします」


 どうやら右の道に進むと何か良いことが起こるようだ、とエフ博士はワクワクしながら歩いて行った。


 しかし右の道で待っていたサプライズは、博士の期待を裏切るものだった。二つ目の横断歩道を歩いている途中で、靴紐が切れて転んでしまったのである。幸いにも車は来ていなかったが、機械の指示に従ってこんなことが起こるのは初めてだった。故障を疑いながら身体を起こすと、今度はちょうどそこに鳩のフンが降ってきて顔面に命中してしまった。


 これにはエフ博士も堪忍袋の緒が切れた。フンで汚れた機械を力任せに地面に叩きつけて壊してしまった。


 そしてそれと同時にエフ博士の耳に聞こえてきたのは、ドーンという大きい音と人々の悲鳴。驚いたエフ博士は慌てて道を引き返し、交差点までたどり着いた。そこで左の道を見てみると、そこでは何台もの車と歩行者が絡んだ交通事故が起きていた。



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