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鉱物採集  作者: 蒼玉
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第2章 動き出す運命 2.綾那と大地

新しい家でも、やっぱり黒木 綾那(くろきあやな)は一緒らしい。

でも、今度はそれぞれの個室があるので少し安心した。


綾那は、長い黒髪が美しく、仕草に合わせサラサラと軽やかに揺れる。

意志の強そうな漆黒の瞳と、凜とした佇まいが、どこか和服姿を想像させる。


僕だって女の子が一緒にいたらドキドキする。

するに決まっている。


お風呂上がりで火照った頬に、シャンプーの匂いなんかさせてたら、平静でいられる自信がない――


だから、お願いだから綾那さん、そんな無防備にお風呂上がりに、近づかないで下さい!


ソワソワしている僕を不思議そうに見ながら問う。

「蒼太さん、今日は慣れたいことをしてお疲れではないですか? マッサージでもして差し上げましょうか?」


「だだだ、だい、大丈夫です! お、お風呂に入って一晩寝れば問題ないです。はい。大丈夫です。だから、お風呂に入ってきます」

僕は慌てて、風呂場に飛び込んだ。


「はー」

ため息が漏れた。


僕はこれから本当に大丈夫だろうか?




翌朝、食卓にトーストに目玉焼きにサラダにヨーグルトと、両親が亡くなって以来の朝食らしい朝食が並んでいた。


挨拶とお礼を告げ、全てを美味しく頂いた後、身支度を調え一緒に部屋を出た。



このビルは一見普通の雑居ビルだ。

一階には小さな花屋と書店。

二階以上は中小の企業がオフィスを構えている。

それが表向きだ。


けれど、本当はこのビルに入っている店舗も企業も全てCH管理局の偽装なのだ。

昨日投げ飛ばされた道場は地下にある。

CHの存在自体、公表されていないし、国家機関にこのような部署があることも公表はされていない。


「なんのために?」

僕にはまだ分からないことばかりだ。



「よう! おはよう!」

ビルの前には大地が待っていた。


僕の肩に腕を回し、耳元で聞いてくる

「で、同棲生活は順調か?」


「ど、同棲ってなんだよ! 黒木さんにも失礼だろ!」

慌てふためく僕を見て、大地は大笑いをしている。


一通り笑って、涙を拭いながら言う

「おい! 綾那! お前、からかいすぎだよ! ほどほどにしてやれよ」

と綾那に顔を向ける。


すると綾那は今までとは違い、悪戯っぽい笑みで

「だって、蒼太っち、かーわいいんだもんっ! ホーントからかいがいがあるんだからー!」


何コレ?!

これから僕、大丈夫なのかな?




黒木 綾那も一ノ瀬 大地も、CH管理局に所属している。

綾那はもちろんCHだから。

CHなのは四歳の時に分かったそうだ。


それからは、僕と同じように身を守る訓練や、CHについて学んだりしてきている。


大地はCHではないが、家系的にCHが多いそうだ、なので、必然的にCHに詳しくなり、CHの母を守りたいと志願して小学生のころから訓練を受けてきたらしい。


そして二人の話だと、僕のように男のCHも高校生になってから結晶化するのも珍しいそうだ。


それに普通は体内の結晶は、取り出すことはできないらしい。


唾液や体液に混じってごく微量の結晶体を確認することもあるが、それも目に見えるような大きさではないとのことだった。


僕のように小豆ほどの大きさの鉱物が出てくることは初めてだそうだ。


特別な方法で取り出すことはできるが、二人ともその方法は知らないと言う。


とにかくCH統括局でも、異例ずくめな僕に困惑しているらしい。


けれど、二人の話では確認されている過去の男性のCHは、日本で言えば、安倍晴明は月長石の、豊臣秀吉は虎目石だ。

もっと遡って卑弥呼の側近でただ一人、卑弥呼に会うことを許されていた男も、水晶のCHだったらしい。


ちなみにその卑弥呼も翡翠のCHで、彼女は長生きしすぎたせいで、鉱物の体への作用が大きくなりすぎ、人前に出られなくなり、同じCHだったその側近が身の回りの世話をしていたそうだ。


なぜ僕が――。

僕には何の力もないのに――


そんな歴史に名を残すような人物ばかりあげられても、僕はそんな器じゃない――

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