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怪しい者

 ルーシアが無事(?)に控室まで辿り着けたため、僕は彼女と別れて観客席に向かっていた。

 その道中、僕は見知らぬ人に声をかけられた。


「ちょっとそこのあんた。そう。あんたよ。あんた!」


 振り向くと、同い年と思われる白髪の綺麗な女の子が立っていた。

 白髪は背中まで伸びており、瞳の色は深い青色であった。

 あまりにも深い青色だからか光が差していなかった。

 女の子はローブを羽織っていて体格は分からず、背中から剣の柄だけが出ていた。


「えっと、僕になにか?」

「用があるから呼び止めたんじゃない。バカなの?」

「……」


 初対面の女の子に罵倒された。

 なんだろうこの子。なんとなくルーシアに似ている気がする。

 女の子は、「ふんっ」と鼻を鳴らす。


「あんた、選手控室がどこにあるか知っている? 知っているのなら教えなさい」

「選手控室なら――」


 僕はさっさとこの高圧的な女の子から解放されたくてなにも考えず控室の場所を教えた。

 すると、女の子は再び鼻を鳴らす。


「ふんっ、そう。分かったわ」


 それだけ言って女の子は踵を返した。

 まさかお礼も言わないとは、なるほど僕の勘は当たっていたみたいだ。

 ルーシアもお礼言えないし。彼女はルーシアと同じ類の人っぽい。

 僕は今度こそ観客席に行くため足を進めようと――。


『これこれシロ。感謝くらいはせぬか』


 そんな声が直接聞こえ、僕は驚いて女の子の方を振り向いたが視界には女の子しかいない。

 たしかに、女の子とは別の声が聞こえた気がしたんだけど……。

 ふと、女の子の背中を見ていると彼女は唐突に振り返って僕を見て口を開いた。


「ねえ、あんた! 道を教えてくれたことに感謝してあげるわ! 感謝しなさい!」

「……」


 感謝の上塗り。なんて上から目線なのだろうか。


『うむ。それでよい。勇者たるもの常に感謝の気持ちを忘れずに……だぞ!』

「うるさい剣ねぇ」


 ブツブツ。

 女の子が独り言をしている光景に見えるが明らかに誰かと喋っている。

 うるさい剣――ということは、もしかして相手は背中に背負っているあの剣なのか。


『さあ、それでは行こう。まだスクロールの準備ができておらぬしな』

「そうね」


 女の子は頷き僕の方に再び目を向ける。


「そういえば、あんたには借りができたから忠告しておいてあげる。生きていたいなら闘技大会が終わるまでに闘技場から出なさい。じゃあね」


 と、女の子はそれだけ言ってどこかに消えてしまった。

 残された僕は頭をポリポリと掻いた。


「……なんだったんだ」


 よく分からなかったが、恐らく喋っていたのはあの剣で間違いないだろう。

 喋る剣なんて珍しいなぁ、なんて思っているとまたまた声をかけられた。


「む……お前は……クロ・セバスチャン!」


 名前を呼ばれて振り向くと今度はディオネスが立っていた。


「あ、ディオネスだ」

「……前々から疑問だった。なぜ私だけタメ口?」


「僕は友好的な相手とそうじゃない相手で態度が変わるんだ。ちなみにお前は後者だ」

「うぐっ……」


 ディオネスは声を詰まらせるが、すぐに咳払いして気を取り直す。


「そんなことより、なぜこんなところに?」

「そりゃあ、闘技大会を見に来たんだよ」

「……お嬢様もいるということ?」


「ノーコメントで」

「それはもうほとんど答えているのとこと同じこと……はあ……」


 ディオネスは額に手を当てて首を横に振った。


「でも、ちょうどいいタイミング。お前を頼るなんて屈辱だけれど、今はそんなことを言っている暇がない」

「ん? ディオネスが僕に頼み事なんて珍しい。なんだ? 用件によっては頼まれてやらんこともないぞ?」


「その上から目線死ね」

「辛辣」


 閑話休題。


「遊んでいる暇はない。実は、今この場所にテロリストが紛れ込んでいる」

「テロリスト?」

「そう。とりあえず、これを見て」


 ディオネスは懐から紙切れを僕に手渡す。見ると、そこにはこんなことが書かれていた。


『我々の要求を呑まなければ闘技大会の観客を皆殺しにする』

面白かったらブックマークとポイント評価をしていただけると、やる気が……出ます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 民族融和政策を進める魔王政権下での勇者(魔王殺すべしマン)って確かにテロリスト(下手すれば人間社会から見ても)だよなぁ。 勇者=冷戦状態で上層部が「これを終戦宣言に。可能なら友好条約を………
[一言] 魔王様にもタメ口だったような・・・w
[良い点] こいつですねw
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