安否確認
朝、一応安否確認のメッセージを和幸に送る。
「生きてる?」
「関節の痛みで一睡もできなかったが生きてはいる」
と即レス。
「上等じゃない」
「今日医者に行く」
「特効薬が使えるうちにサッサと行け」
さて本日も平和なスタートだ。
相変わらず、他部署からの相談案件が多い。ここは企画部門じゃないのか?契約よろず相談所じゃないぞ。次から次に小鬼が押し寄せてくる。
「佐々木課長〜、随意契約の様式はこれで良いんですか?」
お前の上長に聞け。
「佐々木課長に聞いて来いって言われました」
やれやれ。
「1000万円越えちゃうんですけど」
知るか、面倒だから二つに分けろ。常識だろ。
「佐々木課長、承認お願いいたします」
それ紙とハンコじゃなくて、電子承認だろ。だいたいその様式、昭和かよ?どこから発掘してきた?
午前中は小鬼殺しだけに時間を喰われ、監査対応の準備ができなかった。勘弁してくれ。このままだと残業100時間越えだぞ。しかも管理職だから残業手当なんぞ付かない。当然マックの時給以下、私に死ねということだな。
午後は3つの打ち合わせが続く。1つは雪乃の主催だからスムーズに行く。納期設定から責任の所在まで明確そのもの。ところが残りの2つは、議題も落とし所も曖昧という掛け声だけのキックオフと、報告会とは名ばかりの雑談。時間の無駄、私の人生を返して、ねえ、私の3時間を返してよ。
帰路に着いたのは、定時後に自分の仕事を済ませた21時過ぎだった。
「立ち上げの時は、みんな会社に泊まって頑張ったんだ。血尿が出たよ」
「俺は若い頃連続で三ヶ月くらい、残業月に200時間でも耐えられたけどな。あの時は忙しかったけど、楽しかった」
ええと、ワークライフバランスって言葉知ってます?労働基準監督署にチクリますよ、ホント。
へろへろながら、和幸の部屋に寄ることにした。孤独死されたら寝覚めが悪いからね。
勝手に錠を開けて部屋に入る。
ああ、まだ寝込んだままなのね、死んではいない。私は声を掛ける。
「へー、生きてるじゃない」
「ありがとう。少し抗ウィルス剤が効いて楽になった。熱も下がったよ」
「じゃあ、私は用済みね。帰るわ、心配して損した」
「お茶くらい入れるよ」
「排菌が収まっていない人に注がせたら伝染るわ。私が自分でやるからあんたは寝てなさい」
「髪、切ったんだ。やっぱりショートは雪乃にすごく合うね」
「男と別れたから。気分転換よ」
「許してくれよ、僕が悪かった」
「なにが悪かったの? 言ってみなさいよ」
「ごめん」
「ごめんじゃわからない」
「本当にごめん」
「帰るわ、ご馳走様。あと二日は寝てなさいよ」
洗濯やらなにやらかにやらやっていたら、やっぱり終電になった。まったくもう。




