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師走の職場にて

  12月に入るとせわしなく感じるのは、行事が多いせいだろう。忘年会やら、クリスマスやら、大掃除やら。実家の手伝いにも行かなくてはいけない。八王子の実家には両親だけが暮らす。弟は海外赴任しているし、元より役に立たない。なにかあったら全部私が面倒見るのかよ、とも思うがまだ二人とも健康なのが救いだ。どちらかが倒れたら老老介護になってしまい、たちまち生活が崩壊するであろう危うい均衡。将来どうなってしまうのかな。


「佐々木課長、監査資料まとまってる?」


 小枝部長が側に寄って来て言う。雪乃は、聞こえないように小さな舌打ちをする。できているに決まってるでしょ、っていうか金曜日にメールで送っておいたでしょ。


「金曜日に部長へメールで送付しましたが」

 一応言葉だけは丁寧に雪乃は答える。睨みつけてやったが。


 ああ、そう、ごめんごめん。小枝部長は慌てて自分の机に戻り画面に向かう。


 ホントくそだな、雪乃は思う。と同時に、ピーターの法則を思い出す。


(1) 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能なひら構成員は、無能な中間管理職になる。

(2) 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。

(3) その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。


(Wikipediaから引用)


 ま、私も法則通り無能なんだろう、と雪乃は自嘲気味に思った。


 雪乃はサッサと定時上がりをした。ショートに合う服なんか全部捨てちゃうか、他人にあげちゃったからなぁ。最低限、なんとか見られる服を揃えないと。


 街は早くもクリスマス一色である。おお、商魂逞しいことよ。


 雪乃は、まず百貨店で、最近寄っていなかったブランドのコーナーに行く。少し若向きすぎるかな。でもショートで似合わないと、たちまちババ臭くなるしなぁ。色々試着をして疲れて、結局、昔好きだった服のシルエットに近いスーツを仕事用に買う。なんか進歩ないな、私。

 次は、ファストファッションの大規模店へ行く。可愛い服がいっぱいだが、これはなあ、私が着ると完璧無理して見えるだろうな。まあ、いいか。他人の目を気にするより、自分が好きなものを着たほうが良いわよね。


 メッセージの着信、和幸からだ。当然スルー。簡単によりなんか戻さないからね、私は。

未練がましい奴は大嫌い。ああ、ムシャクシャするわね。向こうが悪いんじゃない、土下座したって許さないんだからね。

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