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やけになって。

作者: kirin.conlo

そうだ、今日こそはあの子と話がしたい。

今思い出したように、ずっと心の中に止まってるものを吐き出す。

勇気出さなくちゃ。

呟いて、それでもあの子に向かっていくことができなかった。

机から立ちあがれない。

何やってんだろう、僕。

後もう少しでみんなとお別れ。

あの子を見ることもできなくなる。

まだ、仲良くなれないのになぁ。




空っぽの毎日になるはずだったのに、そこにあの子がいるだけで少し満たされる。

つまんないなぁって思う日々が、それでもましだって、たまに気が向いたらそんな日々が好きだって言えるのは、あの子のおかげ。

嫌いなものがお弁当に混じってても残さないのは、あの子に好き嫌いする悪い子なんだって思われたくないから。

こっちなんて見てないと思うけど、ほら、友人とかでその話回ったりしても嫌だしさ。


ここまで来るともう、姿を見るのも胸が膨れてもやもやとしたもので埋め尽くされて苦しくなって、変に思われるの嫌だから極力そっちを見ないようにしたりして。

でもその微かな笑い声が聞こえると振り向いちゃうんだ。

少し微笑んでるそのはにかみ具合が、とても可愛く見えた。

ああ、だめだ、惚れちゃってる。手遅れだよ。


今の僕とあの子の関係は、仲良くも悪くもない、クラスメイトの一人。嫌に思われてないけど、好まれてもない。一番当てはまるのは無関心かな。

嫌われるのは嫌だから、一歩踏み出せなくて。

ガラスのハートっていうか、それは怯えてるだけだよ。

毎日はそんなに重くは考えないけど、

ふと、その背中を見たとき。声を聞いたときに、すっと心の奥にその存在が潜りこんでくる。

全てを肯定したくなるんだ。


友人に頼ってみた。

僕の恋について相談して、どうすればいいかなって。

全然進展なかった。あーあっていう気持ち。

僕の中の気持ちをまとめて、あと、とんでもなく会いたくなったくらい。会わなくても、声だけでも聴きたくなって。

結局、僕が勇気を出すしかないんだ。

誰かに頼ったって、仕方なくて。

それでも、仲介役ぐらいはして欲しいから。

だから、今度の放課後、時間をとってもらうように頼んだ。

二人っきりで話すのは心臓がばくばくしてしまう。

僕に勇気が出せるのか不安になって、月曜日、休んでしまいたくなった。



手に付かない。

課題とか、授業とか。お弁当も、友達とのお話も。

全部右から左に抜けて、全然できないや。

落ち着きを欠いて、転んだり、消しゴム落としたり...散々だ。

まだ時間はあるのにお腹痛くてやばい。

今日はいつも以上にあの子のこと見れない。

顔真っ赤になってたりしないかな。泣きそうだ。

もういっそ楽になりたいぐらい心臓が破裂しそうだから、机に顔を伏せて授業をサボる。

いつもはやらないけど...

あの子は前の席だから、せめて先生にしかられないように願って。


掃除も上手にできてなかったみたいだ。

なんか、友達にも先生にも心配されてしまった。

先生なんか滅多に言わない、悩み事聞くぞなんて言ってた。

ああ、現実逃避しちゃダメなのわかってるけど、なんも考えたくない。あと、五分。

先生の顔がぼやけて見える。あと、三分。

こんな時だけ時間過ぎるのが早いのはおかしいって、いつもは長く感じるのにって、あと、一分。



放課後のクラスで僕がやけっぱちになって言う。

「あの!....話したいことがあるので、少しついてきてくれませんか」

あの子はちょっとびっくりした様子だった。

時間も置かずに首を縦に振ると、友達に手を振って、荷物を持ってついてきてくれた。

僕はなんか変なこと言ったのかなって焦りつつも校舎の人気のない方、図書室へ向かう道へ向かう。

振り返れないまま、歩く。

無言の時間で、ここら辺はもう誰も通らないからって、立ち止まる。

ゆっくり振り向いて、彼女の顔を見ていると紅潮しそうになる顔をなんとかあげて、彼女の目をまっすぐ見つめる。

彼女もまっすぐ僕のことを見つめる。

にらめっこみたいにその場に固まったまま。

僕の喉から唾を飲み込む音が鳴る。かっこわるい。



「僕、あなたのことが好きです。

僕と、仲良くしてくれませんか。」


告白の仕方としてはなんか変かもしれないし、仲良くなってないのに付き合う筈ないでしょ!みたいな返答もされるの嫌で必死に考えた言葉だけど、どうだろ。

いえたことによるすっきりした感じは少し感じて、それよりも返事が怖くて目をつむりそうになる。


あの子は僕の言葉を自分の中で反芻して、ゆっくりひと呼吸おいてから僕の言葉に返す。



「うん、いいよ。

付き合うとかだとまだわからないけど...

まっすぐにぶつかってきた君と話してみたい。

よろしくおねがいします。」


最初の一言で安心して、でもまだ続いてる言葉に悲しい言葉が混じってるかもしれないって警戒して、そんなのなかったことに嬉しくて。

ちょっと涙目になってるかもしれない僕は、ありがとうと言って無意識に強く握っていた手を開く。

三年の最後の今、やっと、スタートラインに立てたんだ。


「はい、これから、よろしくおねがいします。」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 不安で止まらない心の声。あると思います。それでと行動できたのはえらい、主人公。 [気になる点] 主人公の内面ばかりで、回想じみていて、臨場感やドキドキがない。失敗する流れかと思ったがそうで…
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