王国街
朝起きると俺はハエが集る肉塊を抱き
血まみれで眠っていたようだ、
肉が嫌な腐敗臭を放つ
肉塊を外に放り捨て自分の昨日の事を思い出す
腹の減りが限界を超えてからの事は
一切思い出せない、
少なくとも俺は何かを殺し、その肉を喰らったのだろう、
あの肉塊には食われたような痕があるからな、
一様なにか状態異常とかが発生していないかと
ステータス画面を開く
名前 なし
種族 人族
Lv1
HP 10/7
MP 5/5
力 6
魔 2
俊敏 6
柔軟 7
運 0 固定
スキル
自ステータス観覧
野生Lv1
称号
異世界転移者
何やら新しいスキルが生えている、
どんな効果があるかは詳しくはわからないが
力が2程増えている
恐らくステータスの補助系スキルなのだろう、
とりあえず、隙間から出るか。
俺は隙間から這い出る
すぐ近くには狼の死体がある
体毛が薄く緑色なので恐らく
草原狼だと思う
狼族の中でも比較的数が多く
下級の魔物らしい。
まず俺が真っ向勝負で勝てる相手では無い、
だが毛皮はそこそこな値で売れられるそうなので
一様剥ぎ取って
マジックポーチに仕舞っておく
そして再び街道に戻り、歩く
そうして歩いているとまだ遠いが薄らに
大きな壁のような物が見える、
どうやら王国の近辺に到着したようだ
周囲には王国街と呼ばれる場所があり
ある程度の服や装備の整えられる武具屋や
雑貨屋も建ち並んでいる
いわゆる冒険者の小休止場所だ。
さすがに血まみれの麻の服で入るのは怪しい、
少し近くの小川で服を洗う、
服が濡れ肌に貼り付き、なんだか気持ちがよいもののでは無いが
これで王国街に入れるはずだ。
王国街の門に着くと槍を持った兵士に止められる
「貴様は何者だ?」
全頭兜で表情はわからないが俺への不信感がよく分かる。
「あー…旅をしている者だが…」
つい、しょうも無い嘘をついてしまった。
「ほう、旅人にしては偉く軽装だな?」
目線はわからないのに睨まれるような強い視線を感じる、
「すいません、単なる放浪者です、ここに冒険者にでもなろうかと思い、ここに来ました」
先ほどの事を謝り、俺の目的を伝える
「分かったギルドカードを持たないのなら
通行料として銅貨3枚を貰う。」
銅貨はこの世界での通貨で
銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚、
そして金貨百枚で白金貨一枚、
と言う流通となっている。
俺はマジックポーチを漁り
金貨を一枚兵士に渡す
「すまないが、小さいのがなくて……」
「わかった、少し待っていろ」
そう兵士は言うと奥のドアへと入り、とこかに行った。
しばらく待っていると奥から袋を持って兵士が
帰ってきた、
「小銭入れとして袋もやろう、袋の分と通貨費で
銅貨五枚だ」
紐を通され楽に開け閉めできるのは便利だが
やはり金属貨幣なだけあってズシリと重い
袋を開け、その中から銅貨を五枚取り出す、
さすがに銀貨99枚と銅貨95枚を分ける事は難しい…
そうして無事に門を通り街に出ると
とてつもない活気だった、
そこらじゅうに人が居て、こんな昼間から酒を飲んでいる奴もいる
中には結構冒険者らしき人物も居て
腰に剣を付けていた
美味しそうな匂いがそこらからし、
どうしようもなく涎が溢れる、
まだこの世界に降り立ち、生の血肉しか食って
いないのだ、人の作った暖かい料理が食いたい
そう思い、近くにある串焼きの屋台に向かう
ジュウジュウと肉が焼け滴る脂が火に落ち
美味そうな香りが広がる
「串焼き屋のおっちゃん!串焼き一つ!」
「あいよっ!」
複数ある串焼きの中から
最も絶妙な焼け具合の肉を選び、火から上げ
黒光りするタレをさっと掛け俺に手渡しする、
「お代は銅貨3枚だよっ!」
俺は小銭袋から銅貨を3枚取り出しおっちゃんに渡す
「まいどっ!またこいよ!」
そう威勢よく俺に言ってくれた、
久しぶりに人と触れて嬉しい
そして俺は串焼きに齧り付く
さっぱりとしたタレと濃厚な、肉の脂が
口の中で混ざり合い非常に美味しい。
噛めば噛むほど肉の旨みが広がる
気付くともう一本を食べきってしまった
もう一本ほど食べたい物だが…
他にも鎧や武器が欲しいので節約をしておく
さてとでももう少しほど王国街グルメを
楽しんでみても良いだろう