獣
結構体感的には歩いた気がするが
まだまだ王国は見えない、
幸い細身のナイフがマジックポーチに入っていた
ので武器は大丈夫だ…
道中の水辺に大きなトカゲ?が居た、
あれが魔物なのだろう、
もしも襲われたと考えたら…、
とにかく歩く…………………………………
何もない、ただただ広い草原だ、
時折川を見かける、
だんだん日が落ち、獣の遠吠えが聞こえ出す
そろそろ、どこか安全な場所へ行かないと…
今は整備されたあぜ道を通っているが
少し離れた場所には岩と岩で出来た空洞がある
入れるか確かめると人一人程度なら入れそう
なぐらい隙間があった、
とりあえず入ってみる。
ゴツゴツとした岩が背に当たり少し痛い、
だが恐らくこれで魔物に襲われる心配は無いだろう、
安心し、俺はまだしていなかった
ステータスの確認をしてみる
ステータス と頭の中で考えると
薄い青色のパネル?のような物が現れ
白い文字で俺の状態や力を表示している
名前 なし
種族 人族
HP10/10
MP5/5
力 4
魔 2
俊敏 6
柔軟 7
運 0 固定
スキル
自ステータス観覧
称号
転移者
………俺は自分のステータスの低さに絶望した
恐らくこのままではこの本に載っていた
最弱の魔物である大鼠も倒せ無いだろう。
とにかく…努力が必要だ、
現代社会ではそんなに走る必要は無いし
戦うこともまず無い
俺は才能があるわけでもないし剣道の心得があるわけでも無い、
強くなる為には、凡人は努力するしかない。
俺はもっと自分を鍛える必要があると
再認識した
甲高い咆哮がすぐ近くから聞こえる、
狼だ、恐らく何か獲物を捕らえたのだろう
ズルズルと何かが草の上を引きずられる音がする
荒い息とブチブチと何かが千切れ
それを咀嚼する音が聞こえる、
嫌な血の香り、狼は数頭居るようだ
俺は寝ようとするが咀嚼音でなかなか寝られない、
だんだん頭痛がしてくる
ストレスがピークを迎える
吐き気がし恐怖で体が震える
実質自分の身に死が迫った事は無い
俺の居る隙間に肉片が落ちて来た、
すぐ隙間の近くで食べているのだろう
そういえば今日は何も食べていない。
そう考えると今、俺が持っている生の血肉が
ご馳走に見えてくる、
だがそれを食べるのは俺の中の理性が止める
そして数時間後が経つ、外はまだ暗い。
空腹もピークを迎える。
この極限状態で俺の中で何かが壊れる。
俺は手に持った血肉を本能のまま貪り喰らう
多少噛み千切りにくいが気にしない
気づくと俺は隙間から顔を出していた
まだ、足りない 俺は狼の食った肉の破片を
食いに来たのだ、すると運良く狼は寝ていた。
それも1頭で、
周りに他の獣の気配はしない、
俺の狙いは狼に移る
狼の頭の正面に立ち、細身のナイフを突き立てる
そして振り下ろす、恐らくもう意識は無いが
執拗に頭を突く
そうして太った腹を斬り裂き、雑に肉を切り離す
そして数個の肉塊を作ると
俺は隙間に戻る。
そしてまだその肉塊を貪る
うまい 何故かそう感じる。
俺の意識はだんだん獣に近くなる
だがだんだん眠くなり、
俺は隙間で眠りに着いた。