敗者復活戦を勝ち上がりたい。
鮮烈な勝利の翌日、すぐに敗者復活戦2回戦がやってきた。この試合に勝てば県大会本選に出場することができる。相手も初戦敗退で敗者復活戦初戦打撃戦を制している。
今日は助っ人全員が参加出来る。昨日投げた俺と手稲はベンチスタート。副主将はマスクを被る。ピッチャーは主将。大岩はファースト固定。
手稲が抜けた分守備が脆くなっているが、昨日の試合の大量失点を受けてミーティングで問題点を洗いざらい出して臨んだ今日の練習を見ている限り格段と良くなっているように感じる。
ミーティングで決めたのは「自分の取れそうなボールしか捕らない」「フライは基本的に捕りに行かない。捕りに行くとしても捕り方にこだわらない。」「内野安打は出ていいから出来るだけ内野に打たせる。」という3点が中心だ。それに付随して低めに投げる、相手によっては外野一人にして守備を固めるといった内容も盛り込んだ。
試合は先攻の俺のチームが初回に上位打線で固め打ちをし、下位打線は相手の制球と守備の乱れに助けてもらった形で打者二巡の猛攻で14得点。その後も得点を積み重ねた。
守備はこれまでとは打って変わって落球や暴投が比較的少なくなった。その分ヒット数は多くなったが内野ゴロでホースアウトを取ることが多かった。
主将は3回を投げて無失点。ここで主将がサードに回りピッチャー手稲。コントロールはよく申し訳程度に変化球を投げれる。登板直後こそ少し打ち込まれかけた。しかし、その後相手打線を申し訳程度の変化球に上手く嵌らせて2回4失点で抑え19-4で勝利した。
敗者復活戦を勝ち抜いた翌日から県大会本選はスタートした。
敗者復活戦上がりのチームは基本的に1回戦スタートだ。主将も3連戦は初めてらしい。
試合会場までバスで5時間。同じ都道府県とは思えない。
初戦の相手はブロック初戦でコールド負けを喫し、敗者復活戦を不戦勝と僅差勝利と雨天コールドで勝ち進み県大会本選をもぎ取ったチームだ。
今日は手稲がショートに戻り、持ち前の動体視力を活かして守備が顕著にうまくなった俺と同じ1年初心者山本健太がセカンドへ。守備の厚さがこの3日で段違いに増した。今日のベンチは俺と助っ人3年3人だ。
チーム結成後3戦を戦い動きが良くなった俺たち13人は今日も全員参加だ。
しかし相手も敗者復活戦を勝ち上がってきているチーム。
弱小校にしてはレベルのたかい上位打線で1点をもぎ取るも守備の乱れもあまり出ない。相手チームは空振りはあまりなくボールをバットに当ててくる。まだ不安定な守備で乱れもあるが着実にアウトを重ねていった。これまでの試合とは違い緊張感ある試合だ。5回を1-3で終えた。
試合が動いたのは7回。連戦で疲れを見せてきた両チームの守備陣を打撃がとらえ始めた。俺のチームは数点取られたところでピッチャーを主将から陸上部砲丸投げの助っ人にチェンジ。
陸上部の大会ではなんと陸上部で唯一支部総体を突破したらしい。1週間前からさらに速さは増しており、スコアボードには130㎞を超える表示もあった。
7回裏の攻撃は相手ピッチャーがランナーコーチをしていた俺の素人目線から見ても異常に疲れていた。制球が乱れ球威が急に無くなったように感じた。この回は1番からで固め打ち。5番のところで俺が代打に送られた。昨日の試合後の練習でバッティングマシン相手に打てたレフト前ヒットをイメージして振り抜いたところ三塁線のツーベースになった。その後も着実に点を積み重ねていき、相手はピッチャーを変えたが、審判がゲームセットを宣言するまで俺のチームの攻撃は続いた。この回一挙16点を挙げ17-10のコールド勝ちを収めた。
次の試合は県下中堅校だ。ベスト32とベスト16あたりを数年行き来している。
俺のチームにはやはりレベルが高すぎた。
中2日を挟んで試合に臨んだが中途半端に疲れが出てしまい攻守ともに乱れた。
先発の主将の制球が定まらずに1回で20点以上取られる。脳裏に浮かぶチーム結成初戦の総合技術戦。裏の攻撃も上位打線が0点に抑えられてしまった。その後ピッチャーを陸上部砲丸投げの助っ人に変えた後、速球への切り替えが遅く2回は無失点に抑えたが3回につかまった。途中で手稲に変えて打たせて取るスタイルに変えたが速い打球を前に失点を重ねた。
俺は今日もベンチスタートだ。理由として体力面と疲れていても声が通るという理由でランナーコーチと伝令役を任せられたためだ。ランナーは4回裏の攻撃を終えても出なかった。
失点もどんどん積み重ねていくが総合技術戦で多く見られたエラーが1桁に収まった。
その裏の攻撃は先頭の大岩がなんとスタンドへボールを運んだ。5番に俺が代打に送られ力任せにスイングしたがこれは三振。うまいこと行くわけがない。しかし大岩と俺のスイングで委縮したピッチャーは制球が乱れてさらに3点を追加することができたが焼け石に水。4-51で春の県大会本選を去った。ベスト32になれたことはいいことだと思いたい。
その後、練習試合こそ組むことはなかったが、貴重な5試合の実戦経験を糧に練習を積み重ねていき、6月へ入った。