敗者復活戦を戦いたい。
記録的大敗の後帰りのバスは非常に暗い雰囲気だったがマネージャーが機転を利かせて俺と久米のやり取りを聞いてくれたおかげで場が和んだ。
しかし、翌日学校に行くとその和んだ気持ちが一気に下がる出来事が起きてしまった。
マスコミが学校の中に侵入していたのだ。こんなド田舎の学校までわざわざご苦労様です。
しかし不法侵入はド田舎といえど日本である限り犯罪。俺が取材陣と追いかけっこをしている間に地域の人たちが追い払ってくれた。逮捕者が出なくてよかった。
俺のチームはAブロックだ。昨夏県大会ベスト4の総合技術が頭十個以上抜けている。
Aブロックは5チームで争われ、俺のチームは2回戦スタートだった。つまり総合技術は県大会本選に出場が確定した。
地区で17チームが参加しうち8チームが県大会本選を確実にして行われた敗者復活組み合わせ抽選会。各チームの主将が引くのではなく地区の高野連が引いた。幸い強いチームがいるブロックではなく弱いチームが固まった方のブロックに入った。
次の試合、敗者復活戦を3日後に控えたが、試合に出れるかどうかが怪しい。
難関大学を目指している主将がその日に模試を受けに行くために欠場。
練習中に大岩が捻挫をしてしまいちょうど巡回に来ていた医者に数週間は本気で走ったり投げ込みをしてしまうと野球人生に危機が出てしまうかもしれない旨を伝えられた。
前の試合センターで出場したサッカー部の助っ人と陸上部の助っ人(2人)がそれぞれ自分の部活の総体があるため試合に出れない。
助っ人7人中4人は敗者復活戦も出れる予定なので頭数は揃うが、主将と有力助っ人が不在。さらに、前の試合で大車輪の活躍だった大岩がファースト固定なので投手がいなくてセンターラインすら固めれない状況。
しかし、数日にわたるミーティングの結果次の試合の相手はうちの高校ほどではないがなかなかの田舎にあり部員数も少なく本戦で初戦大敗を喫しているので経験がつめると判断し敗者復活戦初戦に臨むことになった。
敗者復活戦初戦はマイクロバスで1時間弱のところにある高校のグラウンド。俺が通っている伊那大鹿から一番近い高校だ。都会の学校よりは寂れているが敷地が広く前回の試合の会場よりちょっと狭いくらいのグラウンドが取れる。スコアボードと放送設備も完備だ。
グラウンドがある高校は運動部というよりは文化部系統に力を入れておりアナウンスやスコアボードも公式戦ということもありフル稼働だ。
前の試合でまぐれの4打点を叩き出した俺は1番副主将2番1年の野球経験者のつぎの3番でピッチャーをすることになった。
最初提案があったときは猛反対したが、推薦してきた主将や大岩をはじめ数人によると「一応ホームベースまでボールは届く」「コントロールは大岩を除く出場メンバーの中で一番いい。」「肩が弱すぎてボールを遠くまで打てなさそう」といった意見が出たため実際投げてみたところ3つすべて当てはまっていたため俺もしぶしぶ了承。三つ目の意見を言った同じ初心者のやつは許せない。
前回の大敗の影響も受けたのか、はたまた試合会場が高校から比較的に近いからなのか、クラスメート数人が応援に駆けつけてくれた。そして報道陣が数人いた。わざわざご苦労様です。
整列をして礼。
試合が始まった。
「伊那大鹿高校、ピッチャーは橋口、失礼しました橋栗くん。」
主将に教えてもらったボークという反則にならないように意識しつつ第一球目を投げた。
初球はストライク。2球目もストライク。3球目もストライク。あれ?三振?というより副主将がボールをぽろぽろしているのが気になる。
その後制球に苦しむもフォアボールを出すこともなくなんと3者連続三振で1回表を抑える。
1番2番とヒットで出てチャンスで俺に回ってきた。しかし、前の試合のミラクルとはどこへやらスローボール相手になると目をつむっていたら打てないのでボールを見ながら打ったら当たったもののピッチャーライナー。センター前に抜けると判断したランナーが刺されてゲッツー。4番の助っ人コンピュータ部も倒れて3アウト。
2回表も三者三振。キャッチャーの副主将が相変わらずぽろぽろボールをこぼしてしまう。捕球に関してはチーム一なのにどうしてなのか。
2回裏になってやっと二人ともベンチにいる状況ができたので聞くと、「ここにボールが来るって思ったら変な軌道を描く。」とよくわからないことを言われた。ようするに変な変化をするボールを投げているってことかな?三振は取れているしいいか。
3回表は2者連続三振でなんと8者連続三振。内容こそ自画自賛できるものであるが山なりのボールということもあって報道陣のみなさんが浮き立つ様子もない。
しかし9番バッター。ひょろひょろで素振りを見る限りバットに持っていかれているが初球を当てられて当たった打球をサードの助っ人卓球部がお手玉をしている間にバッターが1塁到達。
そのあとは三振に取ったものの出鱈目なボールに出鱈目なスイングで当たられると怖いことを知った。
3回裏、副主将から次の回から捕手を初心者一年生にすると告げられた。理由はチーム一の動体視力の持ち主であるからだそうだ。軽くキャッチボールもしたがポロポロ落とすこともなかった。副主将が内野に回ることで守備に厚みが出来て安心さが少しでも増す。
「伊那大鹿高校、守備位置の交代をお知らせします。キャッチャーの井上くんがショート、ショートの手稲くんがセカンド、セカンドの梅田くんがセンター、センターの山本修二くんがサード、サードの山本孝之くんがレフト、レフトの山本健太くんがキャッチャー。以上に変わります。」
今試合の要の副主将が守備に守ることで大幅な守備位置の変更が出た。
4回表、相手がタイミングだけを合わせてフルスイングをしてきた。幸い2者連続三振に取れたものの3人目には当てられセンターオーバーのスリーベース。その後レフトフライを落球から始まっていくつかのエラーが絡み5失点でこの回の守備を終える。
4回裏、先頭は俺だ。先ほどの打席に比べて投手の制球が乱れているようでフォアボールを選べた。
その後2者連続フォアボールで6番の大岩へ。甘く入った球を強くたたいた。そのボールはライト前に転がったがライトがトンネル。負傷中の大岩はほぼ歩きながら1塁到達。3点を返した。
またフォアボールが出て次のバッターはサードホースアウトでこの回初めてのアウトを取られた。
フォアボールで満塁になり1番へ戻る。この回の最初よりも一段と疲れを見せている相手ピッチャーに1番が左中間へスリーベース3点タイムリー、2番が右中間への2点ランニングホームランで5得点。逆転に成功する。そして打者一巡し俺へ回ってきた。追い込まれての3球目、タイミングを合わせて軽くスイングしただけの当たりだったがサードが落球しそのあと悪送球が二つ重なり一気に生還。
その後も四球の嵐に打線爆発が加わりこの回17得点で終える。
5回表、体力面と相手が攻略の糸口を掴めてきたところから俺はライトの守備へ。マウンドには副主将が上がった。しかし相手もこの回で終わらせまいと必死の攻撃で8失点。
その後はノーガードの殴り合い。相手も5回からピッチャーを変えてきたが温まってきた打線を冷やすことはできずに得点を重ねる。俺のチームは1イニングずつ6回から手稲(経験者の一年)、井上(副主将が再登板)、手稲とこまめに投手を交互に変えながら大量失点を出来るだけ抑えた。
そして迎えた8回裏。序盤の緊張した試合はどこへやら。前回の試合のインパクトを上回ってしまう41-35で迎えた2死満塁。バッターは俺。最初に2球追い込まれたがベンチから出たサインはボールを待つサイン。ベンチの読みはあたり4球連続ボールでフォアボール押し出し。42-35。規定により8回コールド勝ちを果たした。