試合に出たい。
「伊那大鹿高校、選手の交代をお知らせします。9番山本孝之くんに変わりまして橋栗くん。」
2回裏は相手のピッチャーの調子も上がってきたようで2者連続三振で9番へ。
助っ人の山本孝之さん(あと2人山本姓がいる。)に代わって代打でバッターボックスに立った。
監督や主将からの指示はない。大岩からはボールを見るなというよくわからないアドバイス?を受けた。
1球目。ピッチャー振りかぶってボールを投げた・・・!?
「ストライク!」
全く反応出来なかった。
ボールは見えたが体が追い付かなかった。なるほど、大岩が言っていたのはボールを見て打つことはかなり難しいということなのか。
しかし球筋が見えないことには目をつむっても意味がない。確かさっきは真ん中だった。
そして2球目。
これも真ん中だった。
真ん中にボールが来ることを願いつつ3球目。
目を閉じて力任せにスイングをした。
バットがボールに当たった音がした。しかし体を持っていかれてこけてしまった。
「栄斗!焦るな走れ!」
もう一人の初心者がベンチから声をかけてくれた。焦るな走れってどういうことだよ。
とりあえず出来るだけ早く起き上がり一塁に一直線に走った。
一塁に着くギリギリのところで一塁のランナーコーチをしている先ほどまで試合に出ていた助っ人のうちの一人が2塁行ける!と言ったのでオーバーラン気味に1塁を回って2塁へ向かった。
想像以上にボールが飛んだようだ。
「ナイスバッティング!」
一塁のランナーコーチが寄ってきた。バッティンググローブなどを回収しに来たのだ。
「当たり自体はレフト前ヒットだったけどレフトがきれいにトンネルしてくれたぞ。初出塁おめでとう。」
褒めてくれた。どうやら相手のミスで2塁まで進めたようだ。
ここで打順は1番に戻り先ほどホームランを打っている大岩だ。
ここで相手チームはピッチャーを交代。次は背番号が12のピッチャーだ。投球練習を見る限りでは球こそ20番よりは速くないもののコントロールが良くて変化球も織り交ぜてくるようだ。
大岩はツーストライクを取られてその後4球粘ったが最後変化球で三振に打ち取られた。
2回終了で3-67だ。すでに試合が始まって1時間が過ぎた。