試合をしたい。
入部して3週間。俺は高校のマイクロバスに揺られること2時間、野球人生初めての試合の会場へと到着した。
俺の高校は神様のいたずらか1日目第1試合だ。開会式直後にある。
開会式があっという間に終わり試合が始まる。
先攻の相手チームの攻撃が始まった。
ピッチャーは主将。1年の時からこのチームでエースを張っているそうだ。
今日は助っ人7人が全員来てくれてスタメンは全員3年生だ。
投球練習を見ると主将はいつもより球が走っているように見えた。
しかし初球を簡単にセンター前へ運ばれるとそのボールをセンターの助っ人が後逸しその間にランニングホームラン。
出足を挫かれ1アウトをやっと取ったころには既に36点を取られていた。なおも満塁。
主将の球数は100球に近づいている。素人目でも球威が落ちているのがわかる。
ここでライトとピッチャーの守備位置を交代。陸上部の砲丸投げを専門としている助っ人に交代した。
ここまであまり球が速くない安定した球からいきなり速いボールで一人目を凡打に打ち取ったがダブルプレーを取ろうと欲張りセカンドホースアウトのあとの送球が大きく逸れ3点追加。
速さがあってもコントロールがないとやはり抑えられない。その後21点を取られてやっと3アウト。
1回表に60失点を喫した3年生ナインは泣きそうな顔をしていたがまだ試合序盤。果たして試合は成り立つのか。
いきなり1番の助っ人センターに代打大岩が出された。志願したようだ。
1年生最初のバッターは大岩。野球経験者でちょっと焼けた肌に真っ白な歯が眩しい。
相手ピッチャーの背番号は20だったがそれでもボールは驚く程に速い。県大会ベスト4の脅威を身に染みて感じた。
2球連続ボールで来た3球目を大岩がとらえ、ボールはレフトスタンドへ。
ベンチは沸き上がった。
その後2人アウトになるが4番の主将がショートへの内野安打で出塁。
5番の助っ人3年のところで代打だ。砲丸投げの人だった。相当肩に来ているのだろう。そう考えると主将ってすごい。
代打で出てきたのはもう一人の経験者。初球をバットに当てたが浅いフライ。しかしこれを相手守備が譲り合いをしている間にボールは落ち猛ダッシュをかけていた主将がホームイン。2点目。
その後パスボールで3点目を入れるが6番は三振で攻撃終了。
2回のマウンドに上がったのは大岩だった。確か3番手投手として起用する方針だった。
主将と比べて大岩の投球は速さも安定さも増していた。
テンポ良く点は入れられていくが大岩もテンポよくボールを投げ続ける。
2回表は7失点に抑えた。3-67。
もはやスコアが野球のものではない。
監督からこの回9番に俺を代打を送ることを告げられた。
こうして俺の高校野球が始まった。