仲直りをしたい。
球技大会から数日、いつも通りの生活を送っているが一つ気になることがあった。
抱き合ってしまったあの子とずっと気まずいままなのだ。
もともと喋ったことがないとはいえ、これまでは無言だったのに球技大会以降すれ違うたびに両方戸惑ったりするようになった。かかわりが出来たとはいえこの関わりはどうなのか。
大岩に相談しようと思ったが常にだれかと話している。山本健太は論外だ。俺は手稲に相談することにした。
しかし、教室の中では手稲は存在が薄い数分探していると後ろから手稲に小突かれた。申し訳ない。
手稲も俺とそいつの間の微妙な空気については察していたようだ。しかし、「時が過ぎるのを待つしかないな、都会の子は複雑やなあ~」と呑気に返された。でもいらつきはしなかった。
彼女は携帯を持っているがLINEもTwitterも知らないので連絡取りようもなく、最近は無駄に気にしすぎているせいか山本健太に余計いじられるようになった。とりあえず叩く強さを強くした。
そして県大会初戦前日。試合会場が北信地区な上に1試合目なので前泊することになったため学校終了後バスに乗り込み出発する手はずになっていた。
出発寸前に急に尿意を催し一人トイレに駆け込んだ。人影が見えた気がしたが気のせいだろう。
そしてスッキリしてトイレを出て足元に何か落ちていることに気付いた。
拾ってみるとどうやら紙みたいで周囲を見渡すも誰もいない。トイレに入るときに俺が落としたのかなと思って中を見たら俺じゃない字で「球技大会はごめんなさい。許してください!なんでもしますから!(なんでもするとは言ってません)」と書いてあった。字に見覚えはないけど球技大会というワードで大体誰かわかってしまった。彼女が書いたのだろう。筆跡もあまり見たことない字だ。
よかったと内心ホッとしバスへ乗り込んだ。山本健太がここぞとばかりにいじってくる。もう慣れっこだが一発叩かないと気が済まない。気が済んだ。
そして、球場周辺の宿泊所につき夜は更け快晴の中伊那大鹿野球部の1回戦が始まろうとしている・・・!