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朝食と侍女と拷問と


 運ばれてきた朝食はなんだかよく分からないものだった。


 透き通るような白さの皿には焦げ目のついた黄色いなにか、赤い果実のソースと白い粉のようなものがかかっている、そばにはカラトリーがセットされているが私は生まれてこのかたこのようなものは食べたことがない。


 とりあえず左右にあるナイフとフォークで食べるのだろう、なんとなく貴族っぽく上品さを心がけて、小さめに切り分け口に運ぶ。


 ・・・・・・甘い、ただただ甘い。


 貴族の食べ物を食べた経験はないがこれはいささか甘すぎるのではないだろうか・・・、それとも貴族とはいつもこういったものを食べているのだろうか・・・。


 「すまない、今日は少し食欲が無いようだ、よければ君が食べてくれないか」

 

 「は、はい、畏まりました」


 流石に限界だ、コレを丸ごと食べるのは少々厳しい、3分の1程は食べたがこれ以上は無理だ。


 侍女を見ると少々顔が赤いがあっという間に皿の上のものが無くなった、少し無理をさせてしまっただろうか・・・、心苦しいが私には食べられなかったのだ、どうか許して欲しい。


 侍女は朝食の残りを食べ終えると素早く片づけを済ませてしまった、こういった手際はさすが貴族の屋敷で働く者といったところか。


 「それを片付けて来たら少し話がしたい、暫くかかると思うが時間を取ってきてくれるか」


 「はい、畏まりました」


 侍女は部屋から出て行くとそれほど時間を置かずに戻ってきた。


 部屋には椅子が一つしかなかったので私はベッドに腰掛けて侍女には椅子に座るように勧めた。


 「それで話なんだが・・・、恐らくこの話を聞いていると私の頭がおかしくなったのかと思うかもしれないが最後まで聞いて欲しい。」


 それから私は侍女にことの顛末を語った。


 朝起きたら見知らぬ女になっていたこと、その女はどうやらこの領では有名人のロザリア様(本人の家で渾名を呼ぶ勇気は無かった)らしいということ、自分はウェインという名の平民の冒険者であること、自分の頭がおかしくなって一夜にして自分が男だったと思い込んでいるのでなければ、恐らく領内に「ウェイン」がいて、それはロザリア様の記憶を持っているだろうということ、そして自分は「ウェイン」を探さなくてはならないということ。


 この話を彼女に打ち明けたのは隠そうとしても必ずばれるだろうと思ったからだ、本人は気をつけているつもりでも端から見たら明らかに普段と違う不審な行動を取ってしまうことがあるだろう、そうした場合誤魔化しは絶対に効かないし、そうなれば本物の「ローズ」に成り代わろうとした偽者として殺されてしまう可能性もある、そうしたリスクを考えた場合下手に隠すのは逆効果だ、自分の正体を隠しつつどこの馬の骨とも知らない平民を名指しで探し、それでいて誰にも怪しがられてはならないなどという芸当が出来るのであれば私はとっくの昔に超一流の役者として劇団でも率いているだろう。


 語り終えると侍女はなにやら考え込んでいるようだったが、不意に顔を上げると私の服(なんといったか、夜着?)を捲り上げた。


 「体はロザリア様のものみたいですね」

 「どうしてそう思った?」

 「ここ、傷があるんです、ロザリア様が幼少の頃につけた傷なのですが、人目につくような傷でもありませんし、何より毎日見ておりますので、見間違うことはありません」

 「では私の話を信じてくれるのか」

 「疑問はありますけど、まずはバルドル様にお話しなくてはなりません」

 「バルドル様とは?」

 「その様子ですとご存知ないのですね、バルドル様はルゴス家現当主、つまりはロザリア様のお父様に当たります」



 どうやらあったこともない父親(この体の、という注釈がつくが)と会わねばならないらしい、貴族の作法なんて知らないのだが無礼打ちとかされないんだろうか・・・



 「とりあえずお召し物だけでも換えさせていただきますね」

 「貴族の服の着方なんて知らないんだが・・・」

 「私が着替えさせますので、ウェイン様?はとりあえず言われたとおりに動いていただければ結構です」




 朝食を食べきらなかったをこれほど感謝したのは人生で初めてだ、内臓かつぶれるかと思ったぞ、世の貴族の女性はほぼ例外なくこれをつけているのだと聞いたときは侍女の正気を疑った。





 バカじゃないのか、なんだコルセットって、拷問器具か何かか。





朝食はフレンチトーストです、予想ついたかな?

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