【Ⅱ】少女たちは仮想世界でゲームをするそうです。
みなさんどうも、YouTubeでもこっちの小説でも頑張るつもりの刹那です!まだまだおかしな点はありますが、出来れば書籍化になったらいいなぁ、なんて思っております(*‘∀‘)夢のまた夢なきがしますけど。それではみなさん、ゆっくり読んでいってください!
第三話「獣人全権代理者」
セイラはふと目が覚める。すると周りは神殿の柱がぐるりと一周囲んでおり、床も大理石で出来ている場所にいた。そして、服も何故か新しい服ではなかった。
「起きたかい?早々に熱だすとは、情けないものねぇ」
セイラは声がした方を急いで見ると、金色の長い髪を横で簡単に結んでいて、一本の狐のしっぽを揺らしながらお酒を飲む獣人がいた。
「ここって、どこ・・ですか?」
セイラが恐る恐る尋ねると、その人はニコッと笑って答えてくれた。
「ここはな、夢の世界だ。」
「夢の、世界?」
首をかしげながら聞き返すセイラ。
「詳しくは、創造神様が創った場所、と言っておきましょうかねぇ」
「さらに意味が分からなくなった・・・。で、あの、名前を伺ってもいいですか?私、セイラです」
「うちはしがない亡霊や、名乗るとすれば、【アリーナ・アグリニー】やな」
「あ、アグリニー?」
「ああ、そうや。で、この場を借りて言わせてもらう、うちの子孫が、迷惑をかけたな。あいつの代わりにここで謝らせてもらうわ」
もう何が何だか分かんなって来るセイラだったが、取りあえずまた話し出す。
「え、えっと、アリーナさんはアグリニー家の人ってこと?」
「そうや、初代当主をやっていた者やで?ついでに言うと、それぞれの街に全権代理者がおる、その人たちはな、その街の長ということにもなる」
「いわいる町長ってやつですか・・・」
そうやな、といいながらまたお酒をのむアリーナ。
「まあアンタがここに長居しているともとに戻せなくなるかもしれんから、もう一つだけ伝えて終わりにするわ」
また首をかしげるセイラ。それを無視してアリーナは話す。
「このことは言わないでほしいが、クリスタル王国で龍狩りが起こっているが、あれはただの序章でしかない。これから先、あの伝説の古の聖戦がまた起こるであろうとだけ、伝えておく。あと、クリスタル王国の五つの種族の力を借りなければならないであろう。」
それが言い終わったとたん、セイラの視界が真っ暗になった。深い闇に沈んでいく感覚があり、そしてアリーナではない誰かの声が聞こえた。
「じゃあセイラちゃん、ソニアさんらと一緒に頑張って私のとこまで来てみてね?あと、あの聖戦が起こらないようにルーンを集めて保管でもしておいてね」
■■■
手に暖かい感覚がある。セイラは目を開けて自分の手を見ると、ソニアがセイラの手を繋いだまま、寝ていた。奥の方を見ると水色の髪の獣人が椅子にもたれ掛かったまま寝ていた。
「あのまま、気絶していたんだ・・・もうこの世界にきて二回目だね・・・いや三回目?」
セイラの独り言でソニアが起きたらしく、顔をあげて、あくびをした。
「セイラ、起きたの?調子は大丈夫かしら?」
「まだ頭が痛いです、あと、何故かほっぺも若干痛いです」
「大丈夫?ほっぺが痛いのはフィーナが突っついていたせいね」
セイラは寝たまま上の方を見れば、フィーナはベッドの縁につかまって寝ていた。
そして獣人の少女も起きたらしく、セイラの寝ていたベッドまで駆け寄ってきた。
「起きたのです?よかった、でも、まだ動けないのです?」
その言葉を聞き、起きようとする。が、頭が少し上がるくらいだった
「まだ、かかりそうね」
「うん、早めに出発したかったけど・・・。で、そこの獣人の子は?」
「ラクシュミなの!気軽にシュミって呼んで欲しいの!」
ぴょん、と跳ねながら言うシュミ。
「私、セイラ。よろしくね、シュミちゃん」
うん!と元気よく返事をするシュミ。
「しばらくは動けそうにないから、お世話になるけど、シュミは大丈夫?」
「私は大歓迎なの!」
■■■
ラクシュミの家にお世話になって四日がたった。セイラも徐々に回復しており、魔法の練習をしようとしていた。
「う~、この模様とかなんとかならないの?」
左腕には赤い色のジェムアクセサリーに白い不思議な線が書かれていた。
「これぐらいしないと、初歩魔法も使えないかもしれないんだよ~?」
白い絵の具っぽいものがついた筆を浮かせるリーナが言う。
「それに、それ書くのも楽じゃないんだよ~?」
「まあ取りあえずやってみたら?」
わかった、とセイラは短く返事をし、左手を前に出す。
「まずはイメージだね。例えばフレイを使いたければ、呪文を言うのは勿論、どういう風に出てくるかイメージをするのも大事なんだよ?じゃあリーナがお手本見せるね」
深く息を吸い、リーナも手を前にだす。
「火の聖霊よ、我に力を貸したまえ!魔法の書第一項、【フレイ】!」
そういい終わった瞬間、リーナの周りに炎が渦巻くように現れた。
「す、すごい・・・」
「ねえリーナ、最初の【火の聖霊よ、我に力を貸したまえ】は要らないんじゃないのかしら?」
フィーナにパンをあげていたソニアが言う。
「だから~、使い魔の場合、さっきのみたいに最初の部分は言わないといけないの~、唱えなくていい人はフレイっていうだけでもできるけどね」
「取りあえずやってみるね、【魔法の書第一項、フレイ】って言えばいいんだね?」
「ええ、人によって得意の属性があったりするのだけれどね」
ふーん、と答えながらもまたポーズを取り直すセイラ。
「えー、魔法の書第一項、フレイ!」
言い終われば、少しながらも手の周りに炎が出てきた。
「補助つけてるだけあって、多少はでるんだねぇ~」
「補助なしじゃあ私、魔法使えないの?」
「練習していれば第二項までは一カ月で出来ると思うわ。取りあえず第一項のうち一つが使えるようになれば他のもできるから頑張るしかないわね」
気がとうのきそう・・、なんていうセイラ。あははと笑うリーナを他所に質問をする。
「ちなみにソニアさんはどこまで使えるの?」
え、私?と言ってから続けるソニア。
「私は第七項までなら無詠唱で、八項は魔法の名前だけでいけて、そのあとは全部呪文を言えばできる、ハズよ」
「すご!?じゃあ何か見せて?」
目を輝かせながら言うセイラ。
「一つだけよ?じゃあ第七項のにしようかしら」
ソニアが言うと、空気を読んだかのようにフィーナがセイラの肩まで飛んできた。
「じゃあ行くよ?魔法の書第七項、【エターナル・ブレイズ】!」
呪文を唱え終わったその刹那、ソニアの足元に複雑な魔方陣が一瞬で描かれ、その周りにもどんどん広がってゆき、そしてその魔方陣から火柱があがった。あっけにとられてみているセイラ。技が終わった後、おもむろにソニアが言い出す。
「ちょっとやりすぎたかしら?呪文唱えて言うといわないのじゃ、少しちがうしねー・・・」
「いや、その前に第七項でこんな威力なら十項とかすごすぎるんじゃないの!?」
まあそうね、なんていうソニア。何とも言えないようだ。
「魔法って、人のイメージによって違うのか?もう獣人とか森精霊とかが怖くなってきそう・・・」
「天使人は独自の魔法を持ってるらしいよ?」
「なにそれ、恐るべし・・・」
あはは、と笑うリーナに、首をかしげるシュミ。
「じゃあそろそろ出発しましょうか?それとも、まだここにいる?」
すぐ体制を治すセイラ。
「もちろん、出発しますよ!」
「私も行くの!」
「次向かう場所はどこ~?」
二人とも割は行ってくるのに、思わず笑うソニア。
「次はアリア・ステラ、獣人の街よ」
一瞬、沈黙。だが、すぐにぱぁぁっと顔が明るくなるセイラとリーナにシュミ。
「久々の故郷なのです!」
ピョンピョン跳ねるシュミ。
「おー、獣耳っこの街だ!いよいよか~!」
目を輝かせながら言うセイラ。
「それじゃあ行きましょうか、準備はできた?」
「荷物詰めたらオッケーだと思う」
「それじゃ、荷物詰めたら出発なのです!」
■■■
ラクシュミの家を出発し、約半日が経過していた。
「暗くなってきちゃったわね、そろそろ野宿の準備しないと・・・」
取りあえずソニアはテントと寝袋を出した。
「えーとシュミ、枝を拾ってきてくれる?」
こくん、と頷き、すごい速さで走っていった。
「セイラ、リーナ、テント立てるの手伝ってくれる?」
「立て方はよく分かんないけど、手伝うよ!」
「リーナもやる!大体ならわかるよ~」
骨組み、そして布をかけるとところまでやったところで息を切らしたシュミが帰ってきた。
「はぁ、はぁ、これぐらいなら、大丈夫、なのですか?」
小さな腕いっぱいに枝を持っていた。
「それぐらいあれば十分持つわ、ありがとうシュミ。休憩してていいわよ」
「わかった、のです」
やっと息が落ち着いてきたらしく、もう一回深呼吸をしてからその場に座った。
「火おこしは、フレイでやるの?」
木の枝を並べながら聞くセイラ。
「その方が楽だからそうするわ。ちょっと離れてて?」
そういって、セイラが数歩下がると、ソニアが手を出す。すると勝手に火が付く。
「イメージすれば一緒の魔法でも違うようになるのよ?」
セイラに向かって言うソニア。
「魔法って、やっぱりすごいですね・・・」
苦笑いになるセイラ。
「ねえねぇ、お腹、すいたのです」
「そういえばそうねぇ・・・。簡単なものでも作る?」
「木の実のスープとか?」
「今持っているものならクッキーぐらいよ。」
「!!食べるのです!」
目をキラキラさせてソニアをみるシュミ。それを見てソニアは何枚かクッキーを取り出してみんなに渡していく。
「まあ今日はこれで我慢してね?」
セイラもシュミもうなずいてクッキーを頬張る。その後からソニアもクッキーを食べる。
■■■
髪が緑色で、舞子のような服を着ていて腰から羽が生えた女性が森の中で立っていた。多分、前ソニアさんが話してくれた天使人だろうか?そして反対から頭に角が生えていて、竜のしっぽが生えている人たちがぞろぞろと来て天使人の少女から少し離れたところで立ち止まり、何か話し出す。何を話しているか全くわからないが、結局のところ天使人の少女の説得は無意味に終わったみたいで、軍の方が武器を構えると、天使人の少女も歪な形の魔法で作ったであろう剣を出す。そして軍も走り出して、その少女も地面を蹴って飛び上がって―――
「―!!・・・夢?」
思わず飛び起きると、いつの間にかテントの中で寝ていたらしく、シュミも横で寝ていた。スマホで時間を確認すると夜中の二時をさしている。
「なんだったんだろ?あの竜っぽい人たちも天使人の子も・・・まあいいや、寝る」
そうして思いっきり布団をかぶる。そのうち、また眠っていた。
「セイラ、シュミ!もう朝よ」
ソニアさんがテントの扉を思いっきり開ける。
「まぶしっ!?というか、ソニアさん一晩中外で寝てたの?」
「まあそうね、おかげて筋肉痛があるけれども。」
「それ、だいじょーぶなのです?」
「まあ大丈夫よ、それと朝ごはんできているわよ」
「お~、早く食べたい!」
「リーナ!?どこで寝ていたの!?」
「ん~?ラクシュミのところ~。尻尾モフモフで気持ちよかった~」
「あー!ずるいぞリーナ!私なんて犬さえ触ったことないのに!」
「そんなことリーナは知らないよ~」
苦笑いになっているソニア。そしてきょとんとしているシュミ。
「ねぇ、早く朝ごはん食べないのか?」
シュミに言われてピタっと二人の動きが止まる。その瞬間にソニア以外みんなのお腹が鳴る。
「うん、食べよっか。」
「そ~だね、腹が減っては戦はできぬとか言しね~」
「そのとーりだと思うのです。」
「あ、そいうえばソニアさん、聞きたいことがあるんですけど」
「何かな?答えられる範囲で答えるわよ?」
「えーっと、多分ここらへんで起きた戦争?ってありますか?」
「戦争ねぇ、確か四十年前かしら?天使人一人が龍族の軍を半壊にして追い返した、という記録ならあったハズよ」
「え?たった一人で半壊・・・私の世界じゃ考えられない・・・」
「その天使人のおかげで被害はほとんどなしで済んだみたい。もし大勢で行ったなら少なくともウェリアテラかミステリア・スカイに被害は出てかもしないわね」
「で、その龍族?の軍を半壊にさせた人は今どうしてるんですか?」
「私もよくわかんないけど、天使人は平均がだいたい1000年とかみたいだし、生きているわよ、その張本人。でも天使人全権代理者なら六千年以上は生きているって副全権代理者から教えてもらったわ。」
「やっぱあの種族、デタラメ種族なのです」
「まあ敵国が鳥頭、なんて言ったら本気で覆いかかってくると思うよ~」
「それでも天使人は我が国が誇る最高戦力だから下手に戦いを挑む敵はいないのよ。間違ってミステリア・スカイに攻め込む敵国はバカとしか言いようがないかもしれないわね」
パンをほおばりながら教えてくれたソニア。
「じゃあ獣人は?」
「獣人は限界突破、言い換えれば崩壊と変身能力が使える子がいる、ということは教えたわよね?」
「うん、というか私が少し調べた気もしますけど」
「で、獣人も重要戦力よ。それに崩壊個体とかは普通の個体の何倍もの威力を発揮するわね。」
「そして、この二つの能力を使える人はアグリニー家以外には全くいないし、どっちか片方はあまり使えないのです」
途中で割り込んできたシュミ。
「つまり、崩壊のほうが完全でも変身のほうが体の一部しかできない、っていうこと?」
「そういうことなのです。二つの能力が完全で同時に使えたとしても五分とか短い時間だけなのです」
「やっぱすごいな~、獣耳種族。」
「感心してる場合じゃないよ?食べ終わったらテントもたたんでアリア・ステラに出発よ」
「あ、そうだったっけ?」
「そこでボケはいらない。」
飽きられながら言われたが、とりあえずパンを食べきり、みんなでかたずけてから出発をした。
そして数時間後、目的地のアリア・ステラに到着したのはいいが、シュミがいるからか、ソニアさんがいるからかは知らないが、すんなりと全権代理者の住んでいる屋敷に通された。
「アリア・ステラってさ、和風なんだ」
窓から周りの建物を見渡す。建っているのはどれも昔の日本の建物っぽいものばかりだった。中には近代的な店も建っている。
「ここがその全権代理者の部屋なのですよ!」
そう言ったとたん、扉を思いっきり開けるシュミ。
「えーー!?イノセントさん!?」
「おや、まさかもうここまで来るとわ、どう?この世界は楽しいかい?」
扉を開けた先にいたのは、間違いなく私をこっちの世界に連れてきた張本人、イノセント・アグリニー。獣人全権代理者だった。
■■■
「あはは、それは災難だったねぇ」
酒を飲みながらいうイノ。それにたいしてフグのように顔を膨らませるセイラ。
「笑い事じゃないんですよ!?」
「と、とりあえずイノセントさんにこっち側の世界に連れてこられた、ということでいいのよね?セイラ」
「そうですよ!狭い部屋から一気にだだっ広い森に!起きたらいたんですよ!?」
「お姉さま、いくらなんでもやりすぎなのです」
「ほかに方法はあったか、と言われても協力してくれた森精霊もどこで目を覚ますかなんて知らないようだったしねぇ。」
ひょいっと立つイノ。
「じゃあそのお詫びもかねて、ゲームでもしよか?」
「へ?ゲーム?」
「そう、セイラにも説明するとな、このクリスタル王国では国内でも戦争は禁じらているんだ。だから揉め事になった時はゲームをするんや。場所によってトランプやチェスとか色々だけど、私たち獣人は違うゲームをしているんや。まあ見せたほうが早いで、ついてきて。」
歩き出したイノについていく。長い廊下の突き当りの扉を開けると、階段は下に続いていたが、ものすごく広い部屋に来た。
「確かここの広さは大体王都の城がすっぽり入ってもおかしくない広さだと聞いている」
「もうなんでもありなんですか?幻○○なんですか?」
「何~?そのげんなんとかってやつ」
「気にしないで、私がはまってた二次創作のやつ~」
「言っている意味がわかんないけど、ここが部屋の中心部だ。」
水色のキューブが浮いているだけで、それ以外はなんにもなかった。
「じゃあゲームを始める前に、ルールを確認しておこう。まず一、ソニア様チーム全員か私が続行不可能になればゲームは終了。二、制限時間は三時間とする。三、魔法や使い魔も使えるものとする。まあこんなところか」
「つまり、私とセイラ、シュミ、リーナ、フィーナがチームっていうことでいいのかしら?」
「ああ、それでいいぞ。もう一つ説明しておくと生身ではなく、バーチャル世界でやるから、実際の体に害はない。つまり腕を切り落とされても現実には影響なし、というわけだ。」
「物騒な例えをしないでください!!」
「じゃあどんな例えがよかったのか?尻尾を切られてもとかか?」
「それも物騒!せめてケガしても害はないとかで!」
「うーむ、よくわからないな。まあ起動させるぞ。」
「あ、もう一つ質問~」
「ん?リーナといったか、で、なんだ?」
「続行不可能になったらどうなるの~?」
「幽霊みたいになって観戦、かな」
「なるほど~、つまり手出しはできなくなるけど見れる、ってことでいいの~?」
「そういうことだ。」
そして、イノセントが操作していたキューブが光り始めて、全員の視界を奪い、その光が収まったころには景色が変わっていて、全員森の中にいた。
「・・・・え?なにこれ、瞬間移動でもしたの?」
「いや、これは全部仮想、実物じゃない。それに、あのだだっ広い部屋から一歩も動いておらんぞ」
試しに、近くにあった木の枝でセイラは自分の服の袖を切ってみようとしてやってみたが、ポリゴンの欠片がでて敗れたかのようになっただけだった。
「あー、そういうことね、実際の体には害はないって。」
「そういうことだ。まあ詳しい説明なんてしてたら数日たっても無理だろうな。で、ゲームのことなんだが、私は二分待つ。だから、その間に遠くに逃げるといい。あと、このフィールドから出ないようにな?」
「わかってますよ、それじゃあ」
「「ゲームスタート!!」」
全員が言った途端、イノセント以外は走り出す。
「さあ、私を楽しませてくれるかな?」
第四話「仮想世界でのゲーム」
ゲーム開始十分が経過した。イノセントは中心から南の方へと向かっていた。
(軽い足音、歩き、多分セイラか。右方向にソニア様とフィーナ、後方にラクシュミってとこやな)
歩いていると、急にガサっ!と音がなり、即座に反応して魔法で作った歪な形の片手剣を出す。
「ほう?随分と交戦的だなぁ、ラクシュミ?」
木の上から銃らしき魔法で作ったものをもったシュミが降りてくる。
「だって、いつも負けてばっかりなのですよ?そういうお姉様こそ、なんで得意な銃じゃないんですか?」
「まあ、あの天使人の真似事ってところや。」
パァァン!とシュミは銃を撃つが、イノセントは軽々かわす。
「そんな分かりやすい方法で倒せるとおもって?」
「思ってるわけないのですよ」
シュミは笑う、と無数に張られた魔法陣が出現する。
「なかなかやるねぇ、でも甘いっ!」
魔法陣から雷がだされるが、木を使ってうまくかわしていく。その隙をねらってシュミも攻撃するが、イノセントの剣ではじかれてさらに上に行ってそのまま切りかかろうとするイノセントだが、シュミも魔法で作った刀をだして応戦する。
「ちゃんと詠めるようになってきたねぇ」
「お姉さまの攻撃が単純なのっ」
その言葉を聞いて、イノセントは不敵に笑う。
「ほう?この実の姉に、喧嘩を売っているってことでいいのかい?」
「上等っ!いざ勝負です!」
そうして持っていた魔法で作った武器を消して、二人とも何故か手だけ、獣の
腕に変わり、また戦い出す。
―――
遠くから盛大な轟音が聞こえる中、時々魔方陣を作っていくソニア。
『ねーソニア、休憩しないの?』
「まだ休憩はしなくていいから、大丈夫よ。」
歩きながら会話をしているが、勿論ほかの人からフィーナの言っている言葉はピーとしか聞こえない。
「まあ今はシュミがイノセントさんの相手をしているみたいだけど、あの戦い、どれだけガチなんだろう、さっき銃の音がしたと思ったら急に音が変わっているし・・・」
『多分、変身能力使っていると思うよ』
「それならこの音にも納得ね、とりあえずできるだけ離れましょう。」
コクンとうなずくフィーナ。そして走り出す。
現在、ゲーム開始から三十分経過。残り、二時間と二十分。
―――
歩きながらも作戦を考えるセイラ。だが、魔法も全くのように使えないので、頼みの綱は自然とリーナになる。
「う~、どうする?リーナ、このまま攻めてこられたら足手まといになるだけなんだけど」
「なっさけないご主人だねぇ~、まあセイラはこれ持ってて。もし来ても私が何とかするから」
そういわれ、手渡されたのは魔法で作られた歪な形の片手剣だった。
「え、ろくに運動していない私に剣を使えと言っているの?」
「だーかーらー、さすがにリーナはセイラの身まで守れないからー、がんばれっていうことー」
「ますます意味わからなくなったんだけど・・・」
そして急にぶつかり合っていた音が止まる。
「これって・・・・」
「うん、戦い終わった、というころだからー・・・・」
二人の言葉が止まると同時、草をかき分け歩き始める音がする。
「・・・イノさん、こっちに来ている・・・」
「一回隠れて待ち伏せする~?」
「そうする・・・」
リーナの手を借りながら木の上に登るセイラたち。そして、どんどん近づいてくる。
そして、姿が見えたら、服は所々破れているところがある。よほどシュミとの戦いがすごかったらしい。そして、剣を構え直すと、ぴく、とイノセントの耳が動く。そしてセイラはジャンプしてイノセントめがけて剣をおろすが、持っていた剣で塞がれる。はじき返され、倒れるセイラ。
「待ち伏せか、いい策かもしれないけど、私には通じないで?」
「一か八か、みたいな感じだったけど、見事失敗ですね。それでイノセントさん。私は、この世界にこれてよかったよ。まだ大変なことしか起きていないけど。」
「そういってもらえるなら、私も嬉しい。」
話している最中に、イノセントの後ろにリーナが現れる。驚いた様子でとっさに後ろに振り向く。
「リーナのこと、忘れないでほしいな~?」
そして無詠唱で魔法を繰り出す。それをイノセントも防御魔法で防ぐ。
「さすがに、魔法使われると私も予想はできへんわ」
「それで、なんでイノセントさん喋り方が若干かわっているんですか?」
「獣人の方言みたいなものだ。まあ私は王都に出向くこともあるから直さないといけなかったから、混ざった感じになってるんや」
「セイラの世界でいう、関西弁的な~?」
「リーナ、いつ覚えたの?」
「つい最近~」
「そんな話はおいといて、早速戦おうか?」
「どこまで出来るか分かりませんが、やれるだけやってやります!」
リーナがセイラの前にくる。
「魔法の書第五項 『ブレイズ』!」
唱え終わった後、イノセントの周りに無数の魔法陣が出現して、そこから火が噴き出すが、見事にかわしていくイノセント。そして無詠唱でセイラが見たこともない魔法を繰り出してきたが、それをなんとかセイラはよける。
「魔法も最近覚えたのかい?セイラ」
「昨日教えてもらいましたよ、不思議な模様を描かれましたけどね!」
そう言いながらもフレイを繰り出すが、難なく交わされる。追い打ちをかけるようにリーナも無詠唱で行ける魔法を繰り出すが、それは剣ではじかれる。
「最近あったとは思えない連携だねぇ」
「もうリーナは正式にセイラの使い魔なんだから、主の考えていることはすべてお見通しなのだ!でセイラ~、私の使える最高位魔法、使っていい?」
「うーん、魔力ガッツリ減りそうだけど、思いっきりやっちゃって!」
「りょーかい!」
そういうと、くるんと一回転して、人間の姿になるリーナ。
「天かける蒼き空の神よ、その偉大なる力を我に貸したまえ!」
呪文を唱えているとき、周りが青く、夜空が近くまで来たかのような幻想的な空間が広がる。
「魔法の書第九項 『スターダスト』!」
唱え終わった瞬間、 周りにあった光るものがイノセントめがけて落ちていく。
それを苦戦しながらも交わす。時々かすれるが、命中したものはなかった。
「ふふふっ、中々やるねぇ、さすが第九項の魔法やなぁ・・・じゃあ私も、今使える最高位の魔法を使わせてもらいましょうかねぇ!」
そういうと魔法を使える体制になる。
現在、ゲーム開始から一時間と十分経過。あと、残り一時間と五十分。
―――
森の中、ちょっとした茂みの中で休憩しているソニアとフィーナ。意外と近めの場所から魔法を使う音が聞こえる。
「リーナといい、イノセントさんといい、どれだけ高位魔法を使っているのかしら、第八項あたりの技?」
『第九項の五個目のやつじゃない?』
「ああ、スターダストね?それはリーナの方かしら」
『そうだと思う、でも我々も、本気出さないといけないかもよ?』
「その喋り方、久々聞いた気がする」
『だって久々に使ってみたんですもの』
「まぁアレを使う覚悟だけはしておいて」
『了解』
そうして立ち上がり、動き出す。
現在、ゲーム開始一時間十五分経過。残り、一時間と四十五分。
―――
「はぁ、はぁ、はぁ―――」
無事にセイラ&リーナ戦を終えたイノセント。第八項の魔法を二回使ったので、それなりの疲労が襲っている。
「さすがに、崩壊使うよりはましだけど、きついなぁ・・・」
何度も深呼吸をして息を整えた後、いよいよ最後の敵であるソニアとフィーナの気配を探るが、思わず眉を顰める。
(なぜわざわざ近づいてくるん?正々堂々と勝負ってところかねぇ)
思わず笑いが零れるイノセント。
「これは面白そうだねぇ!その挑発、乗ってやろうじゃない!ソニア様?」
歩いてくる音がだんだんと近づいてきて、そのうち魔法を唱える声がする。
「魔法の書第七項『エターナル・ブレイズ』!」
唱えられた瞬間、イノセントの足元に魔法陣が描かれて、火柱が上がる前にイノセントは後ろに下がるが、次々とイノセントの進行方向に出てくる。
「流石ソニア様だねぇ、さすがにかわすのは苦労したわぁ」
「よくのんびりでいえることで、イノセント殿。」
「貴方様にそういわれるとはねぇ。」
「別にそこは関係ないと思われますが?」
「まあそんなことは関係ないわ。それよりも、今無性に全力をぶつけてくなってきてぇ――!!」
そして空間が避けるような音とともに、イノセントの目が紅く染まり、肩から手の甲にかけて不思議な模様が描かれていた。
「崩壊、ということですか。なら私たちも、そうしましょう。――不死なる炎の鳥よ、その力を我に貸したまえ!フェニックス!!」
ソニアが手を挙げると、肩が光り、そしてフィーナも炎に包まれていく。渦巻く炎が消えた時には、フィーナの姿は無く、その代わりにフィーナと色は似ているが、大きさも異なり、優雅に羽をはばたかせている不死鳥、フェニックスがそこにいた。
「そうこなくっちゃねぇ!」
そして狂気染みた顔をしているイノセントの腕がまた獣の腕に代わる。
「イノセント・アグリニー殿。汝は我等の強敵と見なし、我等の全力をもって対戦をするとし、このゲームを攻略させてもらうぞ。」
フェニックスが言うと、イノセントもまた不敵に笑う。
現在、一時間三十分経過。残り、一時間と二十分。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!次回でVSイノセント編完結の予定です!その後はアニバーサルの少女の話にしようかな、なんておもっております