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7話

本当はもう少し先で区切りたかったけど、ここでもまあ、いいいかな。と思った

ってことで物語スタート!

さくら。今日も白と一緒に学校行って、一緒に帰ってくるのよ?」

「……うん」


 もう、聞き飽きた。

 私が2年生になったとき、白は1年生。そのときから毎日毎日言われ続けてきた。

 白も3年生になったのだから、いい加減1人で行けるようになって欲しい。

 でも、イヤだって言ったら怒られちゃうし。

 香織かおりちゃんは文句を言ってこないから、私も我慢するしかない。

 それに雨も降っていないのに傘をさしていて、一緒にいる私と香織ちゃんまで変な目で見られるし。

 どうして傘をさしているのか聞かれても、私も詳しく知らないから答えられない。

 白は歩くのが遅いから、一緒に行く私と香織ちゃんも早くに家を出なくちゃいけない。

 ……それに、今だって。


「ほら白。日焼け止め塗った?」

「塗った」

「メガネは……かけてるね。あと他には……」

「大丈夫」

「なら、気をつけて行ってらっしゃい。無理しちゃダメよ?」

「うん」


 何をするにおいても白が優先で、私のことは後回し。お姉ちゃんなんだから我慢しなさいって。

 私だってお母さんに構ってもらいたいのに……。


「白! 早く行くよ!」

「うん」


 私は外に出て、まだ靴を履いている白に苛立ちをぶつけることしか出来ない。

 ようやく靴を履いて出てきた白がちゃんと後を付いてきているのを時折、振り返って確認しながら学校に向けて歩いていく。


「香織ちゃん、お待たせ!」

「ううん、大丈夫だよ。まだ時間もあるから」


 家の外で待っていてくれた香織ちゃんに話しかけると、笑顔で返してくれた。

 本当なら、もう少し遅くても十分間に合うのに。


「おはよう、白ちゃん」

「おはよう」


 香織ちゃんは私の後ろにいた白に顔を合わせて挨拶をしている。


「それじゃ、行こっか」

「うん」


 私たちは白に合わせてゆっくりと歩いていく。

 それにしても……香織ちゃんは白のこと、嫌いじゃないのかな?

 何をしても白が有線なのに、香織ちゃんが嫌な顔をしているところを見たことが無い。


「あ、桜姉さん」

「なに?」


 考え事をしながら歩いていたら、白が私の服の端を引っ張りながら名前を呼んでくる。


「ちょっと待ってて」


 そう言って白は私と香織ちゃんから離れ、家のチャイムを鳴らす。


「……って! な、何してるの!」


 いきなりのことですぐに動けなかったけど、何をしているのか理解してからすぐに白の所に行き、イタズラでチャイムを鳴らしたことを謝ろうとした。


『あ、しーちゃん! 今行くね!』


 謝るより先に聞こえたセリフに私は訳が分からなくなった。

 それからすぐに家の扉が開き、中から金髪の女の子が出てくる。


「お待たせ! しーちゃん!」

「うん。桜姉さん、お待たせ」

「う、うん」


 白にそう言われ、未だによく分からないことだらけだけど頷くことができた。

 そして前を私と香織ちゃん、後ろを白と金髪の女の子といった並びで学校に向かっている。

 途中、香織ちゃんに金髪の女の子のことを知っているか聞いてみたけど、わからないって首を横に振ってたし……。

 それを知ってか知らずか、白は女の子と仲良さそうにしながら話をしている。


「ねえ、白ちゃん」

「どうしたの? 香織ちゃん」


 そろそろ聞いてみようかな、と思っていたら、先に香織ちゃんが振り返って白に聞いていた。


「その女の子、私たちに紹介してくれないかな?」

「うん」


 香織ちゃんが振り返ったとき、さっきまでは普通に話してた女の子が城の後ろに隠れてしまった。

 白はその女の子に大丈夫だよ、と声をかけて、ようやく女の子は白の後ろからおずおずと出てくる。私たちのことが恐いのか、白の服の端を握っている。


「あ、あの。私の名前は……」


☆☆☆


「……さん! 桜さん!」

「あれ? 優斗?」

「大丈夫ですか? 桜さん」


 心配そうな顔をしながら桜の顔を見つめる優斗。

 心配されている桜は訳が分からずに困惑している。


「えっと……どうしたの?」

「どうしたの……って、さっきからぼーっとしたまま動かないから心配したんですよ。呼びかけてもすぐに反応が無かったですし……大丈夫ですか?」

「あ、大丈夫。ごめんね、心配かけて。少し考え事をしていたから……」

「そう、ですか。あと少しで終わると葵がさっき来ましたよ」


 無理やり笑顔を作ってえへへ、と誤魔化す桜。そんな様子に優斗も少し無理して笑顔を作りながら話題を変える。


「そっか! それなら私たちも早く終わらせちゃおう!」


 そう言って手を動かし始めた桜を見て、優斗も残り少なくなった荷解きを再開させる。




 空がオレンジに染まる頃には荷解きも終わり、エレナと美花の関係もまだ多少のぎこちなさはあるが、仲良くなっていた。

 途中、言っていた時間通りに仕事を終えて帰ってきたミオラも荷解きに加わり、今はリビングでミオラの淹れた紅茶を飲みながらゆっくりとした時間を過ごしていた。ちなみに桜は白の手伝いをすると言って戻っているためここにはいない。


「今日は手伝ってくれてありがとう。これ、良かったら食べて。手作りなんだけど」


 ミオラはそう言って出来立てのクッキーを皿をテーブルの真ん中に置く。


「ありがとうございます」


 優斗、葵、美花はお礼をいい、クッキーを1枚手に取り、食べる。


「……美味しい」

「紅茶に良く合いますね」

「疲れた体にちょうどいい甘さです」


 3人はすぐに食べ終え、2枚目と手を伸ばす。


「そう言ってもらえると作った甲斐があるわ。まだあるから遠慮せずに食べていいのよ? むしろ遠慮していたらエレナに全部食べられちゃうから」

「……うっ」


 横でパクパクとクッキーを食べていたエレナが反応し、肩をビクッとさせたあとに恨みがましい目をミオラへと向ける。……クッキーを口にくわえたまま。


「冗談よ。好きなだけ食べなさい。……あら? 遠慮せずにいいのよ?」


 2枚目も3人はすぐに食べ終えるが、そこで手が止まる。

 エレナと話していたミオラがそれに気付き、遠慮せずにと勧めるが手を伸ばそうとしない。

 それを不思議そうな顔をしながらも食べることをやめないエレナが見ている。


「……口に合わなかったかしら?」

「い、いえ! 凄く美味しいです! ……ただ、食べ過ぎると夕食が入らなくなるので…………」

「あら、そういうことだったの。なら、持ち帰って後でゆっくり食べて頂戴」


 クッキーに手を伸ばさない3人を見て、口に合わなかったのかと不安そうなミオラだったが、理由が分かってホッとした後、皿を持ってクッキーを持ち帰ってもらうために袋に入れようとキッチンに持っていこうとする。


「あ、クッキー……」

「また今度、焼いてあげるから」

「ならいっか」


 皿をキッチンに持っていかれて残念そうな声をあげるエレナだが、また作ってくれると分かると笑顔になる。


「……今更だけどエレナ。そんなに食べて、夕食入るのか……?」

「え? あ、はい。今日は結構動いたので大丈夫だとは思います。……一応、今夜は軽めにと思っていますけど」

「エレナ。ちょっとここで待っててくれ。…………葵、美花」

「は、はい」

「…………」


 優斗はこめかみを押さえたあと、葵と美花を連れてエレナから離れてリビングの隅へと移動する。


「……まさかとは思うけどさ、言っていない?」

「……そのまさかだと思う」

「えっと……伝えていないの?」


 どうしたものかと3人で集まって話し始める。


「ああ、荷解きの手伝いは今日帰っているときに伝えていたが……いや、たしか言っていたぞ。夜の予定を空けておいてくれ、と」

「恐らく、意味が正しく伝わっていなかったのだろうな……」

「それで……どうするの?」

「あら? そんなところでどうしたの?」


 悩んでいた優斗たちだったが、そこにクッキーを袋に詰め終えたミオラが戻ってくる。


「この際、正直に言うか」

「そうだな。任せたぞ優斗」

「優斗さん、お願い」

「え……俺かよ……」


 葵と美花に頼まれた優斗は考え込むが、どうにでもなれと全て話すことを決め、エレナとミオラの元へと行く。


「もう、正直に話すことにします。実は今日、エレナの歓迎会をしようと考えていました。白と香織が今、料理を作っています」

「それは良かったじゃないエレナ。行ってきなさい」

「……ママも呼んできてって言われてるよ」

「あら、そうなの?」

「え、ええ」

「なら、お邪魔しちゃうわね」


 なんとかなったことでホッと息を漏らす優斗。

 だが、エレナの表情が若干暗くなっていることに気がつく。


「エレナ、どうかしたか?」

「いえ……クッキー食べ過ぎたな、と」

「…………ああ」


 他のみんなも心配そうにするが、それはすぐに同情へと変わる。


「で、でも! 食べる前に教えて欲しかったです!」

「いや、まさか伝わっていないと思わなくて。……白がエレナに今夜空けておくように言ってだろ?」

「はい。ですから夕食を食べた後にでも行ってみようかと…………行って、みようかと……」

「気付いたみたいで……そう、今夜空けておいて欲しいのは、歓迎会をするため。もっと砕いて言えば、夕食に招待したってことだったんだよ」

「…………うう、恥ずかしい」


 同情の視線に耐え切れず、顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 そこに優斗は近づいていき、エレナの肩にポンと手を置く。


「ゆ、優斗さん……」


 救世主が現れたかのような目を優斗に向けるエレナ。

 そのような目を向けられた優斗は親指を立ててニッコリと笑い。


「エレナ、どんまい」


 止めを刺す。


「…………ゆ」

「ゆ?」


 再び、俯いてしまうエレナ。そして何か呟くが、その声は小さかったためにうまく聞き取れず、聞き返した優斗にエレナは立ち上がり、キッと顔をあげて手を振りかぶる。


「優斗さんのバカァァァア!」

「ぶへっ!」

「うわぁぁぁぁあん! 葵さぁぁぁん!」

「うぐっ!」


 バチン! と大きな音を響かせるほどのビンタを優斗に食らわせたエレナは葵に抱きつく。

 その際、ビンタをされて床に横たわっていた優斗が踏まれ、呻き声を上げるが誰も気に留めない。


「最低だな」


 抱きついてきたエレナの頭を優しく撫でながら、床に倒れている優斗へ冷たい目を向ける葵。


「最低」


 それに続いて美花もエレナに大丈夫? と声をかけたあと、優斗に一言、葵と同じように冷めた目を向けながら言い放つ。

 ミオラは立ったまま今の流れを面白そうにニコニコとしながら見ているだけで、助けるわけでも追い討ちをかけることもしなかった。


☆☆☆


「おし、そろそろいいらしいぞ」


 そう言って携帯を片手に持ち、床から立ち上がる優斗。

 あの後、床に倒れたままずっと放置された。

 女子4人は腹を満たさぬ程度に紅茶を飲みながらずっと話をしていた。


「おーい。白からメールがきて、もういいってよ」


 女子4人に見事無視された優斗だったが、聞こえなかったのかな? とポジティブに受け取り再び声をかける。

 そんな優斗にエレナ、葵、美花の3人は汚物を見るような目を向けられたあと、イスから立ち上がって玄関へと向かう。ミオラはニコニコとこの状況を楽しんでいるかのような笑顔を浮かべながら、その後をついていく。


「……はぁ。俺も行くか」


 リビングに1人残された優斗もそう呟き、頭を掻いた後に玄関へと向かう。




「それ、見てみたかったな」

「そうは言うけどあれは辛かった……」


 白は優斗と2人で下にクッションを敷いてそれに座り、高さの低いテーブルに皿を並べて食べている。

 高さのあるイスに座って食べるほうのテーブルは6人しか座れないため、1人余るのが1つ目の理由。

 もう1つの理由は、6人全員分の皿を並べることは出来るが、テーブルのほとんどが埋まるため、余裕を持たせるためである。


「白さん! 本当に美味しいです!」

「そう。おかわりはまだあるから好きなだけ食べるといいよ」

「はい! ありがとうございます!」


 エレナは離れて食べる白に話かけるが、白は手をヒラヒラと振って一言返すだけで話を終える。

 そんな態度も気にせずお礼を言うと、再び隣に座っている美花と話し始める。


「まあ、でも上手くやったな」

「さあ? 何のことだ? ……お、これ上手いな」

「エレナと美花のことだよ」


 コップに注がれているジュースを一口飲み、白は話しかけるが、優斗はとぼけてボルシチを食べ、話を逸らす。が、白に通じず、そのまま話が逸れることなく続いていく。


「あの2人は人見知りだからね。荷解きを一緒にやっていてもある程度は仲良くなれるけど、ぎこちなさが残る。それを取り除くきっかけを優斗は作ったんでしょ?」

「…………」

「…………」

「…………はぁ。まったく、何で分かるかな」


 しばらくお互いに黙ったままでいたが、先に優斗が折れる。


「普通の人だったら今のを聞いたら俺を批難ひなんすると思うんだが……」

「それはあれか。遠まわしに俺は普通じゃないと言いたいのか」

「いや、違うぞ? だって白が普通じゃないのは今更じゃないか」

「そうか……ん? 優斗。まだ赤みが足りないのか。ならこれをいれてあげよう」

「っへ? ……お、おい。それはダメだって!」


 途中までシリアスな雰囲気を出しながら話していたと言うのに、ふとしたことでいつもの緩やかな雰囲気へと変わる。今は白がタバスコを手に持ち、優斗のボルシチに入れている。


「……あぁ、さらに赤くなって…………」


 どうにかして白からタバスコを奪い、これ以上入れられることを阻止した優斗だったが、時すでに遅し。タバスコ容器の3分の1ほどが入れられた後だった。


「まあ、時間はあるんだ。ゆっくり食べればいいさ」

「……くそぅ、やったら倍以上になって返ってきたぜ」


 満足感たっぷりな顔をしながら自身もボルシチを食べる白。その横ではぶつぶつと呟きながらボルシチとにらめっこをしている優斗の姿が。


「まあ、まずは一口、食べてみろって」

「……ああ」


 促されてスプーンを手に取り、すくって恐る恐る口へと運んでいく。


「ええい、ままよ!」


 口元で躊躇ためらって手を止めるがなるようになれと、食べる。


「……お? そんなに辛くない。むしろ美味しいぞ」

「当たり前だ。食べ物を無駄にするようなことはしないからな」


 そう言って白も自身のボルシチに少し、タバスコを加える。


「そういえばそうだったな。それにしてもこんなに作るとは思わなかったぞ。作るとしてもエレナが好物だと言っていたボルシチだけだと思っていたんだが……パエリアに、これはサーモンマリネか?」

「まあ、ところどころ香織に手伝ってもらったりもしたけど、俺ももつとは思わなかった」


 それから、白と優斗の2人はたわいも無い話をしながらゆっくりと食べ進めていった。

特に何もないと思うけど、毎回のせてから

あ、あれ言っておけばよかったとかよくある

まあ、別にいっか

ってことでまた次回〜

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