6話
今回はちょっと短いよ!(千文字ぐらい)
まあ、読んでる人はそんなにいないと思うけど!
ってことで物語スタート!
あの後、時間をかけてゆっくりと食べ終えた白は香織にいれてもらった緑茶を飲んで一息ついていた。
「さて、それじゃそろそろ始めようか」
「材料は足りるの〜?」
「んー、まあ、まずはそれの確認からだね」
緑茶を飲み干し、イスから立ち上がる白。続いて香織も立ち上がり、白とともにキッチンへと向かう。
白はキッチンにつくと、最初にいまある材料の確認を始め、これから作る料理に足りないものを、冷蔵庫に張り付けてあるホワイトボードに書いていく。
「そーいえば白ちゃん。何を作るつもりなの〜?」
「んー、ボルシチと……後は作ってるときに思いついたものを、って感じかな?」
「……材料は足りる?」
「今の時点でいくつか足りないものはあるけど、どれも軽いものだから頼もうかな。暇だったらだけど」
そう言いながらポケットに入れていた携帯を取り出し、どこかへと電話をかける白。
『どうしたの? 白さんから電話なんて珍しいね』
「あ、美花。いま、暇?」
『え? あ、うん。暇だけど……?』
白が電話をかけた相手は、美花だった。
はじめは電話をかけてもらって嬉しそうな声の美花だったが、暇? と聞かれ、面倒事を押し付けられると思ったのか、美花の声のトーンが少しだけ下がる。
「それでなんだが、買い物を頼まれてくれないか?」
『うん……いいよ』
思っていたことが見事に当たった美花の声のトーンがさらに下がる。
だが、次の白の一言によって落ち込んでいたのは気のせいだったのか? と思うほどにまでテンションが高くなる。
「夕食、食べてって貰うつもりだから、親に許可取ってからいまから頼むものを買って、家に来てくれ。お金は後で清算するから」
『夕食を白さんの家で!? 分かった!! それで何を買えばいいの?』
「ああ、買ってきて欲しいものは……」
☆☆☆
「美花ちゃんも呼ぶの〜?」
「ん? そうだよ」
美花に頼むものを伝えて電話を切り、料理をしやすいように香織とキッチンを整理していた時、不意に香織が口を開く。
「美花とエレナの顔合わせをしておくつもり。場面によっては俺たちよりも美花の方が困ったときに助けられるかもしれないし、困ってるときに手を伸ばせる人は多いに越したことはないと思うから」
「……白ちゃんがエレナちゃんにここまでするのはまだ”あの事”を気にしているから?」
「…………」
整理していた手を止め、香織はまっすぐに白の顔を見つめる。
それに対し、白は香織と目を合わせずに黙り込む。
「”あの事”は白ちゃんが悪いわけでも、エレナちゃんが悪いわけでもなかったじゃない! 寧ろ白ちゃんが一番傷を負って! 苦しんで!」
そんな様子の白を見て、香織は堰を切ったように目から涙を零し、肉に爪が食い込むほど強く手を握りしめながらまくし立てていく。
「……それは、分かってる。だからこれはただの自己満足。何もできなかった昔とは違って今は頼れる、そして支えてくれる友達がいるんだ」
白は嗚咽を漏らしながら泣いている香織を自身の胸に押し当て、優しく頭を撫でる。
「だからたとえそれが自己満足でも、できる限りのことはやってあげたいんだ」
「ごめんね……白ちゃん。ごめんね……あの時、助けて……あげられなくて。……ごめんね……」
「もう過ぎたことだよ。それと、香織に罪悪感を持ったまま一緒にいて欲しくないんだ。普通の幼馴染、友達としていて欲しい。もちろん、桜姉さんも罪悪感を持たないでいて欲しいんだけどね……」
☆☆☆
「………………白ちゃん」
荷解きが一区切りついたため、桜だけ様子を見に戻ってきていた。
ドアノブに手をかけて中に入ろうとしたとき、香織の大きな声が聞こえたため、とっさに手を離し、壁に背を預けて話を聞いていた。
「ダメだよ……白ちゃん。こんな私を許しちゃ……。あの時、私が言うことを聞いていれば……我儘言わないで白ちゃんを守っていればあんな事にならなかったんだから……。私が……私が白ちゃんを追い込んだも同然なんだから……」
服の裾を握りしめ、血が滲むほど強く下唇を噛み、何かを堪えるようにしている桜。
結局、そのまま中に入ることはなく、壁から背を離し、エレナの手伝いをしに戻っていった。
☆☆☆
あれからしばらく白の胸で泣いていた香織は、落ち着いたようで、顔をうつむかせたまま白から離れる。
「恥ずかしいよ……」
「香織があんなに感情を表に出すなんて珍しいね」
「もう、忘れて……」
桜はテイッシュを手に取り、涙を拭き、また一枚取り出して鼻をかむ。
「もう、大丈夫?」
「……うん」
「そっか」
顔を上げて白に笑いかけた香織の顔は、目元が赤く腫れていて、浮かべた笑みもぎこちなかったが、白はそれを笑うことはなかった。
「顔でも洗っておいで。そろそろ美花がくると思うから」
「うん、そうしてくる」
そういって洗面所に向かう香織。
廊下に水滴が落ちていることには気づかなかった……。
香織が顔を洗いに向かってすぐ、インターホンが鳴る。
白が玄関のドアを開けると、買い物袋を手に提げた美花が立っていた。
「白さん、これで大丈夫?」
「ん、ありがと。それと親に許可、取ってきた?」
「うん、問題ないよ」
美花が荷物を持ちながらリビングへと向かう。
テーブルの上に買った食材を出して並べていき、足りないものがないか確認していく。
「まあ、美花に頼んどけば間違いはないか。……それで、いくらだった?」
「あ、お母さんがご馳走になるんだったらそれぐらい出しなさいって言ってお金貰ったから大丈夫だよ」
「いくらだった?」
「あ、あの……白さん?」
「いくらだった?」
「お、お金の方は大丈夫……」
「…………」
「えっと…………ご馳走になります」
粘った美花だったが、最後は根負けして財布からレシートを取り出し、白に手渡す。
「うぅ……お母さんになんて言っとこう……」
「安心しなよ。ちゃんと働いて貰うから」
白からお金を受け取りながら、根負けしたことを悔しがっている美花に、白はニッコリと笑みを浮かべながら言う。
「……な、何でしょうか」
その笑みに怯えながらも内容を尋ねる美花。
「迎えの家に言って引っ越しの荷解き、手伝ってきて。桜姉さんと葵、優斗もいるから」
「そ、それくらいなら……」
「これで言い訳、出来たでしょ?」
手を振って美花を見送る白。
美花がリビングを出て、向かいの家に向かってからしばらくして、香織が戻ってくる。
「材料も揃ったし、作り始めようか」
「……うん」
まだ香織のテンションは低いままだったが、2人はキッチンに立ち、料理を作り始める。
☆☆☆
「…………」
「…………」
白と香織が料理を作り始めた頃。
エレナの家では美花とエレナが向き合ったまま固まっていた。
「…………」
そして桜も心ここに在らずといった様子でいながら荷解きをしている。
そんな状況で葵と優斗はまず、エレナと美花の方を優先することにした。
桜の方は長引くと判断したからである。
「エレナ、軽く紹介するよ。彼女は私たちと同じクラスの篠宮美花だ。恐らく、白が困ったときに頼れる人は多いほうがいいだろうと、呼んだと思う」
「は、初めまして」
本来、エレナは軽い人見知りである。
白たちと打ち解けられたのは状況と流れによるものが大きかった。
あとはエレナ自身、気づいていないが、白と話すときだけ肩の力が抜けている。
そして今、初めて会う美花と対面して緊張している。
「美花。彼女はエレナ・フィナーシャだ。俺たちも昨日、知り合ったばかりだが、困ってるのを見かけたら助けてやって欲しい」
「よ、よろしくお願いします……」
今でこそ美花も、学校のみんなと普通に話が出来ているが、昔、人見知りであったため、今でも知らない人と話をするときは固くなってしまう。
エレナには葵、美花には優斗がついて落ち着けるようにしている。
「さっきも言ったと思うけどエレナ。美花は白が困ったときに頼れる人が多い方がいいと思って呼んだと思うから、そんなに緊張しなくてもいいぞ」
「は、はい」
葵にそう言われても、すぐに解決する問題ではないため、肩に力が入っている。返事も若干、声がうわずっている。
「美花もそんなに緊張しなくて大丈夫だって」
「で、でも優斗さん」
「言いたいことは分かるけど、こればっかりは慣れるしかないもんな……。やっぱりすぐにじゃなくて時間をかけるしかないか。このままじゃ荷解きも進まないし」
一向に肩の力が抜けない2人に時間ばかりが過ぎていくと判断した葵と優斗は今すぐに少しでも慣れさせることをやめ、時間をかけてゆっくりと慣れさせる方向へと変えた。
一応は話をしやすいように美花とエレナを一緒の部屋で作業させるようにし、補助のために葵がついて作業を進めることになった。優斗はいまだ上の空でいながら作業している桜のほうにつくことになった。
「あ、あの、桜さん。どうかしましたか?」
「……大丈夫だよ」
優斗が桜に話しかけてもそう答えるだけで終わってしまう。
「…………」
こりゃ困ったな、と思いながらも、優斗は桜の近くで荷解きを始める。
時間を空けながらも何回か桜に話しかける優斗だったが、毎回同じ答えが返ってきてどうにも出来ない状況でいた。
「……桜さん。もしかして白のことですか?」
「………………」
いままで尋ねるだけでいた優斗だったが、カマをかけてみることにした。すると見事に白の名前に反応する桜。
「俺と葵が白と一緒にいるようになったのは中学からです。それ以前に白に何があったのかいままで触れてきませんでした。桜さんの今の状態と白の過去が関係して何か話しにくいことがあるならば深くは聞きません」
誰にでも触れられたくないことは存在する。だから優斗は探り探り、ギリギリのラインを見極めながら言葉を紡ぎだしていく。
「……大丈夫だよ。これは私の問題だから。心配かけてごめんね」
そう言って微笑む桜の表情は悲しそうだったが、優斗はそれ以上に深く聞くことをやめ、荷解きに専念する。
「気を使ってくれてありがとう、優斗。荷解きが終わるまでには持ち直すように頑張るから……」
背を向けたまま話す桜。
優斗にはその背中がとても小さく見えた。
異世界ヤンデレ物語と載せてっちゃったからストックがないや(もともと)
まあ、不定期更新だけど早く載せられるように頑張るよ!(口だけ)
ってことでまた次回〜