5話
学年末テスト、終わった……!
赤点は多分ない!
ってことで物語スタート!
「ん~、疲れた」
「いや、白はずっと寝ていただろ」
無駄に長いあの校長の話がある始業式が終わり、教室に戻った白がイスに座ったまま伸びをしてそう言うと、すかさず優斗がつっこみを入れる。
「ここから講堂って結構離れていると思わない? 片道だけでも結構疲れるんだよね」
「それはしょうがないとしか言えない……か?」
白の言い分に納得して頷こうとしていた葵だったが、ふと疑問に思い首をかしげる。
「みんな、帰る支度は終わった? まだ10分あるけど、帰る支度はやっておいてね」
「もう帰れるのか。……そういえば昼はどうしようか。葵はどうするんだ?」
鈴の話を聞き、まだ帰る支度を終えていない何人かのクラスメイトたちが自身の席に戻り、忘れ物がないかの確認をする。といっても今日は特に何も持ってくるものがないため、忘れ物をする。なんてことはほぼ無い。
「そうだな……1回、家に帰って昼を食べ、着替えてから向かってもいいが、その時間がもったいないな」
「2人とも、着替えなら家に置いてあるんだからそのまま家に来て、昼も食べればいいじゃないか。そしてそのまま手伝いに行けばいい」
「んじゃ、そーする」
「私もそうすることにする」
話が終わり、白が体勢を整えて寝ようとしたところでチャイムが鳴る。
「明日は身体測定があるから、体操着を忘れないようにね。……それじゃ綾瀬さん。号令をお願い」
「はい。……起立。気をつけ。礼」
現在の時刻は10時半を少し過ぎたころ。
午後いっぱい丸々空いているため、このままどこか遊びに行こうかという話題がちらほらと聞こえる。
「それじゃみんな、また明日な」
「また明日」
「またねー」
すでに今日やることが決まっている白たちは挨拶もそこそこに教室を出て、待ち合わせの場所へと向かう。
「ん~、やっぱり俺たちのクラスが終わるの1番早いか」
「そうだろうな。鈴先生は……まあ、少しアレな部分がないこともないが、普段はキチットしているからな」
朝決めた待ち合わせの場所の木に着いたが、そこにはまだ誰の姿もなく、白たちが1番だった。そしてまだ、白たちのクラスしか終わっていないため、校門付近にいるのも白たち3人だけである。
白たちのクラスメイトは教室で話をしていたり、ほかのクラスの友達を待ったりしていて、昇降口に人影は見えない。
「ふぁ……ん。眠い」
「できれば家までは頑張って起きていてくれ」
「頑張りたいけど……無理」
日傘を差したままボーっと突っ立っていた白の目が半分閉じかけ、いまにも眠って地面に倒れてしまいそうだった。
「それならば白。桜が満開でいい感じに日陰ができている寝床がそこにあるからねたらいい。桜さんたちが来たら起こしてあげるから」
「ん~……桜姉さんと香織はきたっぽいよ。エレナがまだだから葵の言ったとおり、そこで寝る事にするよ」
そう言って白は日傘を閉じ、待ち合わせ場所と決めた桜の木の幹に背を預けて気持ちよさそうな顔をしながら眠りにつく。
「あれ? 白ちゃん、寝ちゃったの?」
「はい。なんだか疲れたみたいで」
「久しぶりの学校だったもんね~。後はエレナちゃんだけだね~。たぶん、私たちより話すこと多いから遅くなると思うよ~」
そう言って昇降口に目を向ける香織。
あれから、ホームルームが終わったクラスが増えていき、生徒の姿がちらほらと見えている。
見知った顔に4人は手を振りながらエレナを待つ。
10分ほど経ったころ、重そうにカバンを持ちながらやってくるエレナの姿が見える。
「お、お待たせしました」
「気にしなくていいよ。そんなに急いでいるわけでもないし、ここでのんびりとしている人もいるから」
そして、それじゃ行こうか。と続けた優斗はカバンを葵に預け、寝ている白を起こさないように背負い、日傘を差して歩き出す。
優斗たち二年生、三年生は慣れて光景だが、今日初めて見る一年生からしてみたら不思議で、興味の対象であり、視線が集まるのも仕方のないことだ。
「あ、あの。毎日帰りはこんな感じなのですか?」
「毎日……ってわけじゃないけど、よくあることだな。白が自分の足で帰ることのほうが珍しいと思う」
「なあ、優斗。あのことについてだけどどうする? 白が寝ているならまた今度にするか?」
「あー、そう言えばどうするかなー」
葵の話すないように、何も知らないエレナは首をかしげる。
「優斗に葵ちゃん。白ちゃんが寝ていても別にいいんじゃない? 聞いちゃっても」
「それもそうですね。……なあ、エレナ」
「は、はい」
いきなり話を振られたエレナは緊張して背筋を伸ばす。
「今日、この後の予定いて何かある?」
「えっと、まだ終わっていないに解きをする予定です」
それが先ほどまでの話とどう繋がるのか分からないエレナの頭の中は疑問符でいっぱいだ。
そんなエレナの様子に気がついているが、優斗はまあいいか。と思い、そのまま話を進める。
「迷惑とかじゃなかったらでいいんだけど、荷解き手伝ってもいいか?」
「め、迷惑じゃないです! すごい嬉しいです!」
「お、おう。それはよかった」
「あ、……すいません」
大きな声を出しながら優斗に詰め寄るエレナ。あまりの迫力に気圧された優斗は頬を引きつらせながらもなんとか返す。
それに気付いたエレナは優斗から離れ、頭を下げる。
「いや、気にしなくてもいいよ。少し驚いただけだから。俺と葵、香織さんは白の家で昼を食べる予定だけど、エレナは今日の昼、どうするんだ?」
「えっと、冷蔵庫の中にある材料で何か作るか、カップ麺ですかね」
「ならエレナちゃん。私たちと一緒に食べたらいいよ」
「えっと……」
「一人分増えたくらいじゃそんなに労力も変わらないし、大勢で食べたほうが楽しいでしょ?」
桜にそう言われ、まだ少し迷っていたようだが、しばらくして申し訳なさそうにしながらも、でも嬉しそうな雰囲気を滲ませながら頷く。
「あの、お願いします」
「うんうん。大勢で食べるのはいいことだよ! ……あ、エレナちゃんの好きな食べ物って何かな?」
「好きな食べ物ですか? えっと……ボルシチ、です」
「ボルシチって確かロシアの料理だったっけ?」
桜が会話の流れからさり気なくエレナの好きな食べ物を聞き出す。
そこから優斗が話を膨らませ、エレナについて聞いていく。
「はい。お母さんがロシア人なんです。ここに引っ越す前はロシアに住んでいました」
「私は海外に行ったことがないからな。写真やテレビなどで見たことがないから……一度は行ってみたいものだ」
「そうなんですか? ロシアはちょっと寒いですけど、街並みとか綺麗ですよ。私はロシアも好きですけど、日本も好きです。過ごしやすい気候で、季節によって景色が変わるって素晴らしいです」
食べ物の話から国、景色の話へと変わっていく。
「いまさらだけどエレナちゃん、日本語上手だよね~」
「昔、ママが日本で長く仕事をする時期があったので、5年くらい日本に住んでいたんですよ。そのときに住んでいた家もここから近いと思います」
「そうだったんだ~……んん?」
納得のいく答えだったのか、頷いていた香織だったがふと首をかしげて何かを思い出そうとしているのか、あれ~? などと言いながら人差し指を立てて円を描くようにクルクルと回している。
「どうかしたの?」
「何か思い出せそうだったんだけど~……思い出せないからいっか~。あ、もうそろそろだ~」
思い出すことを香織は諦め、もうすぐそこに見える九々里家に鍵を持っていないのに走って行ってしまう。
「エレナちゃんはこのまま食べる? それとも一回、家に帰って着替えてからにする?」
「なら、着替えてからでもいいですか?」
「そういうことなら、玄関の鍵は開けておくから着替えたら勝手に入ってきていいからね」
桜はそれだけ言うと、家の前でこちらを向いて早く~と言いながら手を振っている香織のために、小走りで向かって鍵を開け、中に入っていく。
「エレナ、ちゃんと家の戸締りはしてから来るんだよ?」
「はい、大丈夫です」
優斗たちも家の前までたどり着く。
外にいても家の中から聞こえてくる桜と香織の声に、3人は顔を合わせて苦笑いをする。
「それじゃ、また後で」
「はい。すぐに行きます」
「慌てなくてもいいからな」
エレナと分かれ、家の中へと入っていく優斗と葵。
それを見送ってからエレナも着替えるために自身の家へと入っていく。
☆☆☆
「お、お邪魔します」
「あー、あと少しで出来るから、手洗いうがいしてからおいでー」
「分かりました」
着替えを終え、戸締りをしっかりと確認したエレナは九々里家のドアを恐る恐る開けて入っていく。
奥から優斗の声とともにエレナの鼻をくすぐるいい匂いが漂ってくる。腹の虫がキューっと音を立てて鳴り、エレナは頬を赤らめながら急いで手を洗うために洗面台へと向かう。
「あ、白さん。おはようございます」
「んー、おはよ」
「あの、私はどこに座ればいいですか?」
「どこでもいいよ~」
手を洗い、リビングにきたエレナは、目が合った白に挨拶をする。そして自分はどこに座ればいいのか分からないため尋ねる。
その質問には、タイミングよく料理を運んできた香織が答える。
「あ、ありがとうございます」
「もう少しだけ待っててね~」
「は、はい」
どこでもいい。と言われたエレナは白の向かいのイスに座り……勢いよく立ち上がる。
「わ、私も手伝います!」
「あー、大丈夫だよエレナ。もう出来上がって優斗たちが運んでくるから」
「そうそう。その気持ちだけでも嬉しいよ。どこかの誰かさんはその気持ちすらなくイスに座ってグータラしているからね」
手伝いに行こうとしていたエレナを白が止める。
何か言いたげな顔をして白のほうへ振り返るエレナの後ろから、両手に皿を持った優斗が声をかける。
「……今日の夜から頑張るし」
「はいはい。期待しているよ」
どこかの誰かさんであるグータラさんが少し拗ねた風を見せながら言い返すも、優斗には軽く流される。
「ごめんね、エレナちゃん。作り置きのカレーで。……あ、今更だけど嫌いな食べ物とかあったりする?」
「私、2日目のカレーとか大好きです! 嫌いな食べ物は特にない、ですね」
「そっか、なら大丈夫だね。食べようか」
手を合わせ、食べ始める。
「ああ、エレナ。昼を食べた後、桜姉さん、優斗、葵が手伝うってことだけど、俺と香織はやることあるから手伝えないから。それと優斗か葵のどちらかを少しの時間借りるかもしれない」
「あ、あの。用事があるならそちらを優先してもらっても……。私のほうはいつでも出来ますので」
「ちょっとした買出しだから気にしなくていいよ」
「そうそう。エレナは気にしなくていいよ。むしろ白のほうが少しは気を使えっての」
「そんなもの、今更じゃないか」
白は正面に座るエレナに昼食を食べた後についてのことを話し始める。
横から優斗が不満そうな顔をしながら口を挟むが、お互いに冗談だと分かっているため、目と目が合ったときに軽く笑いあってその場は流れる。
「エレナの母さんって今日はいつ帰ってくるんだ?」
「今日はもともと荷解きをする予定だったので、ママは昼には帰っているはずだったんですけど、仕事が入って15時ぐらいになると連絡がありました」
「ん、分かった。ありがとう」
聞くだけ聞いた白は3分の2ほど残ったカレーを食べ進めていく。
エレナも質問をされて止めていたスプーンを再び動かして半分以下まで減っていたカレーを口へと運んでいく。
「エレナちゃん、おかわりもあるから遠慮しないで言ってね?」
「は、はい。ありがとうございます」
すでに食べ終え、コップに水のおかわりを注いでいた桜がエレナに優しく微笑みながら言う。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「おかわりはいいの?」
「はい、大丈夫です」
エレナはスプーンを置く。
米粒一つ残さず、綺麗に食べられている。
「あ、そういえばエレナ。今日の夜とか予定、空いてる?」
マイペースにゆっくりと食べ進めていた白の皿には、まだ3分の1ほどカレーが残っているが、スプーンを置き、水を少し口に含んでからまたエレナに尋ねる。
「今日の夜、ですか? ええと……確か何もなかったはずですけど」
「それはよかった。エレナの母さんにも夜は予定を空けといてと伝えてくれ」
「はい、分かりましたけど……どうしてですか?」
素直に頷くエレナだが、ここまで聞かれると誰もが思い至る疑問を白にぶつける。
そんな質問に白は。
「母さんが……あ、エレナのじゃなくて俺と桜姉さんのな? 一度、ちゃんと挨拶をしておきたいって。昨日は帰ってきたとき夜遅かったから」
「分かりました。ママに伝えておきますね」
特に疑うこともなく、信じたエレナ。
こんな簡単に信じて少し心配になる白たち。だが、いまここでそのことについて注意をすると、先の発言に突っ込まれるかもしれないので黙っている。
「ああ、俺のことは気にせずに荷解き、始めていていいよ」
「まあ、それもそうだな。白はこっちサイドじゃないから。……それじゃエレナ。行こうか」
すでに食べ終えて水を飲みながらゆっくりしていた優斗が、葵とエレナの食器を流しへと運ぶ。
「あ、ありがとうございます」
「気にするなって。それじゃ、桜さんもゆっくりでいいですよ」
「私も食べたらすぐ行くから」
「分かりました」
ある程度進めておくために、優斗と葵、エレナの3人は先に荷解きを始めるために向かう。
「…………」
「…………」
「…………」
優斗たち3人がリビングから姿を消した後、残った白たち3人は特に話をするわけでもなく、黙々とカレーを食べ進めていく。
そしてすぐに桜の皿が空になる。
空になった皿を流しに出して戻ってきた桜は心配そうな顔をしながら白に声をかける。
「あまり、無理しないでね?」
「大丈夫。香織が見張ってるから」
「何かあったらすぐに呼んでね?」
それだけ言って桜も手伝いに向かうため、リビングから出て行くが、出て行く前に一度、白を振り返り見るが、結局は何も言わずに行ってしまう。
今回、早かったのって実は前回載せた時にはすでに9割がた出来てたからなんだよね…
ま、気にせずいこーや
このまま『異世界ヤンデレ物語』書いてくるか
ってことでまた次回ー