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1話

いやー、のんびりとしたものを書けるって素晴らしいねぇ…

ってことで物語スタート!

「白! いい加減起きろ!」

「白ちゃん、起きなきゃ遅刻しちゃうよ!」

「優斗、桜さん。もう時間が無い。パジャマのままだが、優斗が白を背負って私と桜さんで荷物を持って学校に行くぞ!」


 ここはくく家。白の部屋。

 そこでは今、姉である桜、中学からの付き合いで親友の優斗と葵の3人で、いまだ布団でぐっすりと寝ている白を起こそうとしていた。

 昨日は夕食を食べ、歩いて5分ほどで帰れる香織は家に帰り、優斗と葵の2人はそのまま泊まっていった。

 時計の針は8時10分を指していた。歩いて学校まで20分はかかるため、今から家を出ても走っていかなければならない時間だ。


「相変わらず、見た目を裏切る軽さだなっと!」


 優斗が葵に手伝って貰いながら、白を背負う。

 葵は白のカバンを。桜は白の制服を持って学校へと向かうため、家を出る。


「あれ? 香織がいない?」


 学校に行く途中に香織の家がある。

 いつもは家の前で笑いながら待っている香織の姿が今日は見えなかった。


「……なあ、葵。桜さん」

「……みなまで言うな」

「もしかしたら香織も寝坊なのかもしれないな」

「「…………」」


 葵が止めたにもかかわらず、気にせずに桜が言ってしまう。

 そして香織の家の前まで来た3人はそこで立ち止まる。


「……先に行ったのかもしれないけど、一応鳴らすよ?」

「「……はい」」


 恐る恐る、桜が指を伸ばし……インターホンを鳴らす。

 すると……。


「あれ~? みんなしてどうしたの~?」


 インターホンから香織の声が。


「どうしたのじゃない! 今日学校でしょ! 早く着替えてきなさい!」

「ん~? ちょっと待っててね~」


 桜の慌てた声に、香織は不思議そうな声を漏らす。そして家の中からトタトタと音がして、玄関の扉が開き香織が姿を見せる。……私服姿を。


「香織さん! 遅刻しちゃいますよ!」

「んん~? 今日、学校休みだよ~?」

「「「………………え?」」」

「今日は入学式で、明日が始業式だよ?」

「「「…………」」」


 焦っていた桜、優斗、葵の3人はそれを聞いて黙り込んでしまう。


「……上がっていく?」

「「「……お邪魔します」」」


 香織からの提案をありがたく受け取り、お邪魔することにした。


「白ちゃんは私のベッドに寝かしておいてね?」

「あ、分かりました」


 遊びに行ったり遊びに来たり。優斗は自分の家のように白を背負って階段を上り、香織の部屋に入ってベッドに白を寝かせる。

 その間に桜と葵は香織と共にリビングへ行き、麦茶を貰う。


「それにしても、桜ちゃんと葵ちゃんが間違えるなんて珍しいね~」

「恥ずかしい……」

「私も恥ずかしいです……」


 香織にニコニコした顔でそう言われ、顔を赤くする桜と葵。


「二人とも、顔を赤くしてどうしたん? ……ああ、なんとなく分かったわ」


 白をベッドに寝かせた優斗がリビングに来たとき、顔を赤くしている二人を見て首をかしげたが、視線を移してニコニコしている香織を見て、納得する。


「あ、香織さん。俺も麦茶、貰っていいですか?」

「いいよ~。いつものところにあるから~」

「分かりました」


 キッチンに移動した優斗は、棚から優斗専用のコップを取り出し、冷蔵庫から麦茶を出して注いでいく。

 専用のコップがあるのは、よく泊まったりもするため、くく家、人氏ひとうじ家、村雨むらさめ家、月永つきなが家それぞれの家に、専用のコップと箸が置いてあるのだ。

 優斗が麦茶を注ぎ、リビングに戻ってイスに座ると香織が話しを切り出す。


「それで、どうしたの~? 優斗くんまで間違えるなんて~」

「いやはや。今日は月曜日じゃないですか? 去年、俺と葵、白は入学式があったんで今年はそれが出ちゃいましたかね~」


 優斗が恥ずかしいのか頬を指でかきながら答える。


「なら、桜ちゃんは~?」

「私は去年、白ちゃんと一緒に行ったから……」

「そういえば、去年はそんなこと言っていたね~」


 ポムと手のひらを合わせ、にへらと笑う香織。


「今日は何しようか~?」

「そういえば今日、暇になったんだよな……」

「何も予定立ててなかったよね……」

「こういうとき、白が羨ましい……」


 今日は始業式で午前中が学校でつぶれると考えていた3人。

 急に暇になり、特になにもやることが思いつかず、香織の部屋で寝ている白を羨ましそうに思っている。


「そういえば、香織は何する予定だったの?」

「ん~? 私~?」


 人差し指を額に当て、悩み始める香織。


「ん~とね~。外に出てブラブラして~、本屋にでも立ち寄ってブラブラして~、デパートに行って服を見ながらブラブラ~?」

「……香織さんも予定、無かったんですね」


 ホッと息を漏らす葵。

 そして4人で今日一日どうするか、考え始める。


「……何も思いつかない」

「いつもは何かしら思いつくのに」

「私も何するか案が浮かんでこないです……」

「私もだよ~」


 腕を組んだり、こめかみを揉み解したりしているが、何も案が出てこない4人。


「……もう、いつも通りにトランプしながら話しましょうか」

「そうだな……」

「他にやることないもんね~」

「トランプ、取ってくるね」


 葵の意見に誰も反対するものはいなかった。

 桜はトランプを取りにイスから立ち上がり、少し離れたところにある引き出しを開けてトランプを取り出す。


「そういえば、何やるの?」

「ん~、大富豪かババ抜きかなぁ~?」

「話しながらならババ抜きのほうがいいと思います」

「なら桜さん。ババ抜きで」

「はいはい~」


 イスに座り、カードを箱から取り出してババを一枚取り除き、慣れた手つきで混ぜていく。

 4人はカードが配り終えたので手に取り、準備を進める。


「そういえば何話しましょう?」

「無難に今年入ってくる新入生のこととかでもいいんじゃない?」


 揃っているカードをテーブルの中央に出していきながら話題を決めていく。

 よく混ざっているため、揃ったのは多くても3ペア。3人の手札はまだまだ残っている。


「それじゃ香織さんからで」

「は~い」


 順番は香織→優斗→葵→桜→香織……、といった具合だ。自分の一つ前の人から抜いていくため、最初は香織が桜から一枚取る。


「ん~、揃わないかぁ~」

「なら、俺っすね」


 優斗が香織からカードを一枚抜き取る。


「今年入ってくる一年生。面白い子とかいますかねぇ……お。揃った」


 話をしながら揃ったカードをテーブルに出し、葵が取りやすいようにカードを向ける。


「どうだろうな。面白い子が入ったとしてどうするつもりだ? ……私も揃った」


 葵もテーブルにカードを出し、桜に向ける。


「優斗のことだから面白い子よりも可愛い子を探すんじゃないの? ……揃わないなぁ」

「あ、私もそう思う~……やっと揃った~」


 順調にカードを減らしていく。

 そしてカードは香織が残り1枚。葵が残り2枚となった。


「ん~……こっち、かな~?」


 特に考えもせず、香織から見て右。葵から見て左のカードを取る。

 そして……。


「お~。あがり~」

「……負けた」


 香織の手にはハートの2とスペードの2。葵の手にはジョーカーが。


「もう1回、やる?」

「そうですね~。後3、4回やればお昼の時間になりますし」


 時計は9時半を過ぎていた。

 話しながらゆっくりとやっていたため、通常よりも時間がかかるのだ。


「突然ですけど、桜さんと香織さんは部活とかやらないのですか?」


 最下位の葵から今度はスタートする。


「部活かぁ~。堅いのって好きじゃないんだよね」

「私も~。のんびりゆるゆるとが1番だよ~」


 葵、桜、香織と立て続けにカードが揃っていく。


「そういう葵こそ入らないのか?」

「私は家のことがあるからな……こうして遊んでいられるのも白のおかげだが」


 優斗はペアが揃わず、葵も揃わなかった。


「そうだね。白ちゃん、普段はあんなだけどやるときはやってくれるもんね」

「私も白ちゃんには恩がたくさんあるよ~」

「俺もですね。白は何を考えているか分からないですけど、一緒にいて楽しいですし」

「そうだな。ほんと何を考えているのか分からない奴だ」


 4人は一度、手を止める。

 そして天井を見上げ、そこで寝ているであろう白の姿を想像する。


「何の話?」

「「「「おおぅ!?」」」」


 いきなりリビングの扉が開き、話の中心だった白が姿を現す。

 まだ寝ていると思っていた4人は白について話していたこともあり、驚きの声を隠せないでいた。

 ……驚いた際に、4人が4人とも膝をテーブルの下にぶつけて悶えている。


「……香織。甘いもの何かある?」

「あ、うん。甘いもの……アイスが確か、あったはずだよ~」

「それ、貰うね」

「うん。いいよ~」


 白はキッチンに移動し、冷凍庫からアイスを探す。

 4人は顔を寄せ合い、白に聞こえないよう小声で話し始める。


「いきなり起きてくるなんてな」

「私、びっくりしたよ~」

「私もです」

「白ちゃん、昨日寝たの早かったっけ?」

「確か、白が寝たのは……23時くらいだったかな?」

「今は10時だから……お腹が空いて目が覚めたのかな?」

「その線が1番濃いですね」


 ある程度話したら姿勢を戻し、ババ抜きを再開させる。

 すぐにキッチンからリビングに白が戻ってくる。手にはチョコ味のアイスを持って。

 そのまま優斗たちのそばを通り過ぎ、ソファーに座り、アイスを口に含む。


「あ……そういえば4人で何してたの?」

「……1番に気になるところはそこ?」

「…………ん?」


 優斗にそう言われ、周りを見回す白。


「何が他に気になるんだ?」

「パジャマのままとかここが香織さんの家とかだ」


 やれやれといった感じで額に手を当てながら顔を数回横に振る葵。

 それを聞いて白はん~? と首をかしげ。


「なんで俺、香織の家にいるんだ?」

「白ちゃん、寝てたもんね~」


 4人は苦笑するしかない。


「ん~……桜姉さん、優斗、葵が勘違いでもしたか?」

「よく分かったな……」

「だって、3人とも制服だし。香織は私服だから」

「あー……そういえばそうだったな」


 言い当てられ、驚く4人だったが、条件が一緒ならばほとんどの人が分かるであろう。簡単なことだった。


「昼食べたらまた、おれ里家のいえに戻るぞ」

「そうだな。いつまでも制服のままでいるのもあれだし」

「昼は……総合で最下位のやつが作ればいいか。香織と俺を除いて」


 何か言いたげな3人だったが、香織だけでなく、白も除かれている理由に気づいたので黙っている。


「どうして白も除くんだ?」


 いや、優斗が分からないために口を開く。


「俺は休みだからゆっくり寝ていた。学校があると勘違いしてここまで運んだのは誰ふぁ~ぁ」

「……そうだったな」


 白は最後までセリフが持たず、あくびをする。

 手にはもう、アイスはなく当たりとかかれた棒だけが残っていた。


「俺はまた寝るから、昼飯できたら起こしてくれ。……この当たり棒、洗って流しに置いておくから」


 そう言って一度キッチンに行った後、リビングから出て再び香織のベッドへと眠りに行ってしまった。

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