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俺大人、アルバイトはJK






ただいま夜の7時。 外もだいぶ気温が下がり過ごしやすい室内となっております。 なんせ、小型の扇風機が一台柱の上に設置してあるだけなのでね。 日中はもはやセルフサウナな訳ですよ。 なに? エアコンでも設置したら? ふっふっふ、エコだよECO。 第一そんな金があるとでも? いやあるわけがない。




「てんちょー。 期限チェックしましたか?」

「ああ…… 8割くらいは」

「もー。 まーた中途半端に放り投げて! どうせ私にさせるつもりだったんでしょ!」

「流石は紫乃ちゃん。分かってるな、ではよろしく頼むぞ」



俺はそう言って、リストを手渡す。「もー!」などと言いながらもしっかりやってくれるので出来たアルバイトである。 そして俺は出来てない店長である。 でも大丈夫、店長だから。 見えない所で頑張るのが俺が思い描く店長だから。



それにしても…… 誰も来ねぇな。 まぁド田舎であり高齢者の多い所だからな。 みんな家でホカホカご飯を食べてんだろ。あったかいベッドで眠るんだろな。 でんぐり返しでバイ、バイ、バイなんだろ? そうだと言ってみろ!



「……てんちょー。 なんだか顔、怖いですよ?」

「……お尻を出した子は一等賞なのか?」

「セクハラです」



ですよね〜。分かってましたけどね〜。 いかんいかん、暇すぎてくだらないことしか考えられん。 客よ来い! そして願わくば俺の人生の春よ来い! え、可愛いJKが目の前にいるだと? 甘いな、俺の心臓はガラス製のノミのハートだぜ? 拒否られただけでズタボロなるわい!




「はぁ。 それより店長、この前の話考えてくれましたか?」

「この前? あぁ…… あれだろ? なんで私はこんな可愛いのに彼氏が出来ないの? ねぇなんで! ……って話だろ?」

「……ふふっ。店長、よく今まで警察のお世話になりませんでしたねぇ」

「だろ? もっと褒めていいぞ」

「褒めてません。 ……もう。 この店の名物を作りましょ、って話ですよ!」




ああ、そんなこと言ってたか。 いや…… 本当に言っていたのか? 人間は思い込むとそこから抜け出すのは苦手な生き物だ。 上手くこいつの口車に乗せられては年上としてメンツが立たない。 しかし言ってた気もするのは事実、でも俺は店長だし。 この店の方針をJKなどに決められたらホント俺何のためにここに居るの状態になるし。 いらん子呼ばわりされちゃうし。 それはやだよ、切実に。



「あー。 俺が! 提案したやつなぁ。 もちろんだ、なんてったって俺が! 言い出したんだからなぁ。 色々考えてはいるぞ?」

「そうなんですか⁉︎ いやぁ、てっきり店長の事だからノープランかと思ってました。 それで、どんなものを考えたんですか?」





ぐぬっ。無意識なのか気付いてやってんのか知らないが、こう言う時はとことん空気読まねぇな。 分かれよ、察しろよ! 24の男が必死に合わせてるって察してくれよ! なんだよ名物って! こんなド田舎で24歳の男が店やってる時点でそこそこの名物になんだろ!




「まぁ、たとえばぁ。 か、かまぼこ?」

「……作れるんですか?」



はい、すみません作れません。 でもね、言い訳じゃないけど下の板みたいなのは作れるよ⁉︎ 誰か電ノコと平らな板を持って来い!今すぐお披露目してやるわい!



「後は…… あ! そうだよ、自慢じゃないけどアイロンがけは得意だぜ!」

「へぇ…… じゃ、クリーニング屋をやるとかですか?」

「寝言は寝て言え。ウチは商店だぞ、そんなサイドビジネス的なのできるか‼︎ それに俺、アイロンがけは得意だが色物と白いTシャツ一緒に洗うし! 洗剤入れて全自動だし!」




そこまで言うと、紫乃ちゃんはため息ついて頭を抱えた。 な、なんだよぉ。 ちょっとふざけただけじゃん。 そんなさぁ、本気で悩まなくてもよろしいじゃない。 べ、別にさぁ。 今のままでもやっていけるって! ライバル店なんて、ないんだしぃ?




「……淹れたてコーヒー。 肉まん、おでん、唐揚げ、フライドポテト、コピー機、ATM、お客様用トイレ…… 例を挙げればキリがないですけど。 ざっとこんなもんです、この店に無くて駅近くのコンビニにあるものは。 店長ならどちらに行きますか?」

「そりゃあコンビニだろ。近くて便利! がコンビニエンスストアの醍醐味だし」


「だからですよ! こんな田舎でもですね、遠くて便利な方に行く人も沢山いるんですよ! つまり、この店はいつ潰れてもおかしくはないんです! と言うか、正直生き残ってる方が奇跡に近いですよ!」

「奇跡に近い商店…… か。 良い褒め言葉だ、ワンモアプリーズ」

「褒めてません‼︎‼︎」





もー、うっさいなぁ。 なんだ、最近の若い子はカルシウム不足なのか? ……はっ! ごめんな、気づかなくて。 そうだよな、女の子って、男と違ってそういう日が、あるんだよな。 それは気づかなかった俺のミスだ、すまん!



「紫乃ちゃん。 ごめんな、俺のせいで……」

「分かってもらえましたか?」

「ああ。 ……そうだよな、これ以上君に迷惑はかけれないよな!(女の子の日って、大変だと聞くし‼︎)」



「店長……」 そう言って紫乃ちゃんは涙ぐんでしまった。 マズイ…… 相当負担になったか、俺が! なんか、なんかなんか言わんと…… そうだ!



「紫乃ちゃん、この店の名物はな……」

「はい……」

「ズバリ! アットホームさだ!」




瞬間、ポカンとしてしまった。 マジか、そんなに外したか! 上手いこと言えたと思うんだけどな。 個人的には10点満点の8点は取れたと思ってるんだが。


「……店長」

「はい、紫乃さん、なんでしょう?」

「店長って…… 正直、何が出来るんですか?」






グサッ。 マジで、か。 JKに言われちゃったよ、そこそこの大人が、女子高校生に戦力外通告食らっちまったよ。 やっべ、立ち直れないかも……



「や、やだなぁ。 売り上げとか、外注とか、そういうの俺がしてんだよ?」

「やり方教えてください。 多分ですけど、私にも出来ますから」



ズブブッ‼︎ お、おおふっ。 こ、今度はなかなか深いとこにグッサリ刺さったよぉ。 もはや削除だよ削除。 いらないからデリートしちゃおう宣言だよこれは。



「んん! と、とにかくだな。 そういう名物だのはいらない! ……と思う」

「なんでですか?」




な、なんでと言われましてもね。 いやぁ、まぁ、その。 な、なんと言いますかねぇ……紫乃ちゃんがどんな考えなのか知らないけどさぁ。 要するにですね。



「ウチはウチ、よそはよそ。 それにここは商店でコンビニじゃない。 そりゃ便利な方が良いに決まってるけども。 別に俺はそのコンビニに対抗したくてここを始めた訳ではないし」

「…… じゃあ、どんな理由ですか?」

「……商売、としては間違ってるのかもしれないけれど。 俺はここが、誰かにとっての休憩所になればいいと思ってる」




チビどもやその他諸々。 気軽に入れて、気軽に話せて。 心が落ち着くような空間。 それが俺の理想の店だ。 それが俺が好きだった空間だから。 便利な空間よりも、俺はそれを突き通したいんだ。




「……でも、このままじゃいずれはーー」

「んー。 まぁその時は本気だすよ」

「てんちょーは。 何が出来るんですか?」



ぐっは。 マジでJKの鋭い矢がグサグサ飛んでくるな。 な、何が出来る、ですか。 うーん……




(陸、意外とキスは上手いよね。他は微妙だけどねぇ)




その時、ふと真弓の言葉を思い出し、オブラートに包み隠さず、むしろ若干話を膨らませて言い放った。



「ふふん。 deepkiss…… かな」




すると。ため息つくと思っていたのになんでか知らんが若干顔を赤くし紫乃ちゃんは俯いた。 ん? なんだ、JKはまだ初々しいのか。 最近じゃキスぐらい小学生でもするぞ? by 大和&遊



「さ、流石は大人ですね」

「いや、別に高校生くらいならそれくらいするんじゃないか?」

「そ、そんなこと……」

「そうなん? 勿体無い、若いうちはまだまだ潤いがあるでしょうが」



そう言って、からかうように紫乃ちゃんの唇を触ってみた。 おお、思った以上に柔らかいな。 凄いな10代、俺なんてすでに若干潤い失ってんのによ。 くそ、なんか羨ましいぞ!





「きゅ、休憩貰いますから!」




顔真っ赤。 そして俺の手を思いっきり弾き(結構痛いぞこのやろう) 紫乃ちゃんはバタバタと店の裏へと走って行った。 なんなんだ、やはり女の子の日なのか。 そういう日は不安定になるのか? よし、ぜひ知りたいので神様来世は俺を女にチェンジ希望します。





「はーあ。 客、来ねぇなぁ……」




外を見ても、人っ子1人通らない。 暇やね、まぁいいけれど。 これがもはや当たり前のお店ですからねぇ。 それにしても……




「俺がキス上手いとか、広められたらどうしよう…… 恐らく真弓の勘違いなのに」






ガラス製のノミハートは、その事でハラハラドキドキしていた。 田舎は情報回るの、早いからなぁ……









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