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勇者をやめて冒険者になる。  作者: ミルハ
プロローグ
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プロローグ

ちまちま書いてきます

誰も理解してくれない世界なんていらない。


その日俺は遺書を書いた。

全部で原稿用紙一枚もいかなかった。親に対する謝罪と要望。もっと俺のことを理解して欲しかったこと。

以上だ。


俺を虐めていた同級生に対する恨み辛みを書き始めたら止まらなくなりそうだったのでやめた。

代わりに俺の情けなさを書き始めたがこちらも筆が止まらなくなったのでやめた。


書き上げた遺書を机の中にしまい、ハンガーに掛かった制服に手をかける。

久々となる登校を行うのだ。


「いってらっしゃい」と家を出るときに嬉しそうに笑った母親の表情に対して、引きつったように笑い返した。

「いってきます」



俺はしっかり笑えていただろうか。


ごめん母さん。


どんよりとした気分なはずなのに、外は照りつけるような太陽澄み切った青空が広がる。快晴だ。

小説やアニメのように自身の気分に合わせて、天候も変わればいいのに・・・なんて思いながら歩いていると赤信号にひっかかる。目の前を通り過ぎていく色とりどりの車。約60キロ程度の速度だろうか。

このまま前に足を踏み出せば、豆腐みたいに俺の体は潰れてくれるだろうか?

このまま前に倒れれば死ねるだろうか。


思考している間にも信号は切り替わってしまった。

鉛のように重くなっていく両足を交互に動かして見慣れた街並みを進んでいく。地元の駅に到着し、通勤ラッシュの電車の中へと吸い込まれていく。この感覚も今日が最後かと思うとどこか楽しめる気がしてくる・・・こともない。苦しいものは苦しい。湿気に包まれる電車内、隣の親父の髪の毛が俺の頬に少し当たる、気持ち悪い。

急行で幾駅か進むと、押し出されるように電車を降りる。まるでもう用済みだと言わんばかりの勢いだ。ゴミか何かを電車が吐き出しているかのようだ。実際俺は社会にとってゴミみたいな人間なのかもしれないな・・・。


駅から高校まではもう一本道だ。チラホラと同じ制服を来た生徒たちが目につく。どいつもこいつも幸せそうな顔をしている。死にそうな顔、死ぬ気の顔の奴は俺以外いないだろう。それもそうか・・・。

なるべく顔を伏せながら灰色になっていく通学路を歩く。いちに、いちに・・・。



なんとか最後まで歩くことができた。

次第に重くなっていく足は中々高校へと着くことが困難になっていった。正門にたどり着いたとき、丁度一限の授業が始まるチャイムがなった。

これは確実に遅刻だな。

今まで引きこもっていたクセに関係あるのかとも思い、気にしない事にした。


下駄箱で靴を履き替えようとした。

下駄箱に俺の上履きはなかった。捨てられたか・・・隠されたか。俺が引きこもっていたのは半年の間だ。半年も前のこと奴らは覚えてもないだろうから、俺の上履きはとうにどこかに消えてしまっていることだろう。

ひんやりとするが、靴下のまま廊下に立つ。床の熱が俺の体から決意や熱を奪っていってしまいそうだ。自身の心に問いかける。


―――いけるのか?


恐ろしいほど落ち着いていた。否、冷え切っていた。

俺のやるべきことは復讐じゃない。

俺のやることは一つの恣意行為だ。


責め立ててやるんだ。

貴様のせいだと。


お前が悪いんだ。

お前のせいで――――。



ひたひたと誰もいない廊下を歩き続ける。

通り過ぎる教室ではつまらなそうに授業を受けている生徒がほとんどだろう。何も問題なく過ごしている生徒が大半だろう。

しかしその中でも確実に苦しんでる人がいる。苦しませている人がいる。

それを知らしめなくてはいけない。




がらり。

3-Bと札の掛かった教室へ入る。ここが諸悪の根源である。いや、悪の芽の一部でしかないだろう。

いきなり入室してきたせいか、授業を受けていた生徒も授業を行っていた教師も一斉にこちらに目を向ける。悪意ではない、しかし疑惑・疑問の眼差し。中には俺が同級生である事に気がつく者もいるようだ。

しかし俺はそんな視線を気にすることなく教室の中央へと歩む。一歩一歩がひどく乾いた音を出しているように感じる。唇からは水分がなくなり、必死に唾液を喉に送ろうとするが上手くいかない。震える手は、若干汗ばむ。


教師はそんな俺を制止しようとするが俺は脇に持っていたカバンからひと振りのナイフを取り出す。

刃渡りは20センチほどのナイフだ。包丁と言ったほうが合っているかもしれない。右手に持ったナイフを持ち上げる。

ナイフは蛍光灯の光を反射しながら一直線に教師の喉元に向いた。

長く伸びた前髪で隠れた二つの瞳から怪しく光が漏れたように見えることだろう。


「―――動いたら刺す。喋っても刺す。」


それだけ発すると教師はその場から動かなくなった。教室からももう騒いだ声や、ひそひそと話す言葉は聞こえなくなった。視線はしっかりとナイフへ向き、時折俺へと視線を向ける。視線の中には恐怖・恐れ以外にも自分がどうにかしようだなんて思惑までありそうな意思を感じる。お前がどうにかしなきゃいけなかったのはもっと前の話だと言いたくなったが抑える。


生徒たちの方へと視線を向ける。

特に一番後ろ、中央列に何人かの集団がいた。典型的ないじめっ子、DQNと表現すればいいだろうか。自分たちは一番強い・自分たちほど面白いことをやってはいないと本気で思ってそうなやつらだ。

ナイフを向けると息を飲んだように目を見開く。

そんな怯えんなよ。クラスメイトだろうが。


俺は悠然と歩く。本当は震えて、怖くて、仕方ない。


俺は毅然と向かう。本当は逃げ出したい。


俺を虐めていたやつの前に立つ。髪の毛を茶色に染め上げ、オールバック風にしている。制服は着崩され、パーカーに制服を合わせていて、耳には洒落たピアスがついていた。


や、やめろと声がし、体は震えている。

俺をいじめていた時はあんなにも楽しそうな顔をしていたというのに自分が殺されそうになった途端にこの態度だ。

俺はゆっくりと奴の頬にナイフを這わせる。

そう、ゆっくりと―――傷をつける。頬からはタラリと赤い雫が垂れる。


以外にも簡単に切れるものなんだな。と素直に思った。その時から俺の中の恐れは消えていた。あんなに怖かった奴もナイフで脅されたらこんなものなんだと・・・。


「なぁ、覚えてるか?

―――昔、お前にナイフを突きつけられながら金をゆすられたよな?」


眼に涙を溜めた表情で奴は固まる。

はは、せいぜい震えてろ。


「まぁ、そんなことは俺にとってはどうでもいいんだよ。そんなことは・・・。」


さっと振り返り、クラスメイトに視線を戻す。悲鳴が少し聞こえたが、そんなものは気にする必要ない。クラスメイトに向けてナイフを突きつけながら一人の生徒へと視線を向ける。

そいつは教室の一番端に座っていた。髪の毛は目にかかるほどで少し太っている。お世辞にもイケメンとは言いづらく俺以上にいじめられてそうな奴だ。俺が教室に入ってきてから一度も顔を上げていない。小さく縮こまり、震えている。まるで何かから断罪されることを恐るかのようだ。

そんな男に向かって俺は語りかける。また手が震えてきた。かたかた揺れるナイフを男に突きつけ、そのまま続いて自分の首筋に当てる。

ひんやりとした感覚が首筋に伝わる。



「なぁ、村川…。どこで俺は間違えたのかな?――――お前を助けたときか?はは、助けるんじゃなかったな」


乾いた笑みを浮かべ、

両腕で支えたナイフを力いっぱい首元に押し付ける。そのまま肉を引きちぎるようにエグル―――。いtだいちあいだいいあいあいうはい。


ッ――――――――――――意識が飛びそうになる。


勢いよく飛び出した俺の血液は村川の方面へと飛び散りクラスメイト達に浴びせられる。教室中に悲鳴が飛び散り、俺はその場に倒れた。はは、はははははははは。苦しめ、苦しめば良いんだお前なんか―――――――――――――――。





^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


白い部屋――――。

ふと目が覚めると白い部屋だった。

自殺し損ねたかと思うと憂鬱であったが、すぐさまそれは否定された。後ろから陽気な声が掛かる。


「ふははは!こんな死に方する人間がいるなんて驚きだよ!!君すんごく面白いねっ、ぷ、ぷははは。何回思い出しても笑えちゃうよwwwwww」


ゲラゲラゲラwwwという表現がこれほど似合う笑い方も何だろうと思えるほど豪快に笑われる。姿は10歳前後の子供に見える。性別は上手く判別できない。幼稚園の制服に似た服装だ。頭には黄色い丸鍔の帽子をかぶっている。床を転げまわるように笑う児童を見ながら俺は何が起きているのか全くわからないでいた。

俺が見ているにも関わらず床をゴロゴロと転げまわる児童。

「あは、ごめんごめん。ちゃんと説明するからちょっと待っててね」

ぷはは、と思い出し笑いをしつつ、幼稚園児は指をパチンと鳴らすと俺の正面にひと組のテーブルと椅子が出てきた。


「さて、と。まずは見事に自殺できました。おめでとうございます。ぷぷ、あんな面白い死に様は初めて見たけどね」

「そりゃどうも・・・」

「でだ、わかると思うけどここは死後の世界というか、死後の世界の一歩手前ってところかな?―――神の領域さ。私はつまるところ神様っていうと理解しやすいかな?厳密には違うんだけどね。君にやってもらいたい事があったからこうして話し合うに至ったんだ」

「死後の世界・・・。それで、俺にやってもらいたい事ってなんだよ。実は死んでなくて戻れとか言われたらすぐさま又自殺してやる」

あんな世界にまた戻るなんてお断りだと目に力を入れて訴える。


「うわっ!そんな魔力の篭った目線を送らないでくれよ。怖いなもー。僕だって流石に自殺した人を生き返らせようなんて思ってないってー。ちょっと異世界に転生してもらって魔王をちょちょいと倒してくれればいいんだって。あ、あれだよ!勿論チート付きの超優良のお仕事だよ!」

なんだその胡散臭そうな仕事は・・・。

しかしながら転生か。半年間引きこもっていた間俺は自作小説やアニメ、ライトノベルといったものをひたすら読みあさり、異世界転生・転移といったものに憧れを抱いていた。その夢・現実逃避を叶えてくれるというのだから乗らないこともないのかもしれない。

「ちなみにこれを断った場合、君は再び地球に生まれ直すことになるよ。僕が干渉しちゃったから記憶は引き継いだままね。それはそれで楽しいかもしれないけどオススメはしなにかなぁ~。うちが意地悪で君の元クラスメイトの子どもとして転生させちゃう可能性があるからね!あ、でもそれって凄く面白くなりそう!そっちの方がいいのかな~」

「そ、それだけは止めてくれ。異世界に行くよ、行けばいいんだろ」


狼狽する俺をよそにニタリと笑う児童。


「そう言ってくれると大助かりだよー!ワタシこう見えても神の端くれだから世界の危機を防ぐ手はうたなきゃいけないのよ。じゃぁ、とりあえず何をやってもらうところから説明しようかな」

長い長い神様の話が始まった。



三行に纏めると以下の通りだ。


―――異世界に言って魔王を倒せ。

―――チートの道具渡すから簡単さ♪

―――※前任者たちは皆失敗しちゃってるけどね。笑


最後の一つが笑えなかった。

「全員失敗してるってことかよ!!どんだけ魔王強いんだよ!俺なんかが言ってもやられて死ぬだけだろ!」

「そ、そんなことないよ。今回はとびっきりのチート武器用意するし!今までは皆素質のとかあんまり考えずに選定してたけど、今回はちゃんと選定したから!地球の人間は魔力が使えないのに君は尋常ならざる魔力を持っているからね。それを僕が活性化させてから異世界に行けばもう最強!マジ最強!間違いないって!!」


神にそこまで言われるとなんだかいける気もしてくる。

必死に俺を説得しようとしている神を見ているとなんだか可哀想になってくるのも確かである。自殺した時にあった気持ちは随分と薄らいだ気がした。どの道、神に魅入られた時点で異世界に行くことは決定事項だったんだ。こちらは腹をくくるしかない。


「じゃぁ、聞くが異世界に行くとどんなチートが貰えるんだよ」

待ってましたとばかりに胸を張る神。

ちんちくりんなのであまり魅力的ではない。小さな子供が頑張っている感じだ。


「えーとね、これまでの人達が選んでいったのはこの一覧かな?

1.神速のブーツ(二足)

2.神力グローブ(ひと組)

3.神防マント

4.万能お守り

5.幸運お守り

6.神の盾

7.神の鎧

8.神クラスの剣A

9.神クラスの剣B

この九つだよ!それに加えて今回はじゃじゃーん!神の眼を用意しました!!!神眼というか魔眼かな?すごいでしょー♪神界の奥深くに眠る龍クルギヌルスからバレないようにこっそり奪ってきた一品なんだよ!」

簡単に書いてしまっているが、神のブーツ一つとってもキチンとした名前は存在する。俺が覚えられないから今回は単に神速のブーツとしている。シルフォルニアとかいう洒落た名前だった。


「この中から一つ選んでね!私のオススメは魔眼かな?何しろ魔眼だからね!何が見えるのかはつけてみてのお楽しみ!というか私もどんな効果があるのかわかんない!でも多分すごいよ!」

興奮しながら説明してくれるが、どうも容量を得ない。むしろ何も理解していない気もする。案外この神は転生者を送り出したらそれで仕事としては終わりなのかもしれないな。


戦闘なんて殆ど行ったことなんてないがゲームやらの知識から行くと素早さというのは何者にも代え難い。しかし神速のブーツを持っていた前任者は失敗したらしい。つまり素早さのみでは対処できなかったということなのだろう。そういった意味では他の神器も同様だ。

ただ一つ魔眼だけが可能性を秘めている。それは全く役に立たないといった可能性も含めてだが・・・。



俺はいくつかを吟味して――――選んだ。



「これ、全部くれ」




今度の人生ではもう騙されない。


そして最強の勇者になってみせるぜ。


感想お待ちしています。

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