ハーブティー。
17世紀ヨーロッパ。
ヨーロッパと言えば、皆さん貴族のイメージを持つのではないでしょうか。
そうです。
貴族はとても多いです。
私ローズ・ミレーユは、1623年4月21日に、
フランス、マルセイユに誕生しました。
マルセイユは港町でもあり、たくさんの貴族たちが豪酒・ごちそうを用意して、
パーティーもしょっちゅう開いていました。
私も貴族ミレーユ族の娘として出席していました。
ですが、貴族の生活も楽ではありませんでした。
父・母からは、厳しく育てられるばかり。
私がピアノの練習をしていると、
「何回言えばわかるのだ!?それでもミレーユ家の一族か!?」
と、父から怒鳴られるばかり。
正直、こんな生活が嫌になっていた。
──私はお父様とお母様から愛されていない。
そう思いながら、外に出て、空を見上げる日々が続いていた。
草むらに寝転がって。
そんな時。
「どうしたの?」
声をかけてくれたのは、私と同じ年くらいの女の子。
「わっ!」
私は驚いて飛び起きた。
「あ!ごめんなさい・・・・・・悩んでるみたいだったから」
「あなた、名前は?」
私がそう聞くと彼女は、
「私は、リース・エレクト。あなたは?」
「リース・・・・・・いい名前ね。私は、ローズ・ミレーユ!」
「え!ミレーユ家の!?ご、ごめんなさい!なんか軽々しくって・・・・・・」
「いいのよ!私、特別扱いされるの嫌いなの。だから、今まで通りでいいよ」
「そう・・・・・・じゃあそうするね。」
私達は次第に仲良しになってきた。
「ねえ、ローズ!よかったらうちでハーブティー飲んでいかない?
うち、ハーブ育てて、ここら辺では有名なハーブ一家なのよ!」
「へえ!すごいじゃない!ぜひご馳走になるわ」
私達は、リースの家に向かった。
「じゃあ、ユーカリティーを作るね。
ローズはユーカリっていうハーブ知ってる?」
「うーん知らないなあ」
「ユーカリはね、コアラがよく登ってる木なんだよ。
扱いには十分注意しないといけないハーブなんだけど、
これをキャンディーにするととても美味しいのよ。
それと、リモネンも入っているから、別名レモン・ユーカリともいうのよ。」
「そうなんだ!詳しいね!」
「そりゃそうよ!将来ハーブ農家になるんですもの
さあ、どうぞ。暑いから、冷たくしといたわ」
ユーカリのハーブティーは、私の心くらい冷えていて、
悲しさを増倍させるようなレモンの香りもした。
「じゃあいただきます・・・・・・。うん、酸味がきいてて、
しかもレモンの風味がとても素敵ね」
「ありがとう。また飲みに来てね。今度は違うのをご馳走するわ」
「ええ。よろしく頼むわ」
私達は笑い合っていた。
そして、暇さえあれば、リースの家に行って、
ハーブティーをご馳走してもらった。
そしてある日、習い事をサボってリースの家に行っていることが、
父と母にばれ、私は体罰を受けた。
「お前と言ったら!あんな庶民の家に行って!しかも稽古までサボりやがって!
いい加減にしろ!」
父からは殴る、蹴るの暴行を受け、
私はそのまま意識を失い、
そして、1635年7月12歳で、衰弱死に至った。
あの後、父がどうなったのかは知らない。
今の日本の法律だと間違いなく虐待で逮捕される。
でも、知りたくない。もう両親の事など思い出したくもない。
私が次に目覚めたとき、そこは、白くふわふわとしていたところだった。
辺りには小さな町がある。
そして、一人の女の子が私に手を差し伸べてくれた。
「ローズ」
その声はリースだった。
「リース・・・・・・!?何故・・・・・・?」
何故リースがここにいるのか理解できなかった。
まず、ここがどこかすらわからなかった。
「私ね、ローズを家に呼んでいた事が、ミレーユ家にばれて、
家族皆殺されちゃったの。もちろん私もね。ミレーユ家は庶民とは釣り合わない。
ミレーユ家の名を汚すなってさんざんローズのお父さんに言われちゃったよ。
で、そのあと、たくさんの男たちに、私たちは殺されちゃったの。」
「リース・・・・・・ごめんなさい。私のせいで!本当にごめんなさい」
「いいのよ。家族みんなこっちの世界に来れてよかったわ。
ローズ、あなたも殺されちゃったのね・・・・・・」
「ええ。ところでリース、ここがどこか分かる?」
「どうやらここは、天国みたい。本当にあったのね・・・・・・。」
天国。
それは絵本でしか見たことがなかった世界。
「初めまして、ローズさんリースさん。」
ふと振り返ると、女の人が立っていた。
「私は、願い叶えシステム管理者レスリー・キャントと申します。
この世界では死者には死んだ後1つ願いを叶えるというシステムがあります。
貴方たちの願いを叶えに来たのですが」
「私たちの願いを・・・・・・?」
リースは驚いている。
もちろん私も驚いている。
「はい。」
「じゃあ、私、ハーブティーのお店をこの世界に開きたいです!」
「わかりました。あなたの願い叶えましょう・・・・・・。」
すると、すぐそばの空いたスペースが、ハーブティーハウスに変わっていた。
「きゃー素敵!ローズ見てよ!これ!すごいわ~」
リースはのんきにハーブティーハウスに入っていた。
「さあ、ローズさんは何をお望みで?」
私は迷った。そして、
「私の父、ロバルド・ミレーユに天罰を与えてください。」
リースの家族・リースの命を奪った父・・・・・・いや、もう父じゃない
あの人が許せなかった。
「わかりました。ロバルド・ミレーユは、今死に至りました。」
そんな馬鹿な・・・・・・。
そんなすぐに死ぬわけないじゃないか。
「では、映像を見てみましょう。」
レスリーは、指で映像を出した。
すると、そこには首を絞め苦しみだしているあの人がいた。
そして動かなくなった。
「ね?死んでいたでしょう。」
私の決意はこれでよかったのだろうか・・・・・・。
「貴方が正しいことをしたのか、悪いことをしたのかは、
それは貴方しかわかりません。
では・・・・・・。」
私の決意は正しかったのでしょうか・・・・・・?
何百年も経って。
私は、システム管理者になった。
そして、死者の願いを叶えるため、
あるゲームを作り出した。
そして、死者を幸せにしたい。
私は、
皆さんの幸せをいつまでもいつまでも願っています。