7話:笑みの意味
「せっかくだから……レアちゃんと二人で話でもしなさいよ。あら、私はお邪魔だったわね」
母はそう言って、ばたばたと部屋を後にした。
残ったのは、レアとセナと……私。
「えっと、とりあえず座りましょうか」
レアが近くにあったソファに腰掛けたので、私も腰掛けた。
セナはテーブルの椅子に座った。
「萌花さんは、兄とお知合いなの?」
丁寧な言葉遣いでレアは聞いてきた。
「えっと……同じ学校なだけです」
ちらっとセナを見ると、彼は面白がっているようにも見える。
「そう。もしかして、付き合ってるとか?」
「とんでもないです!!」
私は慌てて否定したが、セナは無言だった。
なんで、否定しないのよコイツ!!
「ねぇ、セナ。この前言ってた子ってこの人?」
「そうだよ。レアは協力してくれるんだよね?」
レアは上から下までじっくりと私を見た。
「うん。できることなら何でもするわ」
レアはセナににっこりと微笑むとそう言った。
「萌花さん…あなたやる気はある?」
「えっ?」
「学校のミスコンでしたっけ? 優勝するんでしょ」
あ、知ってるんだ。
私は頷くと、セナの方を見た。
セナは意味ありげな笑みを浮かべ、口を開いた。
「やる気だけはあるみたいだよ……彼女」
「そう……。それなら、とことん協力するわ。でも、それはセナの方が適任でしょ?」
「まあね。でも、僕と彼女が一緒に住むのはさすがに無理だろ?」
「あら、私は別に構わないけど」
ちょっ……二人とも何言ってんの!?
二人の会話に入っていけなくなった私にレアは気づいた。
「大丈夫よ。今のは、冗談だから」
「それは嘘だろ? 顔が本気だったよ」
図星だったみたいだ。
レアは苦笑いを浮かべたまま、否定しない。
そこから少し間が空いた。
沈黙を破るようにセナが口を開いた。
「僕は母の雑誌の撮影があるからもう行くよ。それじゃあね。レア、萌花」
セナは席を立ち、レアにそっと耳打ちをした。
フランス語で聞き取れなかったが、レアは驚いた顔をして私の方を少し見た。
そして少し考えて頷いた。
セナは私の方に意味ありげな笑みを浮かべ、出て行った。
私はその笑みや耳打ちが気になり、レアに聞いた。
「セナに何を言われたんですか……?」
レアは少し困った顔をして考えこんだ。そして言った。
「えっと……そのうちわかるわ」
今晩はその耳打ちが気になり、眠れることはないだろうと考えた。