6話:ルームシェア
「ルームシェア!?」
喉をつまらせ、ごほっと咳き込む。
そんな私に母は水を差し出しながら言った。
「そうよ。お父さんが九州に転勤になったのよ。大丈夫よ。相手は女の子だし……しかもあなたと同い年なのよ」
相変わらず行動力がある人だ。
そう思いながら、ひとつ溜息をつく。
「そんないきなり! まず他人と暮らすんでしょ? いやよ、そんなの」
「でも、もう決めちゃったことだし……。それに、明日会う事なってるの。学校休みでしょ?」
けろっとした顔で言う母は本当に呆れた人だ。
また溜息をついた。
「しょうがない。一度会ってみるだけね」
「やった!」
はしゃぐ母に文句をいう事もできなかった。
お母さんは私と離れるのさびしくないの?
そう思うと涙が出てきそうだったので、もう考えない事にした。
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翌日。
「やっぱりこれ? それともこれ? スカートはやめといた方がいいよね……」
服を選ぶのに徹夜するなんて私らしくない……。
でも、これから一緒に暮らすかもしれない他人に会いに行くんだし。
「あぁ~~もうこれとこれでいいや」
いろいろ面倒になって、適当に組み合わせると下へ降りて行った。
結局、Tシャツにジーパンという組み合わせになってしまった。
「もう、萌花! そんな服でいいの?」
「別に……」
気のない返事をすると、母がぶつぶつと文句を言う。
「んで、そのアパートその辺にあるの?」
「ここから車で30分ぐらいのところよ」
「ふーん」
30分ってことは……駅からどれぐらい離れてるんだろ?
「駅から5分ぐらい離れてるわ。結構近いでしょ?」
私の心を悟ったように母は言った。
「ついたわよ」
そう言って車を止めた。
車から降りると、アパートを見上げる。
アパートというよりもマンションって感じだ。
茶色の煉瓦にクリーム色の壁でおしゃれな感じ。
ちゃんと受付みたいなのがあって、エレベーターもある。
「おしゃれだし……大きい」
「でしょ? しかも家賃がすっごい安いのよ」
ふーん。いいかも……。
そんな考えを振り払うように、ルームメイトの事を考える。
そうよっ! ルームメイトが悪かったら、元も子もないんだから……!
「何、ぶつぶつ言ってんのよ。着いたわよ」
母はそう言いながら、ドアを開けた。
ちょっと緊張する。
「えっと……天童さん?」
えっ天童? まさかね…。
「はい」
そのルームメイトはすぐ目の前にいた。
わぁ、凄くきれいな子……。
まずそれが第一印象だった。
雪のような白い肌。頬はピンク色に色づいている。
ふっくらとした唇。長い睫毛。
小さい顔。長い手足。ふわふわなパーマがかかった髪。
例えるなら、そう。白雪姫みたいな感じ。
「えっと……よろしくお願いします。橘 萌花です」
「萌花、ちゃん? よろしくね。私は天童 レアよ」
小鳥のさえずりみたいな声で言う。
声まで綺麗なんだ……。
レア……変わった名前。
「母親がね、フランス人なの」
にっこり微笑むとそう言った。
あれ? なんか……誰かに似てない?
「ねぇ、もうここに住めばいいじゃない。ルームメイトも良い子そうだし……」
母が小声で囁いた。
うん。まぁ、いいかも……。
「レア! ここに本当に住むの?」
聞き覚えのある声がドアの方から聞こえてきた。
まさか、ね?
私の疑いは見事に当たっていた。
ドアの方からこちらに向かってきたのは確かに……彼だった。
「紹介するわね。私の兄のセナよ」
にっこりとレアは微笑むと私の方に向かってみせる。
「あんた……何で……えぇっ!?」
戸惑った私の顔に彼も驚いた様子だった。
「へぇ、こんな偶然もあるんだ……」
彼は感心したように、口に手を当てた。
そして、ニヤッと笑ってみせる。
「僕の妹をよろしく頼むよ。橘……さん?」
意地悪くそういってみせた。