31話:過去(1ヶ月の命)
僕らは小学校を卒業した。
中学校も同じ学校で何もなかった……はずだった。
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美奈は中学に入って、少しぽっちゃりしたと思う。
「また太ったーー!!」
そう言って僕に泣きついてくる。
その時の美奈は凄く可愛い……なんて思ってしまう。
「いいよね。セナは。何もしなくても凄い美少年だもん」
そう言って、美奈は頬を膨らませた。
しかし、また笑顔になる。
中1、春。この時が美奈の本当の笑顔を見た最後だった気がする。
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美奈は時が経つたび 段々口数が少なくなってきた。
笑顔も減り、げっそりしてきた気もした。
「大丈夫? 美奈。このごろ元気がないよ」
最初は気のせいかと思っていたが、段々心配になってくる。
しかし、美奈はきつく僕を睨みつけた。
「ほっといてよ。セナには関係ないでしょ」
冷たく言い放つと、その場を立ち去ってしまった。
あの時、気付いていればあんなことにはならなかったんだ……。
それから2か月が経って、美奈はぱたりと学校に来なくなった。
1ヶ月、2か月、3か月が経っても、美奈は来なかった。
本気で心配になった僕は美奈の家に行った。
玄関のチャイムを鳴らすと、すぐに美奈の母が出た。
「せ、セナ君? どうしたの?」
「美奈に会いに来ました」
「そ、そうなの……。分かったわ。入って」
少し深刻な表情をしていた美奈の母に不安で胸がいっぱいになる。
美奈の部屋の前に立つと、ごほごほと咳き込む音が聞こえる。
僕は思わずノックも鳴らさず、部屋に入ってしまった。
「み、美奈?」
そこには変わり果てた美奈がいた。
少しぽっちゃりしていた顔もげっそりやせ細り、腕は折れそうに細い。
目の下にはくまが出来ていた。
しかし、一番目についたのは、抜けきった頭だった。
「せ、セナ!! なんで……み、みないで!!」
そう言って、美奈は頭から布団をかぶった。
声は弱りきっていてかすれている。
「わ、私ね、病気なの。なんか、胸に大きなできものが出来ているんだって。だ、だからね、こんなんになっちゃってね。み、醜いでしょ?」
布団の中からすすり泣くような声が聞こえた。
きっと、泣いているんだろう。
僕は布団の上からそっと美奈を抱きしめた。
「全然、醜くなんかないよ。美奈は美奈だから」
出来るだけ優しく言った。
そう言って、一層強く抱きしめた。
この後、美奈の母に聞いた。
美奈は後、1ヶ月の命らしい。




