3話:心もブス
「えぇ~~~~~~~~~~~キスぅ~~~~~~~~~~~~~!?」
友美はパフェを口の中に入れたまま大声をあげた。
そのせいで、私の顔にはパフェがかかってしまった。
「うるさい!! 汚い!!」
怒鳴りながら、顔についたものを拭く。
「ごめん!! でも、マジで……?」
「う……うん」
「……あっ分かった」
「えっ何が?」
思わず身を乗り出した。
「セナって……」
「セナって?」
「ブス專なんだ!!」
……ずっこ~~~!!
私はこけてしまうところだった。
「失礼なっ! それに、ふざけないで!」
「そんな怒らなくても……」
友美は少し口を尖がらせてみせる。
そんな表情も絵になるほどだ。
「うーん。でも、セナって結構ミステリアスな感じなんだよね」
友美がごまかすように言った。
ミステリアス? まぁ…不思議な感じはするけど……。
「ま、がんばってーー。セナに可愛くしてもらうんでしょ?」
「まっさかーー!!」
「照れないのーー。あっお礼はパフェでいいからねー」
「はぁーー!?」
友美はセナのようににこっと微笑むと、逃げるように店内を出て行った。
最近、金欠なんだよなー。しかも友美の奴、一番高いパフェ頼みやがって!!
一生恨んでやる~~~。
そう思いながら渋々レジに向かった。
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家に帰ると鏡の前に立ってみる。
何年「ぶりだろうか…?鏡を見るのは。
デブ……。ブス……。はぁ~~~~。
「こんなの私らしくな~~い!!」
頭を掻きむしりながら、ベッドに横になる。
こんな私でも? 冗談じゃないわ…。
そう思ううちにいつの間にか眠りについてしまった。
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「遅刻だぁ~~~~!!」
時計を見て叫ぶ。時間も間に合いそうにない。
こういう時はあきらめるのが一番だ。
無駄な努力などしても意味もない。
そう言い聞かせ、ゆっくりと支度をする。
「行ってきます」
あいさつもゆっくりと言って、出ていく。
勿論、走らない。
そんな私の耳にふんわりとした声が聞こえてきた。
「おはよう」
その声がゆっくりと落ち着いているもんだから、思わず返してしまった。
「おはよ……ってあんた!!」
朝からこの整った顔立ちを見るのは慣れていない。
寝ぼけ眼な私の顔とは月とすっぽんだ。
「うーん。酷い顔だね」
「余計なお世話です……」
俯きながら、ぼそりと話す。
「姿勢が悪いし……もっと前みなよ」
そう言って、くいっと指で顎を持ち上げられた。
「ちょっ……やめてください」
「じっとしてないと、キスするよ」
じたばたしていた私もこれには動揺して、固まってしまった。
「うん。いい子だね。ほら……できた」
「えっ?」
「グロス……塗ったんだ」
グロス……。いや! また、馬鹿にされる!!
昔、勇気を出してグロスを塗ってみた。
しかし、言われたのはキモい……の一言だった。
思い出すと、足がガクガクと震えてくる。
「余計な事……しないでください……。
私はこんなことしても可愛くなれません……!
ブスはブスのままなんです!!」
そう言って、唇を拭うと、冷やかな口調が耳に入った。
「ほんとだね……。君、心もブスなんだ」
凍りつくような表情。声。
空気までもが凍りついたかもしれない。
ビクンっと体が震えた。
「あの……ごめんなさい!!」
そう言い残して、その場を走って逃げた。
しかし、体の震えはまだ止まらなかった。




