2話:代償は……キス
「あのさ……」
4時限目の数学。小声で親友の友美に尋ねる。
「何? ブス子」
「その呼びかたやめて!!」
「はいはい。んで、何?萌花」
「セナ……って知ってる?」
ひそっと耳打ちすると、友美は途端に笑顔になる。
「もちろん!! 超かっこいいよね~~」
「わかんないけど……」
「んで、何でそんなこと聞くの?」
「あっ実はね……」
そう言いかけたが、先生に注意されてしまった。
「後で話す」
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に友美が訪ねてくる。
「それで? さっきの続きは?」
「あぁ、それがね……」
友美にこの前話したことを全て話した。
友美は途中で頷いたりしていたが、最終的には叫び声をあげる形になっていた。
「えぇーーーーーーーーーーーーーーー!! せ……セナがぁーーーーーーーーーーーー!?」
「うるさい!!」
「ごめん。ってかそれホント?」
疑いの目で聞いてくるもんだから、少しムッとしながら言った。
「そんなウソ、私が付くと思う?」
「それも、ないか……。でもいいなぁ。私もブスがよかった~~」
「なによ。それ」
やっぱり、少しムカッと来る。
友美、真鍋友美は私とは対照的だ。美人で明るくてさっぱりしてる。
悪気もなく嫌味をいうとこもムカつくんだよな~~。
「なにか言った?」
「別に……」
聞こえてるくせに……。
またぼそっと呟こうとしたが、止めておいた。
それにしても、なんで? セナ……だっけ?
あんなこと言ったんだろう?
はぁ、また溜息でちゃうよ……。
「ちょ……萌花!! セナが……セナが!!」
「えっ?」
ふと友美の指さす方向を見ると、そこには……彼がいた。
非の打ちどころのない笑みを浮かべながら、手招きをしている。
「きゃーーーセナよーーー!!」
「セナ様ーーーーーーーー!!」
女子が黄色い声を上げるもんだから、私は思わず耳を塞いだ。
しかし、そんなものなどおかまいなしに私をみて手招きしている。
「わっ私!?」
自分に指をさして尋ねると、彼は頷いた。
「ま、じ、で……!?」
そろ~~~っと隠れながら彼の方へ向かっても、やっぱり見つかるわけで……。
「ちょっ……あんた何~~!? ブスのくせに」
「セナ様に近寄るなんて……生意気ーーっ!!」
と騒ぎ立てる。あわわ、最悪だ……。
「何か用ですか?」
「ははっ。僕と話したくないオーラだだ漏れだね」
「……」
「言わせておけばいいよ。それよりも、ちょっと中庭来てくれない?」
「……別に、いいですけど」
「じゃあ、行こうか」
「へっ!?」
彼は私の手をとって、握りしめた。
そして、私の顔を見てにこっと微笑む。
「きゃーーーーーー生意気!!」
「セナ様やめてーーーーーー」
絶対ワザとだ……コイツ。
振り払おうとしても振り払えない。
されるがままに中庭に連れて来られた。
「ちょっ……離して!!」
そう言うと、意外にあっさり離してもらえた。
「くす。照れてるの?」
「んな訳ないでしょ!? あんたといると、女子の風当たりが強くなんのよ」
「ねぇ……昨日行ったこと覚えてる?」
いきなり顔を近づけてくるもんだから、私は一歩退いた。
「な、何の事?」
「とぼけちゃだめだよ。僕が君を可愛くしてあげるって言ってるんだ」
「馬鹿にしないで……! 自分がかっこいいからって調子乗らないでよ!!」
「それは……ひがみかな? でも、昨日あんな風に言われて悔しくないの? ブスだって」
「そ、それは……」
セナは更に顔を近づけてくる。
「可愛くなりたくない? 見返したくない?」
「ま、まぁ……」
「まぁ……それなりの代償はあるけどね」
セナは私から離れると、不敵な笑みを浮かべた。
「何よ……それ」
「キス……だよ」
「……はっ!?」
彼はくすっと微笑むと校舎の方へと向かった。
そして、一度振り返ると、にこっと笑って一言。
「考えといて。じゃあね」
あのバニラの香りを残したまま立ち去った彼が憎くてたまらなかった。
ふざけるな~~~~!! 誰が……可愛くなんて、キス……なんて!!
私は彼の背中を見つめながら憤慨した。
甘い!!甘い!!甘い!!
と思うような小説にしていきたいんですが…。
毎日更新できるか、不安です(-_-;)
次話は甘い感じにしていきたいのですが…。