1票の違いが選挙結果の運命を分かつ! 茨城県神栖市選挙無効訴訟について
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
2026年9月3日付けで神栖市長選挙における当選人の当選を無効とする旨の判決がありました。
今回はこの件についてと投票の意義について語っていこうと思います。
質問者:
筆者:
まず全体の流れを整理したいと思います。
2025年11月9日茨城県神栖市で行われた市長選挙では現市長の木内敏之氏と前市長の石田進氏が、全く同じ得票数で並び、くじ引きの結果、木内氏が市長となりました
神栖市長選挙における当選の効力に関する異議申出が、2025年11月10日および11月19日付けで市選挙管理委員会に提出、12月5日には棄却されました(つまり現市長木内氏の当選を認めたという事)。
https://www.city.kamisu.ibaraki.jp/shisei/election/1003910/1013336.html
2026年5月27日付けで東京高等裁判所に対し、茨城県選挙管理委員会への審査申立てに係る裁決の取り消しを求める訴訟が提起されました。
審理の結果、2026年9月3日付けで神栖市長選挙における当選人の当選を無効とする旨の判決がありました(つまり今の木内市長が当選無効、前市長の石田氏の当選を認めたということ)。
質問者:
あぁ……籤引きで当選が決まったと言う話にさらに先があったんですか……。
筆者:
この訴訟で最も注目されたのは木内氏の票として認められた票のうち「まんじゅうや」「だんごさん」というものが木内氏にあたるのか? あたらないのか? はないかと言うことでした。
木内氏の主張では『まんじゅうやのせがれとして65年間生きてきた』
ということで自らの代名詞という事で認めて欲しいとのことですが、
高等裁判所としては、
『『だんごさん』や『まんじゅうや』は、あくまで食品であるだんごや、まんじゅう屋という飲食店の種類を表す普通名詞にとどまる。神栖市内には、まんじゅうやだんごを扱う和菓子屋が少なくとも9軒あり、神栖市内において、慣習的に使用されていたとまで認めることは困難というほかない』
と言う判断を下し、この2票は無効としたのです。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900198749.html
質問者:
普段なら「たかが2票」と言う感じがしますけど、今回ばかりはこの2票が無効だったとするなら、そもそも籤引きをする必要もなく石田さんが当選されていましたからね……。
筆者:
◇選管の恣意的な判断で無効票を有効にしてはいけない
質問者:
筆者さんはこの高等裁判所の判断についてどう思われているんですか?
筆者:
僕は木内氏には気の毒だと思いますし、市長が交代すれば市政は混乱するとは思いますが裁判所の判断は比較的真っ当だと思っています。
質問者:
でも石田さんは饅頭屋さんでは無いみたいなんで、木内さんに投票したと思って書いた票だと思うんですけど……。
それが無効になるって言うのは解せない気もするんですけどね……。
筆者:
候補者名に「さん」や「様」など敬称を付けるのはOKという見方が多いのですが、
「〇〇さんへ」と「へ」を加えるだけで無効になったケースがあるそうです。
https://withnews.jp/article/f0160606002qq000000000000000G00110101qq000013502A
そして、認められた略称以外においては有効と認められない可能性が高いのが実情です。
神栖市の一部の地域では「まんじゅうや」として定着していたとしても、
市内には9件も饅頭屋があったそうですから完全にイコールとして存在しているわけではありません。
略称などに公式ではない以上は無効であると判定されるのが妥当と言えます。
質問者:
筆者:
「他事記載」と呼ばれており、「ちゃんと投票したよ」と言うサインを送ることを意味するからだと言われています。
どうしてそんなに神経質になるかと言いますと、「金で票を買う」という公職選挙法一発アウトになることを「確認」することが出来るようになるためだと言われています。
ちなみに今回の一件は「まんじゅうや」ばかりが注目されていますけど、石田進氏の方にも氏名の記載のほか欄外の数字を丸で囲んだ1票がありまして、これは石田氏側の無効票1となっています。
つまり、木内氏側無効票2を勘案すると認められた票の差は石田氏が1票リードと言う見解になっています。
質問者:
なるほど、不正選挙対策として活きた制度だったんですね……。
しかし、本当に1票で結果が変わってしまうという感じだったんですね……。
筆者:
一方で木内敏行なのに「木内としはる」「水内」と書かれた票は木内氏の票に。
石田進なのに「右田進」「田」と書かれた票は石田氏の票として認められましたが、「石田三成」は歴史上の人物なので認められませんでした。
https://www.yomiuri.co.jp/election/20260531-GYT1T00069/
僕はこういった票も姓名が明確に特定できるもので書かれたものではないために一律に「無効」とすべきだと思いますけどね。これらは高等裁判所は認めてしまったので賛同できないところでした。
何かの拍子で無効ならないようにするためにもキチンと候補者の姓名を書き、余計なことを書かないようにすることが大事だと思います。
◇「自認」で無効票が認められるようになると「やりたい放題」になる
筆者:
選挙管理委員会に公式で届け出た略称以外で自認するだけで票になる事の危険性をお話ししましょう。
無効票で多いものを「自分を示すものだ」と主張すれば票になるとします。
そうなるとお互いに無効票で多いパターンを主張し合ったり、
選挙管理委員会の恣意的な判断でグレーゾーンの票を左右する事を意味します。
こうなると選挙制度そのものに対する疑問が生じてしまうんです。
質問者:
いわゆる「不正選挙がある」と言う疑惑を少しでも排除しなくてはいけないという事ですよね……。
筆者:
僕は多少の選管が仕事時間を延長したくが無いための誤魔化しによる不正選挙があったとしても、全体の選挙結果が大きく覆るだけの不正選挙は無いと思っています。
しかし、期日前投票箱の管理や当日の票の集計など監視カメラでずっと見張っておいて誰でも見れる状態にしておくことが不信感を下げるために大事かなと思います。
旧ソ連のスターリンが「誰がどのように投票するかは重要ではない。極めて重要なのは、誰がどのように票を集計するかだ」と発言したそうです。
そのために集計方法に疑義が生じるようなことや、開票作業の監視方法が不十分だと思われている状況はこの考えを後押ししているようにも見えてしまうために非常に危険なのです。
今回のように一貫性が無いように見える票の認め方と言うのも危険だと僕は思っているのです。
質問者:
北朝鮮でも選挙はあるようですけど半ば脅迫によって決まっていますから共産圏の国の選挙は流石にちょっと性質が違うような気もしますけどね……。
筆者:
「選挙の信頼性」と言うのをどうして重要視するのかと言いますと、
結局のところ選挙は最善の選択は出来ていないかもしれなくても「最悪を排除」することは可能だからです。
そして、血を流さないで政権交代を成し得るというのはこれまでの歴史では異例中の異例です。
民主主義にはデメリットや不満もありますがそれを上回るだけのメリットがあるという事です。
しかし、その信頼度が低下すれば「革命」や「暴動」と言った本来民主主義で防げていたことが起きてしまうという意味で大きなマイナスだという事です。
質問者:
なるほど……もっと良い人がいるかもしれないけど、複数出馬していたなら一番悲惨な人は選択されないというのは分かるような気がします。
筆者:
今回に関しては投票で籤で勝利した木内氏にとって悲劇だったかもしれないですが、選挙の信頼の根幹にかかわるようなことであるためにこれは止むを無い判断だと思います。
恐らくは最高裁まで争っても前市長の石田氏が市長として認められる可能性が高いと思うのですが、
知名度やイベント開催、給付金などで出馬当時の現職が首長選では有利になることが多いのです。
それでも石田氏は五分以上にやられてしまったという事実は残ります。
事情はよく知りませんが、それだけ地元市民が石田市政に不満を持っていたことを意味する可能性が高いです。
石田氏には「これから3年以上やりたい放題」するのではなく、市民、特に若者や将来世代に未来や希望を見出せるような政治をして欲しいと思いますね。これは木内氏の当選が維持された際においても市民の半数が支持していないために言えることですけどね。
◇地方選挙は投票率が低いからこそ「1票の重み」が大きい
質問者:
しかし、今回の神栖市長選挙は同票で籤引き、そこからの選挙無効訴訟とかなりドラマチックなことになりましたね。
筆者:
これも非常に僅差であったからこそ起きたことだと思います。
地方選挙は統一地方選挙の投票率を見ても4割台前半と国政選挙よりも1割も平均して低いわけです。
※25年の神栖市長選挙の投票率は44.22%と標準レベル
田舎ですと20%台の投票率のところもあります。
しかし、逆を言えば「1票の重み」というのが国政選挙と比べて相対的に高いことを意味するのです。
質問者:
ですが、地方選挙、特に議会議員選挙であれば候補者1人1人の知名度も無く、知らない人に投票したくないと思われるのではないでしょうか……。
筆者:
しかし、今回のように1票で大きく結果を左右することもありますからね。
選挙で死線を潜り抜けたのであればより、有権者の声に耳を傾けようという気になる確率も上がりますしね。
とりあえずは過去に比例代表で投票したことがある政党の候補者で構わないので投票の意思を示すことが大事だと思います。
例え議員1人の会派だとしても、市民から提出される「請願」を議会に上げるための紹介議員は1人からできたり、
会派の人数に関わらず、発言時間を割り当てられれば1人でも登壇することが出来たりと、国会よりも出来ることが多いです。
そのために、例え投票したことがある政党の当選者が少なかったとしても意味があるんですよ。
また、地方選挙であれば色々な党が乱立したり無所属の方もいるので今の国政の自民党のように圧倒的な地区は少ないと思います。
そのために地方では1人の議員の影響力と言うのは非常に大きくなるんです。
質問者:
なるほど……思ったよりも地方議員の選挙ですら意味があるという事なんですね。
筆者:
僕はどちらかと言うと国政や全体にも関わるような市政しか取り上げませんけど、ミクロの身近なことを決めるのは市長村長と議会ですよ。
市町村運営の図書館、水道、医療機関、公園などの施設の存亡や民営化など重要な事を決めるんです。
1票で政治が動く可能性がより高いのが地方選挙です!
次の皆さんの身近な地方選挙で投票に行きませんか? 本エッセイがその意識向上の手助けになれば幸いです。




